ライフスタイル企画

2023.12.21

旅企画「目的旅のススメ」

歴史や自然に触れて、かつての時代へ想いを馳せる。
時空を超える“ヒストリカルな旅”へ!

旅先で出会う、その地ならではの風景や食。そこには脈々と受け継がれてきた歴史、文化が必ずあり、それらを知って見る、知って食べるのと、知らずに見る、知らずに食べるのとでは、得られる感動に大きな差が生まれるのは言わずもがな。普段の旅でも、多少は歴史に触れる機会はあるが、歴史好きであれば、どっぷりその世界に没入できる旅をプランニングしてみるのはいかがだろう。ありし日を思わせる貴重な史料や人々の暮らしの跡、変わらずにあり続ける自然……。五感をフルに働かせ、その地を歩いてみれば、きっとタイムスリップしたような感覚が味わえるはずだ。

アイヌの世界と出会える場所『ウポポイ(民族共生象徴空間)』/北海道

魅力的なコンテンツにあふれた北海道は、何度訪れても飽きることがない人気の旅先だ。札幌や函館といった見どころの多い観光都市はもちろん、ニセコ、富良野など少し足を延ばせば大自然が私たちを包み込む。

ヒストリカルなスポットでいえば、江戸幕府が築造した五稜郭や明治に来道し、「少年よ、大志を抱け」の言葉を残したクラーク博士像が有名だ。だが、最新のスポットといえば、『ウポポイ(民族共生象徴空間)』の名が挙がるだろう。

提供:(公財)アイヌ民族文化財団

新千歳空港から電車やバス、レンタカーで最短40分。アイヌ語で「大きな湖」を意味するポロト湖のほとりに立つ「ウポポイ(民族共生象徴空間)」。

2020年、国の貴重な文化ながらも存立の危機にあるアイヌ文化の復興、創造のための拠点として白老町にオープン。以来、より深くアイヌの歴史や文化に触れられるスポットということもあり、多くの人が訪れている。

提供:(公財)アイヌ民族文化財団

主な施設のひとつ、「国立アイヌ民族博物館」は先住民族アイヌを主題とした日本初の国立博物館だ。ちなみに、民族名称である「アイヌ」という言葉は、「人間」を意味するアイヌ語。

メインフロアの基本展示室では、歴史、言葉、暮らし、仕事など6つのテーマを「私たち」という切り口で、アイヌ民族の視点から紹介している。

提供:(公財)アイヌ民族文化財団

入ってまず展示されているのは、「イノミ」。アイヌの世界観の中心となるカムイの考え方、自然観、死生観などを知ることができる。

続いて、音楽や舞踊などの芸能や衣食住、現代に続くアイヌの歴史、伝統的な生業、そして他民族との交流まで。いずれの展示も貴重なものばかり。時間を忘れて見入ってしまう。

提供:(公財)アイヌ民族文化財団

他にも「国立アイヌ民族博物館」内には、ライブラリやシアターも完備。また、音声ガイド機やアプリを通して展示の詳しい解説を音声で聞くこともできる。

提供:(公財)アイヌ民族文化財団

博物館を見学した後は外に出て、「国立民族共生公園」内の各施設へ。

ポロト湖畔には「チセ」と呼ばれる伝統的なアイヌの家屋が再現され、実際に中へと入ってその生活空間を体感することができる。また、「体験交流ホール」では、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「アイヌ古式舞踊」の上演を鑑賞することも可能だ。

提供:(公財)アイヌ民族文化財団

多様なプログラムを通じてアイヌ文化を学べる体験型のフィールドミュージアムという点でも、興味深い。

縄文時代から続くといわれるアイヌの世界にどっぷり浸った後は、北海道への想いがまた強くなるに違いない。

『ウポポイ(民族共生象徴空間)』

〒059-0902 北海道白老郡白老町若草町2-3
☎ 0144・82・3914
入場料 大人1,200円、高校生600円、中学生以下無料
開園時間 9時〜17時 ※時期によって閉園時間が異なる

空海が開いた天空の聖地『高野山』/和歌山県

2023年の大河ドラマで描かれた徳川家康。織田信長、豊臣一族、明智光秀ら多くの戦国スターが登場し、大いに話題となった。では、そんな彼らが眠る場所はどこに?

