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ともにつながり、探究を深め、拡げる場へ
-みらい育成アワード2025 開催-
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2025年9月20日、JPタワーホール(東京都千代田区)で「みらい育成アワード2025〜知見、実践、その想いを分かち合う〜」が開催されました。主催の三菱みらい育成財団は、未来を切り拓く人づくりを目的に、次代を担う若者の育成を目指す教育活動への助成と、ネットワークづくりや情報発信を通じ、その成果を社会に波及させるために活動しています。本アワードは財団が2024年度に採択した助成プログラムの中から、モデルケースとして高く評価した団体を表彰するものです。
授賞式では昨年度新規採択の助成プログラムから選ばれた各カテゴリーのグランプリ5団体、準グランプリ4団体、三菱みらい育成財団賞1団体に記念の盾と目録が手渡されました。
三菱みらい育成財団の宮永 俊一理事長(最右)・妹背 正雄常務理事(最左)と受賞団体の皆さん
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<グランプリ受賞団体>
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プレゼンテーションの様子。現場からのリアルな報告に会場も集中
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カテゴリー1(高等学校などが学校現場で実施する「心のエンジンを駆動させるプログラム」)で表彰された京都市立京都奏和高等学校は、不登校経験や発達特性など、いわゆる「困り」のある生徒を対象にした『Make smile―心のエンジンをかけるための鍵となる「笑顔」の見つけ方―』に取り組んでいます。
このプログラムでは、生徒の「自己肯定感・自己有用感」「課題発見力・解決力」などを育むために、主軸となる2つの探究科目を設置しています。生き方を探究する科目「キャリア」では、自分自身を肯定的に受けとめながら、生き方や進路実現の方法を探っていきます。もうひとつの科目「ビジテック」では、産官学連携の「まちのだれかを笑顔にする」というプロジェクトを進めて、地域と一緒に生徒の課題解決力や自己有用感を培います。これらの活動が、困りのある生徒が取り組む探究活動のモデルケースになるとして、今年度のグランプリに輝きました。
京都市立京都奏和高等学校で助成プログラムを牽引している井上 翔一さん
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教諭の井上 翔一さんによると、三菱みらい育成財団からの助成金は地域での活動費に充てるほか、企業を訪問する際の費用にしたり、教員の資質向上のための研修の費用に充てたりと、幅広く役立てているとのこと。
「自分自身の困りだけでなく、環境に起因する困りを感じる生徒も多く、教員には支援的な視点や福祉に関わる知識を学び、指導・支援の質を高めていく必要があります。そのため助成金を活用して教員が地域に飛び出して積極的に学べる環境を整えています。三菱グループの支援を受けたことで、『やるしかない』と校内全体で活動を前進させる動力にもなりました。この機会に、多様な背景を抱えた子どもたちが一歩を踏み出せる未来を、社会全体で考えていただけたらと思います」(井上さん)
地域の科学教育を推進する島根県立益田高等学校の福井 美帆さん(右)、山田 忠幸さん
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準グランプリに選ばれた島根県立益田高等学校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校の強みを生かしたリーダーシップと生徒の主体的な取り組みによる「益田圏域での理数教育を発展させるための小学校・中学校・高等学校連携プログラム」が評価されました。イベントなどを通じて科学に触れる機会をつくり、小中高の枠を超えて子どもたちの科学に対する興味関心を喚起しています。地域の科学人材育成の中核的役割を担っているといいます。
担当教諭の福井 美帆さんと山田 忠幸さんは「三菱みらい育成財団の助成は理系・文系を問わず幅広い目的で受けられ、リソースの限られた地方で活動を持続するのにたいへん助かっています。準グランプリという高評価をいただいたことで企業や行政との協働もより進めやすくなりました。当校の科学教育が少子化に悩む地域の課題解決にもつながるよう努力していきます」と、気持ちも新たに意気込みを語っていました。
パネルディスカッション。モデレーターは京都大学准教授・塩瀬 隆之さん
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商業高校やNPO法人など独自の視点で活動する4団体からのパネラーによるディスカッションも行われました。「探究的な学びの充実にむけて〜つながる、深める、拡げる〜」をテーマに掲げ、それぞれの知見や経験をディスカッションを通じて参加者と共有しました。
「つながる」のパートでは、旗振り役の先生が孤立無援にならないよう探究の担当を校内の横断的なチームにした事例などが挙がり、生徒の協働を促すためにプログラムを運営する側にも協働関係が必要との意見で一致しました。
生徒を成長させる、探究を「深める」のパートでは、静岡のNPO法人から高校生に企画・運営を任せた探究イベントが報告されました。さまざまな試行錯誤が参加した高校生たちの自主性や自己肯定感などを培ったとのこと。過剰に介入せず、冷静に見守る大人の体制づくりも実践を深めると話していました。
「拡げる」のパートは、三菱みらい育成財団の助成によって優れた取り組みが地域に拡大した例や、みらい育成アワードを通じた交流の広がりに共感が集まっていました。探究活動を進めていくと、学校から地域、地域から社会へと、生徒・学生の視野やコミュニティが拡大するという手応えを登壇者の皆さんは感じていたようです。
互いの知見に刺激を受ける全員参加型のトークセッション
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閉会の前には全員参加による意見交換も行われた
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今回のアワードも表彰に加えて、会場に集まった助成先の学校関係者や企業・団体の方と、発表の合間や閉会前に感想を共有し議論をする場が設けられました。他校の成果や、同じ立場の人々との議論を通じた交流が活発に行われたことで、終始会場は熱気に包まれていました。
※2025年11月6日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。