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体験を通じて未知の「知」に触れる

-東洋文庫で視覚特別支援学校生の職業体験実習-

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東洋学の研究図書館・東洋文庫で11月29日、中学生による職業体験が実施されました。東洋文庫が社会への貢献として続けている活動のひとつで、筑波大学附属視覚特別支援学校中学部から、3年生3名が参加しました。

3人は弱視というハンディキャップを持っていますが、
「世界有数の東洋学の研究図書館と聞いて興味を持ち、ぜひ参加したいと思いました」
「東洋文庫はどんな研究がされているところなのかを知りたいと思いました」
「学校でも図書委員を務めており、日本最大級の図書館で働くとはどういう感じなのかを知りたくて参加しました」
とそれぞれに熱い意気込みを語り、さっそく職業体験が始まりました。

今回の実習では、東洋文庫の特徴でもある図書館機能と博物館機能(ミュージアム)の両方を体験するカリキュラムが組まれ、書庫では中国から届いた新聞・雑誌の仕分けと配架作業を、ミュージアムではショーケース拭きやショップでの対応などを実際に行いました。

多くの貴重書が収められた書庫は埃厳禁。靴の上から不織布のカバーを装着し、いざ体験開始。
新聞の分類から作業はスタート。知っているようで初めて見る中国の漢字で書かれた新聞名に悪戦苦闘!
続いて雑誌の仕分け。こちらも雑誌ごとに分けたうえで、東洋文庫の蔵書の証であるスタンプを押していく。
インクが紙になじむよう、数日かけてしっかり乾かす。3人がスタンプを押した本も、資料として活用されていくことに。
仕分けの終わった本の配架作業を体験。ボタンひとつで棚が一斉に動き出す閉架書庫を初体験した3人から歓声が上がります。
「この棚は何番?」共同作業で一冊ずつ整理番号を確認しながら正しい位置へ。資料の利用者にスムーズに閲覧提供するための大切な作業。
ミュージアムでは展示ケースの清拭作業を体験。埃や指紋のないケースで、利用者に気持ち良く閲覧してもらうことを学習。

「生徒たちに仕事をリアルに理解してもらう意味で、職業体験はとても大切な機会です」と、引率の丹治達義教諭は話します。

「視覚に障害があると、自然と入ってくる情報に限りがあります。例えば校外学習に出かけても、『車窓から見える景色』という情報はないわけです。そのため生徒たちが自分で体験すること、そしてその体験を言語化することを重要視しています。今日の実習も、事前に詳しい内容はあえて伝えず、生徒たちに自ら感じてもらっています。東洋文庫さんには長年、体験の機会を提供していただけて、大変ありがたく思っています」

文庫職員との質疑応答では、「どうして東洋文庫で働くようになったのですか?」「図書部・研究部などの各部門はどんな仕事をしているんですか?」「東洋文庫で働くうえでやりがいや大変な点は?」といった質問が出され、生徒たちの「職場としての東洋文庫」への関心の高さが伺えました。

最後に、「思っていたよりもどの作業も難しく、スタンプを押すのも緊張したし、展示ケースを拭くときもお客様への配慮を学んだり、考えながら仕事をすることは大変なものだとわかりました」と、生徒たちから東洋文庫へ感想と感謝を伝えられて職業体験は終了しました。

東洋文庫では、研究図書館である一方で、より広く一般の方にも東洋学に親しんでもらえたらという想いから、「学校連携・地域連携」を打ち出し、大学や小中高等学校の教育機関(スクールパートナーシップ等)、近隣諸施設との連携事業を展開しています。今回の職業体験も、生徒たちにとって未知の「知」に触れる大きなきっかけとなったことでしょう。

※2024年12月13日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。