
東北新幹線の改札を出て、西口へ向かうと一関という街の正面玄関に出る。駅には「ようこそ、一関温泉郷へ」と大きく看板に書かれている。ただ駅前には正直、目立ったものはない。地方出身者にはあるあるかもしれないが、まるで実家の駅に降り立ったような錯覚を覚える。
タクシーは常時ありそうだし、飲食店やホテルが点在しており、出張ニーズは満たされているよう。駅前にコンビニは見当たらないが、こちらもあとから聞けば、駅からメインの通り(上の橋通り)を1~2分歩くとローソンがあり、さらに歩けばもう1軒コンビニがある。レンタカー店は駅の近くに3軒あり、移動に困ることもない。
ちなみに一関市は「住みたい田舎ベストランキング」の「人口10万人以上、20万人未満のまちランキング」において「子育て世代部門」と「若者世代・単身者部門」の2部門で第3位にランキングされているという。
そんな一関は駅からメインの通りを正面に見て、東側に飲食店が点在している。意外にも飲食店は相応に充実しているようだ。夕暮れどきに街を歩いていると、人通りが多すぎず、心地よい風が吹き、梅雨どきだったにもかかわらず湿気も少なく気持ちがいい。


通常は休業しているが、イベントのお知らせが店前に貼られている。(右)
実は一関には全国に名を轟かせている店がある。ご存知の方も多いと思われるが、その名は「ジャズ喫茶〈BASIE〉(ベイシー)」。世界のジャズファンやオーディオマニアがあこがれ、カウント・ベイシーはじめ多くのジャズジャイアンツも訪れたという名店だ。ただ、コロナ禍から長期休業に入っているらしく、今年6月の段階で実際どうなっているのか。お店を訪ねてみたところ、確かに休業しているようだ。しかし、渡辺 貞夫や坂田 明などのアーティストが開くライブ時には店を開けており、今年も開催されるようなので、店に行きたい人はライブ情報を得てから行くことをおすすめする。
言い忘れていたが、一関温泉郷は国道342号沿いに点在しており、須川高原温泉や真湯温泉など7つの泉質自慢の温泉を楽しめる。旅で行くなら、地元の観光地である猊鼻渓(げいびけい)や厳美渓(げんびけい)を回ったあと、温泉郷でゆっくりと癒やされるのがいい。
一関でおすすめのお店はこれだけではない。ここからはUBE三菱セメント岩手工場の皆さんにさっそく、地元のおすすめを紹介してもらおう。
●猊鼻渓(げいびけい)

舟下りの発着所。


長さ約30mの鍾乳洞「毘沙門窟(びしゃもんくつ)」など、船頭さんがさまざまな見どころを紹介してくれる。(右)

舟下りの折り返し地点にある大猊鼻岩は高さ124m、横幅100m超という大岩壁。


運玉を岩穴に投げ入れることに成功すると、「運玉投入認定証」がもらえる。(右)

舟下りの舟は船頭さんが竿一本を操って運航する。クライマックスに披露される船頭さんの「げいび追分」に、旅情が高まる。
日本百景のひとつである猊鼻渓は、国の史蹟名勝天然記念物に指定されてから今年で100周年を迎える。岩手工場から近く、JR一ノ関駅からタクシーで30分ほど。北上川支流の砂鉄川が石灰岩を浸食してできた渓谷で、その距離は2㎞ある。「舟下りがおすすめで、景色が見どころです」(髙山さん)。川岸には最大で高さ100mほどの絶壁がそびえたつ景観は圧巻。舟下りは往復で90分だが、スピードはとてもゆっくり。舟が動き始めると鯉や川魚、カモなどが寄ってくる。どうもエサ目当てのようで、百発百中で飲み込んでいく。舟下りの折り返し地点では一度舟を降りる。「歩いていくと、運玉を投げて願掛けをする岩穴があり、運気を上げるパワースポットになっています」(古賀さん)。帰りは幸運にも女性船頭さんの「げいび追分」を聞くことができた。渓谷に声が響きわたり雰囲気抜群。冬は舟にこたつを入れ、鍋をつつきながら雪景色を満喫できるそう。舟上結婚式もできるという。舟下りの一般料金は1,800円。平日でもお客さんが多く、予約した方がいい。朝いちばんの8時半の便が空いていて狙い目だ。
一関市東山町長坂字町467
●三彩館ふじせい

