ライフスタイル企画

2025.10.02

旅企画「目的旅のススメ」

秋の夜長、美しくも幻想的に輝く“月”に魅せられて

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平安時代に生まれた『竹取物語』や『源氏物語』、『枕草子』、鎌倉時代には『徒然草』にも描かれるなど、今へと受け継がれる名作に月は頻繁に登場する。明治時代、夏目漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したという逸話も有名だ。地球にいちばん近い天体であり、太古の昔から変わらない月の満ち欠けは、いつの時代も私達の心を揺さぶる。空気がクリアになり、夜が長くなる秋は、月をより身近に感じられる季節。今年10月7日は、1年で最も大きく月が見えるスーパームーン。夜空に輝く月を眺めながら、ゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがだろう。

【宮城県】いにしえの人々が恋いこがれた幻想的な月景色『松島』

その風光明媚な景色から、京都府の天橋立、広島県の宮島と並び、日本三景のひとつに数えられる松島。

松島湾内外にある大小260余りの島々と湾を囲む松島海岸が見せる四季の景色は、いつ訪れても美しく、「西行戻しの松公園」、「雄島」、「双観山」などの展望地は1年中、観光客でにぎわう。

写真提供:(一社)松島観光協会

日中の晴れやかなその風景も素晴らしいが、松島は古くから日本を代表する名月地。

戦国武将の伊達政宗、松尾芭蕉、そしてアインシュタインまで。この地で見る月は、時空も国境も飛び越え、多くの人々を魅了。だからこそ、月を見ずには帰れない。

写真提供:(一社)松島観光協会

満月に近い日、月の出から2時間程の間に月明かりが描く「金波」。やがてその月が天の真上近くに昇り始めると、海は「銀波」をたて、白銀の世界へと趣を変える。

写真提供:(一社)松島観光協会

島々や松の陰影が浮き上がると、まるで水墨画の世界が広がる。

俳人、松尾芭蕉が松島湾に浮かぶ月を「武蔵野の月の若生えや松島種」と詠んで憧れたというのもうなずける絶景だ。

『松島観光協会』

〒981-0213 宮城県宮城郡松島町松島大沢平
☎︎022・354・2618

【岐阜県】織田信長の天下統一の始まりの地『岐阜城』

金華山の頂に位置する岐阜城と重なる月を納めた1枚の写真がSNSを中心に大きな反響を呼んだのは2019年。それに続き、岐阜市が観光ポスターに起用したところ、そのドラマティックな構図が話題となり、観光誘致に大きく貢献。

今では「月と岐阜城」をカメラに収めるためのツアーを開催する旅行会社があるほど、人気のコンテンツとなっている。

なぜ、こんな写真を撮影できるのかというと、そもそも岐阜城は標高 329mの金華山の上に建ち、濃尾平野に囲まれていることから、数㎞離れた地点からも撮影が可能だからだという。

もちろん、撮影地点や時間、天候など“奇跡の1枚”には諸条件が揃うことが必要だが、その難度もまた、撮りたいと思わせる理由だろう。

かつては稲葉山城と称され、戦国時代には斎藤道三の居城だった岐阜城。1956年に復興された現在の城の最上階からは、眼下に長良川、東に恵那山、木曽御岳山。そして北には乗鞍、日本アルプスを望む。

旧暦の中秋の名月である8月15日は、450年前に織田信長が稲葉山城(現在の岐阜城)に入城した日と同じという言い伝えもまた、想像を掻き立てる。

“難攻不落の城”と称されたその城を中と外、両方から眺めてみるのも面白い。

『岐阜城』

〒500-0000 岐阜県岐阜市天主閣18
☎︎058•263•4853

【富山県】「日本百名月」認定登録地第1号『宇奈月温泉』

黒部峡谷の玄関口、宇奈月温泉。日本一の透明度ともいわれるそのお湯は、黒部川の清流を思わせる無色透明で、弱アルカリ性の単純温泉。保湿効果やリラックス効果にすぐれた“美肌の湯”として親しまれている。

駅前には情緒あふれる温泉街があり、足湯も点在。のんびり散策を楽しんだ後は、湯けむりに包まれながら一息つくことも可能だ。

秋は紅葉を楽しめるスポットも多く、温泉街の入口近くにある「想影橋 (おもかげばし)」から望む宇奈月公園の色づいた木々の姿は、見事な美しさ。

そもそも、「宇奈月」という名前は、黒部川の電源開発が始まった大正時代、この地に一大温泉地を築こうという計画が進められたことに由来。プロジェクトを率いた山岡順太郎と山田胖の2人がある夜、お湯に浸かりながら眺めた月の美しさに感動し、その情景から「宇奈月」と名付けられたという。

空気がキリッと澄み渡るこれからの季節、温泉街を歩きながら、あるいは宿の露天風呂に浸かりながら見上げれば、夜空には美しい月が輝く。

「日本百名月」認定登録地第1号というのも納得の光景だ。

『宇奈月温泉』

〒938-0282 富山県黒部市宇奈月温泉638-2
☎︎0765•485•8616(宇奈月温泉旅館協同組合)

構成・文/一寸木芳枝

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