答えは、2004年に「紀伊山地の霊場と参詣道」として、世界遺産に登録された和歌山県・高野山。

標高約1000m級の峰々に囲まれた山上盆地に広がるその場所は、弘法大師(空海)によって開創された真言密教の聖地。決してアクセスがいいとは言えない場所だが、それがゆえ、下界とは切り離された神秘的な空気に満ち、今も多くの人を引き寄せる。

本来は高野山全域が「金剛峯寺」であり、広い境内には117の寺院をはじめ、見どころがたくさんあるため、1日では到底回り切れない。じっくりと高野山の世界観に没入するなら、宿坊に滞在し、かつての修験者と同じように瞑想や写経を体験したり、空海にまつわる伝説をめぐるのがおすすめだ。

ちなみに先述した戦国武将たちの供養塔や墓があるのは「奥之院」の参道。樹齢約700年の杉木立の下には、皇族から諸大名、庶民まであらゆる階層の人々の墓石や祈念碑、慰霊碑が約20万基を超え、建ち並ぶ。

武田信玄・勝頼、上杉謙信、伊達政宗、石田三成、明智光秀のほか、高台の一等地には豊臣家一同や、織田信長など天下人たちが陣取る。徳川二代将軍秀忠の正室であり、信長の姪でもある江姫の供養塔も杉木立の奥に静かに佇んでいる。

「奥之院」と並ぶ見どころのもう一つ、「壇上伽藍」も高野山を語る上で外せない。空海が真言密教の根本道場を開くにあたり、最初に整備に着手した場所であり、密教の思想を具現化した世界初の大伽藍だからだ。

「根本大塔」の内陣には曼荼羅の世界が立体的に表現され、空海の世界に触れることができる。また、今なお重要な行事が行われているという「金堂」も必見だ。

他にも、高野山の総門であり、結界のシンボルである「大門」、1643年に三代将軍家光によって建立された「徳川家霊台」など、高野山の見どころはたくさん。

季節によっては朝霧や雲海が見られることもあり、その幻想的な光景はまるで神話の世界。平安時代から1200年の時を超え、今なお脈々と受け継がれる空海の教えに触れる唯一無二の旅が叶う場所だ。

『高野山真言宗 総本山金剛峯寺』

〒648-0294 和歌山県伊都郡高野町高野山132
☎︎ 0736・56・2011
「金剛峯寺」、「金堂」、「根本大塔」、「徳川家霊台」、「授戒料」共通内拝券 中学生以上2,500円
※拝観時間はHP参照

日本の歴史の転換期をつぶさに見つめてきた『二条城』/京都府

歴史にどっぷり浸る旅として、まず頭に浮かぶ行き先といえば、古都・京都。世界遺産も多く、どこを訪れてもその長い歴史に触れることができるとあり、まるで街そのものがテーマパークのようだ。

だがやはり、2023年は徳川家康イヤー。大河ドラマの主人公ゆえ、彼に縁のあるスポットが注目を集めているのは言うまでもない。京都であれば当然、徳川家の栄枯盛衰と日本の長い歴史を見つめてきた「二条城」を訪れたい。

1603年、江戸幕府初代将軍となった家康が天皇の住む京都御所の守護と将軍上洛の際の宿泊所として築城した「二条城」。1867年に十五代将軍慶喜が大政奉還の意思を表明したのが、ここ「二条城」の「二の丸御殿」だったことはあまりにも有名だ。

そんな歴史ある「二の丸御殿」は、部屋数33室、800畳と実に広大。中では「松鷹図」をはじめ、将軍の威厳を示す虎や豹、桜や四季折々の花を描いた狩野派の障壁画(模写画)が見られ、歴史好きのみならずアート好きも多く訪れる。

絢爛たる桃山文化の遺構といえば、「二の丸御殿」の正門にあたる「唐門」もそう。長寿を意味する「松竹梅に鶴」や聖域を守護する「唐獅子」など、修復された極彩色の彫刻が実にきらびやかで美しく、往時の姿を思わせる。

また、多数の石組みを配し、力強さあふれる独特の景観をもつ「二の丸庭園」は「二の丸御殿」に隣接し、家康による築城時から存在したと考えられている。行幸時に「大広間」、「黒書院」、「行幸御殿」の三方向から鑑賞できるよう工夫されていたというから驚きだ。国の特別名勝にも指定されている。

見張り台として機能していた外堀の隅櫓も、東南と西南の2つだけが残り、国の重要文化財に指定されている。夜になると、ライトアップされた「東南隅櫓」を見ることができる。

城内の梅、桜、さつき、紅葉、椿とともに、移ろう四季に佇む美しい歴史遺産は、何度訪れても色褪せない。

『二条城』

〒604-8301 京都府京都市中京区二条通堀川西入二条城町541
☎︎ 075・841・0096
入城料 大人1,300円、中高生400円、小学生300円
開城時間 8時45分〜16時(閉城17時)
※休城日はHP参照

構成・文/一寸木 芳枝

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