2022年に三菱重工業に入社して、三菱重工コンプレッサ株式会社 事業推進センター 営業グループに所属する森下 亮さんと、2019年に入社して、GXセグメント プロセスエンジニア部 基本計画グループに所属する加藤 恵さんに話を聞きました。
三菱重工業株式会社
1884年の創業以来、多様化・複雑化する社会課題の解決に取り組んできた三菱重工グループ。歴史のなかで培った高い技術力に最先端の知見を取り入れ、カーボンニュートラル社会の実現に向けたエナジートランジション、 社会インフラのスマート化、サイバー・セキュリティ分野の発展に取り組み、人々の豊かな暮らしの実現を目指す。


森下 亮 RYO MORISHITA
2022年入社。三菱重工コンプレッサ株式会社 事業推進センター 営業グループ
「父が同じ業界で働いていたので、大きな機械と関わる仕事にあこがれていました。学ぶことは山積みですが、自分に足りない部分を素直に修正できるところが強みだと思っています」

加藤 恵 MEGUMI KATO
2019年入社。GXセグメント プロセスエンジニア部 基本計画グループ
「プラント設計の魅力のひとつは、作りあげるものの大きさです。巨大な機械が連動して動いているのを見るだけで、かっこいい!とうれしくなってしまいます」
カーボンニュートラル実現へ先陣を切りたい

入社1年目に、三菱重工が100%出資する三菱重工コンプレッサに配属された森下 亮さん。広島の本社で、受注したコンプレッサ(圧縮機)を出荷するまでの交渉・調整を行う業務を経て、2024年4月からは東京の事業推進センターで、受注営業を担当している。
コンプレッサとは一言で言うと、気体を強力に圧縮して送り出す機械。同社が提供する大型コンプレッサは、「プラントの心臓」のような存在だ。石油や天然ガスの生産地から、化学プラントや発電所などの消費地まで、あらゆる分野において世界で活躍している。
「僕の担当は、基本的に国内のエンジニアリング会社ですが、最終的な納品先は北米や中東が多く、当社の売上げの95%が国外向けです。主な仕事は、見積もりを作って金額をオファーしたり、顧客と契約条件を交渉したりすることです」(森下さん)。
巨大な精密機械のコンプレッサは高価な商品であり、値付けの根拠は重要だ。とくに材料費や人件費が高騰している今は、顧客に伝わる詳細な資料作りや説得力のある説明に心を砕いている。

森下さんが三菱重工に入社した理由のひとつは、同社が2040年の脱炭素実現を目指し、技術開発に注力していることだ。
「祖母が台風で被災した経験があり、地球温暖化問題に関心がありました。CO2回収や、次世代エネルギー候補のひとつである燃料アンモニアの製造にはコンプレッサが不可欠。脱炭素に寄与する技術を提供してグリーントランジションに貢献したいんです」と語る。
しかしそうしたプロジェクトは、政府の補助金の方針や、国際的な温暖化対策の動向、関税問題などの地政学的な影響を強く受ける。政情や経済の不安定さが要因となり、実現可能性が揺らいでいるケースも多く、本当に手がけたい案件はまだ受注に至っていない。
「でもそれだけ最新の情報が入り、政治と経済の結びつきを実感できる、面白い仕事だと感じます」と森下さん。「三菱重工の技術を武器に、黎明期にある脱炭素市場にトップバッターで切り込み、シェアを拡大していきたい。引退するときに『世界を変える仕事ができたな』と振り返りたいです」と前を向いた。
プラントから誕生した「最初の一滴」に感激

「大学では社会に欠かせないインフラである水処理工学を学びましたが、そこで培った知識をよりスケールの大きな分野でも生かしたいと考え、石油化学プラントの設計に携われる三菱重工業に入社しました」と話す加藤 恵さん。これまでに肥料、石油化学製品、水素などを生産する国内外のプラント(複数の設備や機器を組み合わせた大規模な生産設備)の設計を担当してきた。
所属するプロセスエンジニアリング部は、おもにプロジェクト初期にプラントの枠組みを描く「基本設計」を担う部署だ。装置の組み合わせや、運転制御系の構築、機械のスペースの設定、材料の選定のほか、実現可能性に関する調査、コストや日程の検討、引き渡し前の性能試験なども行う。
「顧客の要望通りの製品を生産するための構想づくりは、いわばプラント設計の根幹を担う仕事で、その面白さを日々感じて取り組んでいます」(加藤さん)。
さらに図面で描いたものが、長い年月をかけて「もの」として目の前で完成される瞬間が、プラントエンジニアにとって何物にも代えがたい喜びだ。これまででいちばん印象に残っているのは、バングラデシュの国営化学企業を顧客とするプロジェクト。世界最大規模の生産力を持つ肥料プラントの建設に関わったときのことだ。

