ライフスタイル企画

2024.04.04

本を読めば「今」が見えてくる――BOOK REVIEW Vol7

学びの季節を、本で後押し!
新しいことを学びたいときにピッタリの3冊

新しい部署やポジションで4月を迎えた人も多いだろう。自分自身は変わらずとも、新入社員のフレッシュな表情に刺激されたり、新着任者を迎え、気持ちも新たに仕事と向き合い始めた人も少なくないはず。今年度こそとスキルアップに励もうとしている人におすすめの3冊をご紹介。まだ今ひとつエンジンがかからないという人は、この本で刺激を受けるところからスタートを!

 巻き込む力がヒットをつくる“想い”で動かす仕事術

巻き込む力がヒットをつくる
“想い”で動かす仕事術
村瀬 健著 KADOKAWA(1,600円)

今まさにやる気がみなぎっている方におすすめしたいのが、『silent』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など数々のヒット作を生み出してきたプロデューサーの著者が語る、リアルな仕事術の本。人気ドラマのプロデューサーなどといういかにも業界人らしい職業、自分には関係ない、と思うなかれ。企画書の書き方、上司からのOKの取り方、アポイント術、時間術、メール術、チームメンバーをその気にさせるコミュニケーション術など、あらゆる職業の人に役立つ内容ばかり。さらに「東京ドラマアウォード 2023」で6冠を獲得したというドラマ『silent』の社内プレゼンで提出した企画書も全ページ掲載しているのをはじめ、随所にヒットドラマの開発秘話が明かされていて、テレビ業界の裏側を垣間見るような面白さも味わえる。
「ヒット作を作るには天才になることではなく天才を巻き込むことが大事」と語る著者。そんな著者流の「人を巻き込む」テクニックを学び、一つ一つ実践に移すことで、テレビプロデューサーでない私達もみな、自分の持ち場の「名プロデューサー」になれる気がする。

「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる!
                            続ける思考

「やりたいこと」も「やるべきこと」も全部できる!
続ける思考
井上 新八著 ディスカヴァー・トゥエンティワン(1,760円)

自分は職人タイプ。先頭で旗を振って進むタイプではないから――そんな方におすすめなのはこちら。ビジネス書を中心とした年間約200冊のブックデザインを、アシスタントもつけず一人でこなしているという著者による、「継続」スキルのハウツー本。肩書には「ブックデザイナー」と並べて「習慣家」とある。毎日ジョギング25年、毎日日記23年、毎年写真展開催20年、1日1冊本を読み、ほぼ毎日映画館で映画を観る。一体彼は何人いるのだろう?と不思議になるほど。そんな生活を続けるうちに、著者は「続ける」ことが趣味なのだと気づく。「続ける」をコレクションしているのだ。そんな著者が長年かけて編み出した「続ける」テクニックを公開している本書。何を続ければいいのか、続けることにはどんな意味があるのか、どうやれば続けられるのか、時間がないときや気分が乗らないときはどうすればいいのか…そんな「続ける」にまつわる疑問や不安に一つ一つ答え、気軽に一歩を踏み出し、無理なく続けるための心構えや方法を教えてくれる。
新年に宣言した今年の抱負がさっそく崩壊している方も、新年度を機に改めて、夢実現のために毎日続けたいことをリスト化してみてはどうだろう。まず始める、ただ続ける、その小さな一歩の積み重ねが、いつか想像を超えた未来へと連れて行ってくれるのだ。

ほどよく忘れて生きていく 〜91歳の心療内科医の心がラクになる診察室〜

令和ブルガリアヨーグルト
宮木 あや子著 KADOKAWA(1,815円)

そうはいっても毎日、目の前の仕事で精一杯。そんな人に是非読んでほしいのがこちら。「吾輩は乳酸菌である。名前はブルガリア菌20388株」。こう自己紹介する乳酸菌(通称)が見守っているのは、学生時代に読んだネット投稿小説をきっかけにブルガリア菌に心を奪われ、そのままヨーグルトメーカー「明和」に就職した「リケジョ」朋太子 由寿(ほうだいし・ゆず)。大学院に進まなかったために研究職の道に進むことなく、大阪支店量販部での営業職を経て、広報部に異動。そこで社内報の「明和ブルガリアヨーグルト五十周年」企画で12人の社員にインタビューをすることに…。そんな由寿のお仕事&推し事小説。
本書が面白いのは、主人公由寿が「乳酸菌」にも会社「明和」にも特別な思いを抱いているものの、営業職や広報職に対する特別な自負も、「社会のため」「お客さまのため」といった大志も、ほぼ感じさせないこと。「パーパスを見つけ、主体的にキャリアを構築することが重要」といわれがちな昨今だが、毎日、縁のあった仕事に誠実に精一杯取り組み、取引先の方や先輩達と関わるなかで学び成長していく、という姿も同じくらい、魅力的で誇るべき働き方なのだと感じさせてくれる。劇中劇的に随所で登場する「ネット投稿小説」は乳酸菌にまつわるマニアックな情報が詰まっているので、同時に雑学知識を広める場として楽しんでほしい。

ライタープロフィール

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文/吉野ユリ子
1972年生まれ。企画制作会社・出版社を経てフリー。書評のほか、インタビュー、ライフスタイル、ウェルネスなどをテーマに雑誌やウェブ、広告、書籍などにて編集・執筆を行う。趣味はトライアスロン、朗読、物件探し。

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