三菱のアート

2025.12.25

頼もしいけど、どことなくユーモラス…

静嘉堂文庫美術館の戦士が大集合!
「たたかう仏像」展で新年の安寧を祈る

トップ画像

静嘉堂文庫美術館が、東京・世田谷の緑豊かな土地から、日本初のオフィス街・丸の内に美術館を移転したのが2022年10月。以来新年の展覧会は、「新春を祝う―七福うさぎがやってくる!」「ハッピー龍イヤー!〜絵画・工芸の龍を楽しむ〜」「歌舞伎を描く―秘蔵の浮世絵初公開!」と、艶やか、華やか、色とりどりの作品が目を楽しませてくれた。しかし丸の内で迎える4回目の新年は少々趣が違うようだ。展覧会タイトルは「たたかう仏像」。耳には勇ましいが、目には漢字ではなく「たたかう」とやさしい。平仮名表記のわけは…? 展覧会の見どころを案内しよう。

仏像ファンに知られた古刹、京都の浄瑠璃寺旧蔵の十二神将が登場!

「京都ではあるけれど、ここはほぼ奈良…」という、京都府木津川市にある真言律宗の浄瑠璃寺(じょうるりじ)は、国宝の九体阿弥陀仏(くたいあみだぶつ)と薬師如来を本尊とし、極楽浄土を表した池泉庭園を持つ古刹。京都の市街地からも奈良の中心地からも距離があるが、仏像ファンなら一度は訪れたい聖地でもある。この浄瑠璃寺に旧蔵されていたのが、鎌倉時代の大仏師・運慶(だいぶっし・うんけい)周辺の作者による十二神将立像(じゅうにしんしょうりゅうぞう)。現在は静嘉堂文庫美術館が7躯、東京国立博物館が5躯所蔵しているが、その静嘉堂所蔵の7躯すべてが本展にお目見えする。
十二神将は薬師如来を信仰する者のガードマン的存在。それぞれが7,000もの部下を従えて全方位を守る、まさに〝闘う〟仏像だ。東アジアでは十二神将と十二支が深く結びついているため、寺院や美術展などで対峙する機会を得ると親しみを持って鑑賞する人も多いだろう。

重要文化財「十二神将立像」寅神像(左)、午神像(右) 1/2~3/1に展示
鎌倉時代・安貞2(1228)年頃 (公財)静嘉堂蔵

2026年は午年。馬は古来戦場をも勇敢に駆けたまさに〝闘う〟動物だが、この午神像は完全武装であるものの、杖に体を預けて思案する「一時休戦」といった姿にも見える。
「今回の展覧会では、中国唐時代の神将俑を17年ぶりにご覧いただきます」とは、この「たたかう仏像」展を担当した学芸員の大沼陽太郎さん。仏教彫刻の研究が専門だという。

仏像じゃないけど限りなく仏像!? 神将俑を17年ぶりに公開!

神将俑(しんしょうよう)――「俑」とは、古代中国で死者を埋葬する際の副葬品としてつくられた人形だ。兵士や馬をかたどったもので、秦の始皇帝陵から8,000体も出土した兵馬俑(へいばよう)が知られている。
「俑はお墓の門を守る存在なので、鎧や兜をつけた武将の姿をしています。今回ご覧いただく加彩神将俑は非常に勇ましい表情やポーズが特徴。俑は仏像よりも装飾過多というか、地上の仏像にはあまり見られない、盛り盛りの鎧の表現なども見どころです」(大沼さん、以下同様)
仏像も俑も何かを守る役割を持つ存在。大沼さんは、それらが着用している鎧に注目してほしいと言う。

「中国唐時代につくられた神将俑と、日本の鎌倉時代の十二神将像を同じ空間で展示するのでぜひ見比べてみてください。この中国唐時代の神将俑に、日本の鎌倉時代の神将像の鎧の源流を見ていただけると思います。加彩神将俑は土で成形して焼いた後に彩色しているのですが、この彩色が非常に細かくとてもきれいで、水色や緑色などの色彩もよく残っています。約120cmと大きく搬送がとても難しいので、次はいつお披露目できるか…。本展でぜひじっくりご覧いただきたい展示物のひとつです」

加彩神将俑 開口像(左) 閉口像(右) 通期展示
唐時代・7世紀 (公財)静嘉堂蔵

神将像のルーツとも考えられる神将俑。静嘉堂文庫美術館には加彩神将俑が2躯、同じく唐時代の三彩神将俑が5躯あり、本展で揃ってお目見えする。

仏画や刀に描かれた小さな仏像も見逃さないで!

