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東洋文庫ミュージアム、ただいまリニューアル中

-2026年1月、より開かれた「知の殿堂」へ-

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東洋学の五大研究図書館の一つに数えられる東洋文庫。1924年に三菱3代目社長、岩崎久彌によって創設され、蔵書数は国宝5点、重要文化財7点を含めて約100万冊にのぼります。東洋学における知の殿堂にふさわしく、アジア諸地域の歴史と文化の発展に関する基礎資料を100年にわたって組織的かつ継続的に収集しており、日本と世界に向けて東洋学の最先端研究を発信し続けています。

東洋の歴史や文化に気軽に触れることができる場として2011年に開館したのが東洋文庫ミュージアム。久彌が1917年に、北京駐在ジャーナリスト人G.E.モリソン博士からまとめて購入した東アジアに関する欧文の書籍・絵画・冊子2万4千冊からなる「モリソン文庫」が有名で、三方を囲むように配置された高くそびえる本棚に収められていることから、「日本一美しい本棚」と呼ばれることもあります。

2024年12月から東洋文庫ミュージアムは施設をリニューアルするため休館しています。現在、2026年1月のオープンを目指し工事が進んでいるところです。普及展示部学芸課長の岡崎礼奈さんは次のように話します。

「リニューアルは東洋文庫の創設100周年事業の一環として、来館者や運営サイドから挙げられた課題を少しでも改善していくために実施しているものです。コンセプトは『より多くの方々に開かれたユーザーフレンドリーな環境にしていく』になります」

コンセプトには、安全な施設運営のために必要な改善を実施すること以外にも、研究者のみならず地域の人たちや学生などより多くの方々に訪れていただける施設にしたいという想いが込められています。気軽に来館いただきやすいよう建物前の壁を取り払い、外から1階奥の展示室(オリエントホール)まで見渡せるようにしたほどです。

建物前にあった壁を取り払い・・・
外から1階奥まで見渡せる開放的なエントランスへ

地域の方々が気軽に訪れやすい開かれた施設に

1階には小さなイスや児童書などを置く子ども用スペースが設置されます。「開館当初は子ども連れで訪れる方は少なかったのですが、年々来館者が増えていくにしたがってファミリー層もよく来られるようになったことから、子どもが楽しめるスペースの必要性を感じました」と岡崎さん。ミュージアムショップも商品の配置を見直し、以前より見やすくなります。

展示作業の効率改善のため、オリエントホールの展示ケースは大幅に変わります。

工事前のオリエントホール
工事中のオリエントホール。展示ケースも大きくなり、見やすくなった
ケースの下をくぐって裏側から設置していた展示物も、正面から簡単・安全に搬出入できるように

オリエントホールの展示ケースはそれまで、ケースの下をくぐって裏に回り、ケースを開けて展示物を入れ替えていました。搬出/搬入する際は屈んだり立ち上がったりを繰り返すため体に負担がかかり怪我をするおそれがあっただけではなく、展示する貴重な資料を破損させてしまう懸念もあったことから、正面を開けて展示物を安全に搬出/搬入できるものに変更されます。

展示ケースも側面をガラスにする事で、車いすの方への配慮した空間に

また、バリアフリーもリニューアルでさらに改善されます。車いすで1階から2階の展示室にスムーズに移動できる動線を確保するほか、車いすに乗った視点で遠くからでも展示ケースの中にある資料が見えるよう、展示ケースの中には側面もガラス張りにしたものが使われます。

展示台も、本に負荷がかかって表紙から本文が剥がれ落ちてきてしまわないよう、寝かせ気味に置けるものを採用することにしました。保存の観点から実施した改善としてはこのほかにも、モリソン文庫の書棚に本の落下防止用のバーを設置したことも挙げられます。工事で使用する化学物質などが良くない影響を及ぼさないよう、約2万4千冊のモリソン文庫のすべてが現在、バックヤードに移されています。書棚から搬出しバックヤードに搬入する作業は、貴重な資料を破損などすることがないよう専門家の手により細心の注意を払って実施されました。

リニューアル前のモリソン文庫。約24,000冊の欧文図書も全て一時撤去し落下防止用のバーを設置
展示ケースは仮置きのもの。工事完了後に全て元の場所に戻される
サーキュレーターを回して常時換気を行っている

リニューアル工事では展示ケース内などに貼るクロスの調達に時間がかかったといいます。

「一般的なミュージアムでは白やグレーにすることが多いですが、東洋文庫では本を際立たせるためピンク色や紺色などを使っています。白やグレー以外のクロスがあまり使われないことから取り扱っているところが少なく、必要な量を揃えるのに時間がかかりました」(篠木さん)

2026年の年明けから展示資料やモリソン文庫の本を戻す予定に間に合わせるべく現在枯らし(木材から発生するアンモニアや有機酸といったガスを抜く作業)を実施していますが、主な展示物である紙製の古い資料は空気中の有害物質による影響で、例えば変色などが起こりやすいため、万が一にも影響が出る事の無いよう有害物質の濃度を下げるためにガス吸着シートを敷くほか、何台ものサーキュレーターを回して換気を行っているところです。

岡崎さんはリニューアル後について「地域の方々にもっと訪れていただきたいです。ミュージアムの存在を地域に認識してもらい活用してもらうことは私たちの大事な役割だと考えています」と話します。

リニューアル後の施設は一度訪れた方が見ると大きく変わったと思うことでしょう。正面入口の壁を取り払い入館しやすい雰囲気にしただけではなく、館内に子ども向けのスペースを設けたり車いす利用の方も展示をより楽しめるようにしたりと、訪れた方々みんなが満足できる工夫や思いがあちこちにあふれています。2026年1月のオープンを楽しみにお待ちください。

※2025年12月4日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。