ライフスタイル企画

2024.03.21

旅企画「目的旅のススメ」

名城と桜。
“ニッポンの春”を堪能する旅へ

写真提供:姫路市

春が待ち遠しいのは、重いコートを脱いで身軽になれるからだけではない。この国の美しさが際立つ、桜舞う季節でもあるからだ。今年はさぁ、どこで観よう。開花予想をチェックしながら、あれこれ考える時間もまた楽しい。いつもの散歩道に咲く桜も定番スポットで咲く桜も、どこで観ても心浮き立つのは間違いないが、たまには趣向を変えてみるのも手。城歩きがブームの今、“桜と城”の2大共演を鑑賞するのはいかがだろう。歴史を紐解きながら、いにしえに想いを馳せてみれば、まるでタイムスリップしたような気分を味わえる。名城と桜を一つのフレームに収められる、とっておきの場所をご紹介。

唯一無二の美しさを誇る日本初の世界文化遺産。兵庫県『姫路城』

シラサギが羽を広げたような優美な姿から「白鷺城」の愛称で親しまれる姫路城。2009年から約5年半かけて行われた平成の大改修により、白漆喰総塗籠造りの鮮やかな白の城壁を取り戻し、ありし日の姿を今に思わせる。

写真提供:姫路市

奈良、法隆寺地域の仏教建造物とともに日本初の世界文化遺産に登録され、2023年で30周年を迎えた。

今も変わらず、木造建築の最高傑作と世界から高い評価を受けている。

写真提供:姫路市

1346年に赤松貞範が姫山に築いた城が前身で、1580年に羽柴秀吉が入城すると、3層の天守閣を建築。

国宝にも指定されている大天守は、1609年に建築されたもの。約31.5mと江戸時代以前に建築された“現存12天守”のなかで最も高い。

その後、池田輝政、本多忠政によって城は拡張を続け、現在の全容が整ったのは戦乱の世が落着いた1618年といわれている。

写真提供:姫路市

例年、桜の見頃は3月下旬〜4月上旬。ソメイヨシノを中心に約1,000本が咲き誇り、姫路城の大天守や白壁に映える景色は、「さくら名所100選」にも認定されている。

城を背景にした三の丸広場の桜並木や西の丸庭園のしだれ桜などは必見だ。

写真提供:姫路市

また、世界的照明デザイナーである石井 幹子氏の設計・監修のもと、姫路城の白漆喰がより美しく、より多彩な色で彩られる「彩雲ライトアップ」も好評。

他にも観桜会や夜桜会といったイベントも盛んに行われ、訪れる者を楽しませている。

満開の桜と花びら散る幻想的な風景は、一度観たら深く心に刻まれるはずだ。

『姫路城』

〒670-0012 兵庫姫路市本町68
☎ 079・285・1146
開城時間:9時~17時まで(閉門は16時)
休城日:12月29日、30日
入城料:大人(18歳以上)1000円、小人(小中高生)300円

国宝の天守と桜が凛とした美しさを放つ。滋賀県『彦根城』

1604年に着工し、実に約20年の歳月をかけて完成した彦根城。14代にわたって城主を務めてきたのは、徳川家康の家臣だった井伊家。幕末の大老・井伊直弼もこの彦根城内で生まれ、35歳で彦根藩主となった。

見どころはなんといっても、3階建て3重の屋根で構成された天守。

近世の城で天守が残っているのは、弘前、松本、犬山、丸岡、彦根、姫路、備中松山、松江、丸亀、松山、宇和島、高知の12城。彦根城は国宝に指定されているそのうち5城のひとつだが、一度も戦を経験することなく明治時代を迎えたことから、ほかに比べ保存状態が良好といわれている。

また、堀も彦根城の特徴のひとつ。

琵琶湖の支配を任されていた井伊家には、江戸時代、160隻以上の軍船の備えがあったといい、彦根城の堀には琵琶湖の水を引き入れていたという。

桜の見頃は3月下旬〜4月上旬。お堀から桜見物ができる屋形船による遊覧運行も最盛期を迎える。

ソメイヨシノを中心に約1100本が見せるピンクのグラデーションは、満開のタイミングも美しいが、お堀を花筏が埋め尽くす散り際もまた風情があって心に残る。

築城当時の姿で保存された天守に向かう山道、眼下の城内がピンクに染まる天守からの眺め。

どこから観てもフォトジェニックな春は、間違いなく彦根城が最も美しい季節だ。

『彦根城』

〒522-0061 滋賀県彦根市金亀町1-1
☎ 0749・22・2742
開場時間:8時30分~17時まで(最終入場は16時30分)
入場料:大人800円、小人(小中学生)200円

歴代の天下人が魅了された絶景に想いを馳せる。愛知県『犬山城』

愛知県と岐阜県の県境、日本有数の大河、木曽川を見下ろす丘陵に立つ犬山城。まるで絵画のような美しい佇まいに魅了されてきたのは、現代に生きる私達だけではない。信長、秀吉、家康、歴代の天下人もまた同じだ。

織田信長の叔父、織田信康により築城されたのは1537年。

武将達がどうしてもこの城を手に入れたいと願ったのは、背後は断崖絶壁という典型的な「後ろ堅固」の城であること、美濃、尾張、三河を広く見渡せる立地条件が整っていたたから。

秀吉と家康が直接対決した小牧・長久手の戦いの舞台にもなった。

ただ、1617年以降は、代々成瀬家が城主となり、2004年に「財団法人 犬山城 白帝文庫」の所有となるまで、全国唯一の個人所有の城として保存されてきたというから興味深い。

現在、城内に植えられている桜は、成瀬家によって、1961年~1965年にかけて植えられたそう。

桜の見頃は3月下旬~4月上旬。河岬一帯にソメイヨシノほか約400本あまりが満開を迎えると、城下町はひときわ華やぐ。

4月の第一土日に行われる犬山祭では、車山13輌が城下町に繰り出し、笛や太鼓に合わせてからくり人形を披露。この江戸時代から続く豪華絢爛、迫力満点の祭りはユネスコ無形文化遺産にも登録されており、これを目当てに訪れる人も多い。

木曽川沿いの遊歩道は河岸と堤防上にふたつの遊歩道があり、歩くだけでも風情がたっぷり。

遠景の素晴らしさ、天守からの眺望、受け継がれる祭り…。歴史の荒波を生き抜いた武将達にとっても、きっと春は心休まる季節だったに違いない。

『犬山城』

〒484-0082 愛知県犬山市犬山北古券65-2
☎︎ 0568・61・1711
開城時間:9時~17時まで(最終入城は16時半)
休城日:12月29日〜31日
入城料:大人550円、小人(小中学生)110円

構成・文/一寸木 芳枝

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