「入社1年目で設計に携わったときから『プラントが動き出す瞬間を見たい』と希望し、3年後に現地に派遣してもらえたんです。最終的にバングラデシュには1年2カ月滞在して、性能試験を問題なく終了させ、担当案件の完成に貢献できました」と加藤さん。
建設現場は毎日が長丁場であることに加えて、多国籍なメンバーとの言葉の壁もあり、肉体的にも精神的にもタフだった。
「それだけに、肥料の『ファーストドロップ(最初の一滴。初めて生産された製品を指す用語)』を見たときは感無量。大勢の人々とがんばったことが、文字通りすべて実った瞬間を味わいました。さらに『バングラデシュの農業を支えるんだ』という関係者の熱意が強く、お客さまがものすごく喜んでくれたことも幸せでした」(加藤さん)。
自宅に持ち帰った肥料のファーストドロップを見るたびに当時のことが思い出され、新たなモチベーションが湧いてくる。
休日の何気ないひとときに感じる幸せ!
日々多忙な二人のオフの過ごし方は、小さな発見を楽しむことだ。
森下さんの楽しみは、実家に帰ったときに愛犬と触れあうこと。加えて今のマイブームは、足を伸ばしていろいろな街へ散歩することだという。とはいえ、目的地まで都内を4時間以上も歩くこともあり、散歩というよりは大人の遠足だ。

「去年の秋頃に家族で富士五湖の河口湖周辺でキャンプをした際に、車での帰り道にたまたま見つけた牧場で撮った一枚です」日頃は都内を自分の足で散策する森下さんだが、遠出をしてきれいな景色に出合うこともリフレッシュになるという。
「歩くこと自体も好きですが、偶然見つけた場所や通りに寄って、隠れた名所旧跡や、初めての空間を体験するのが面白いです。先日、何気なくホテルの椿山荘に入ったら、ホタル観賞会の会期中で『こんな都会でホタルが観られるのか』という発見がありました」と笑う。好奇心に導かれ、今まで知らなかったことを知ることが、森下さんの密かな楽しみだ。
加藤さんも猫が好きで、3歳の活発な愛猫と過ごす時間が楽しみのひとつ。平日は帰宅が遅くて時間が取れない分、休日はおもちゃで思い切り遊ぶ。「猫を撫でていると仕事の疲れも忘れてしまいます。ブラシをかけてあげながら、夕食の献立を考える時間が安らぎですね」と笑顔を見せる。

「家事の合間にふと振り返ると、椅子の背もたれに器用にのぼってくつろいでいた愛猫のぼたんちゃん。まるで王様 のように堂々とした姿に思わず笑ってしまいました。自由気ままな彼女の存在が日々の癒しです」(加藤さん)
料理も大好きで、最近は旬の食材を使い、ネットで見つけた目新しいレシピを試すことにハマっている。「五感を使った新しい発見が手軽にできるのが料理の魅力。最近作ったもののなかでは、カブのキムチと新玉ねぎのパイがおいしかったです」(加藤さん)。
理想の実現へ、できることから着実に
未来に向けて今考えていること、取り組みたいことについて、二人に聞いてみた。

「理想を実現していくためにも日々の業務からの学びを大切にしています。『昨日できなかったことが、今日はできるようになった』という達成感を得ながら、知識や経験を積み、思考の幅を広げたいです」(森下さん)。

「『早く行くなら一人で行け、遠くへ行くならみんなで行け』というアフリカのことわざが好きです。マネジメント力を磨いて協力者を増やし、一人ではできない大きなことをみんなで実現していきたい」(加藤さん)。
理想を抱き、将来手がけることになる大きなプロジェクトに胸を躍らせ、一歩ずつ前進していく二人だ。