一関名物の元祖一口もち膳(雑煮付き)1,750円。


コンクリート打ちっぱなしの内観もモダンでおしゃれ。(右)
一ノ関駅西口からすぐのところにある郷土料理店。一関はどうやらお餅を食べなきゃはじまらないらしい。平日に訪れたが、13時くらいだったせいか店内は混んでいない。客層は旅行客と地元の方が半々くらい。一関は全国でも珍しいつきたての餅料理が伝統食で、伊達藩時代に由来する。地元では冠婚葬祭や季節の行事、人生の節目ごとにお餅をつく。かつての「もち暦」には年間約60日もお餅をつく日があったそう。おすすめは一関名物の元祖一口もち膳(雑煮付き)で1,750円。ずんだ餅にくるみ餅、鶏挽肉とゴボウのすりおろしの甘辛味に唐辛子をきかせた独特の餅料理など、8種類のお餅が楽しめる。昼11:00〜14:00、夜17:00〜21:00 (L.O. 20:00)。月曜定休。ランチでは天丼(1,100円)なども提供している。
一関市上大槻街3-53
●NOYMOND BREWING&もんど

1階にある醸造所で醸した新鮮なクラフトビールは、常時6〜8種用意しているという。


料理は創作から定番まで50種類以上のメニューがあり、どんなお酒にあわせても楽しめる。(右)


醸造所では「ノイモンドブルーイング」ブランドのクラフトビールを醸造。(右)
JR一ノ関駅から歩いて10分ほど、飲み屋街とは少し離れたエリアにある。ビルの2階に上がって店内に入ると期待感がグッと高まる。一見バーのようだが、料理も楽しめる。1階はビール醸造所となっており、地元「ノイモンドブルーイング」ブランドのできたてのクラフトビールを楽しむことができる。「飲み放題にすれば、ビールをサーバーから自分で注いで飲むことができます。もつ鍋や馬刺しもおいしいです」(古賀さん)。ビールの種類に定番はなく、ラインナップが日によって変わっていく。営業時間は17:30~23:00(料理L.O.22:30)。日曜定休。
一関市大手町7-36 さくらビル2F
●喫茶フレンド

カウンター席など、レトロな雰囲気が素敵。


店前の通りを見下ろすテラス席。(右)

マスター。持っているパフェの大きさもうれしい。
店内に入るとまるで昭和時代に戻ったようでうれしい。ヌードル&パフェと銘打っているが、ヌードルはナポリタン(880円)くらいしか見当たらない。多くのお客さんのお目当てはパフェ。サイズもビック(850円)、普通(750円)、ミニ(650円)と3種類あり、価格もリーズナブルでおいしい。ビックは食べられる自信のある方にはおすすめ。居合わせた女性のお客さんはパフェのあとにソフトサンデーをおかわりしていた。ほかにもホットケーキやクレープ、トーストがある。「40年以上前からあり、おすすめです」(千葉さん)というように、創業50年超の老舗の喫茶で、今はマスターが1人で切り盛りしている。地元の人はこの店のパフェがソウルフードだという。営業時間は10:00~19:00。不定休。
岩手県一関市大町4-11
●いわて蔵ビール「きんくら」、フルールきくやの奥州ポテト

プレミアム地ビール「いわて蔵ビール きんくら」(418円)。

奥州ポテト(970円)
お土産のおすすめは一関を一躍有名にしたといわれる世嬉(せき)の一酒造が提供するプレミアム地ビール「いわて蔵ビール きんくら」(418円)。「世嬉の一のビールはおいしい」(千葉さん)と言うように、爽やかでスッキリとした喉越しのビール。JR一ノ関駅の売店でも販売されている。ちなみに駅周辺にある蔵元レストラン「世嬉の一」では、もちフォンデューなどいろいろな餅料理が楽しめる。もちろん酒蔵ならではの料理も。
また、フルールきくやの奥州ポテト(970円)もおすすめだ。「営業先に手土産に持っていきます」(古賀さん)。こちらも駅の売店で販売しているので入手しやすい。
世嬉の一酒造
岩手県一関市田村町5-42
お菓子のフルールきくや

伊藤 駿也
SHUNYA ITO
総務課経理係

髙山 啓
KEI TAKAYAMA
採鉱課採掘係

古賀 弘朗
HIROAKI KOGA
総務課原燃料リサイクル係

千葉 禎
TADASHI CHIBA
生産課電気係