仏画に描かれた変化球的な〝たたかう〟仏像も紹介しよう。法華経を信じる人を守護するため、6本の牙を持つ白い象に乗ってやって来るのが普賢菩薩(ふげんぼさつ)。「今まさにあなたのもとへ…」というライブ感やありがたさを感じる名品の多い普賢菩薩像だが、静嘉堂文庫美術館のそれも重要文化財に指定されている。〝たたかう仏像〟を描いたものには見えないが…。
「象の頭の上を見てください。武器を持つ明王のような姿の化人(けにん)が描かれているのですが、踊っているようにも見えて楽しいんです」
仏や菩薩が、衆生を救うために人の姿に化身したものが化人だ。頭に三化人を乗せた白象に乗る普賢菩薩の姿は一般的な普賢菩薩像だが、この三化人は踊っているようでもあり、酒宴で盛り上がっているようにも見える。まさに〝闘う〟ではなく〝たたかう〟と表現したくなる。ほかにも、刀身に彫刻された毘沙門天や、厨子に描かれた不動明王など、彫刻の仏像以外も多数展示される。

重要文化財 普賢菩薩像 前期展示

鎌倉時代・13世紀 (公財)静嘉堂蔵

刀 銘 国路 通期展示
桃山時代・16~17世紀 (公財)静嘉堂蔵

所持者への加護を期待して彫られる刀身彫刻。本作は、見得をきった仁王のような体勢で、憤怒の表情を浮かべた毘沙門天(びしゃもんてん)が表されている。

初公開! 金銅十一面観音坐像および厨子のうち厨子 通期展示
鎌倉時代・14世紀 (公財)静嘉堂蔵

不動明王と愛染明王が、春日大社と周辺の景色とともに描かれた厨子。大日如来の化身とされる不動明王は、右手に剣を、左手に索を持ち、憤怒の表情で火焔を背負う姿で描かれている。

皇居で新年祝賀の一般参賀が行われる1月2日に始まる本展。皇居のお堀に面した静嘉堂@丸の内で、勇ましい姿だけでない〝たたかう〟仏像を鑑賞して、新年を言祝いでみてはいかがだろう。

美術館データ

静嘉堂文庫

「たたかう仏像」

Battling Buddhist Images


会場:静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内/東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1階)


会期:2026年1月2日(金)~3月22日(日)
前期:1月2日(金)~2月8日(日) 後期:2月10日(火)~3月22日(日)
※後期期間中に重文・十二神将立像のみ一部展示替えあり
会期中休館日:月曜日(ただし、祝日の1月12日と2月23日は開館)、1月13日(火)、2月1日(日・全館停電のため)、2月24日(火)


開館時間:10時~17時
第4水曜日は20時閉館、3月20日(金・祝)と21日(土)は19時閉館、いずれも入館は閉館の30分前まで


入館料:一般1,500円、大学・高校生1,000円、中学生以下無料


【関連イベント/講演「浄瑠璃寺旧蔵十二神将像は運慶作か」】

講師:奥健夫氏(武蔵野美術大学教授)
日時:2026年2月14日(土) 14時~15時30分
会場:明治安田ヴィレッジ「明治安田ホール」(東京都千代田区丸の内2-1-1 4階)
参加費:1,500円(本展入館料込み参加券) 要予約


【関連イベント/担当学芸員のスライドトーク】

日時:2026年1月11日(日)、1月25日(日)、2月22日(日)、3月8日(日)、いずれも11時~、14時30分~
会場:明治安田ヴィレッジ「明治安田ギャラリー」(東京都千代田区丸の内2-1-1 1階)
定員:各回40名
参加費:無料(ただし要当日入館券) 当日整理券配布(予約優先)


【関連イベント/静嘉堂文庫(世田谷区岡本)探検!】

通常非公開の静嘉堂文庫内部を学芸員が解説。庭園もご案内します。
日時:2026年2月24日(火)、2月27日(金)いずれも10時30分~、14時30分~
定員:各回20名
参加費:本展入館料込み参加券(3,000円) 要予約


問い合わせ:☏ 050・5541・8600(ハローダイヤル)

ホームページ https://www.seikado.or.jp/

X(旧Twitter) @seikadomuseum

instagram @seikado_bunko_artmuseum

割引クーポン

一般入館料200円割引券

※入館時にこの画面をお見せください
※上記リンク先の赤い「チケット購入ボタン」からご予約いただけます
※2名様まで1回限り有効
※他の割引と併用不可

<会期中の2026年3月22日(日)まで>

過去の記事

TOP