三菱のアート

2026.06.04

「怖い!」は進化し続けるエンタメコンテンツ!?

この夏は東洋文庫ミュージアムの
『「怖い」本』展で恐怖体験はいかが?

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ホラー映画にお化け屋敷、恐怖小説や漫画、ホラーホテルまで登場し、近年の“恐怖体験”は人気コンテンツのひとつだ。鑑賞したり読んだりするだけでなく、没入感の大きいものやミッション型、演劇型と呼ばれる参加しながら恐怖を味わうものがトレンド。“怖い”をテーマにした展覧会も少なくない。
東洋文庫ミュージアムが今夏開催するのが『「怖い」本』展。古来、教訓や戒めとするために描かれてきた数々の怖い本や、物語として楽しむために描かれた怪談本などを通して、時代とともに変化してきた“怖い”という感覚を展観。講談公演つきナイト・ミュージアムや講演会なども開催される、『「怖い」本』展の見どころを紹介しよう。

怖い?酷い?死後の世界を残酷に描いた仏教絵画

「この展覧会では“怖い”という言葉をいろいろな角度から取り上げます」と話すのは、本展担当学芸員の横手夢奈さん。
「まずは“怖い”ことのひとつとして、描かれた死後の世界をご紹介します。そのうちのひとつ『九相図巻』は、僧侶の色欲を断つ修行にも使われたと言われている巻物です。亡くなったらみんなこんな風になってしまうのだから、現世で色恋云々いっても仕方ない、といった感じでしょうか。“あの世の世界”と題した第1章では、昔も今も共通して怖いと感じる資料を展示します」
九相図とは、屋外に打ち捨てられた女性の死体が朽ちていく様子を9段階で描いたもの。ガスが充満して膨張し、腐敗によって皮膚が壊れ、体液や血液が流れ出し、虫がわいて鳥獣に食われ…など、目を覆いたくなるような惨状が描かれている。

『九相図巻』 鎌倉時代成立か(書写年不明)
公益財団法人東洋文庫蔵

人間の美しさが変化しやすいことを示し、仏僧の色欲を絶つ修行に使われた九相図。画像は、血肉や皮脂がなくなり骨だけになる骨散相といわれる8段階めの様子。

『往生要集』源信 985年成立 13~14世紀刊
公益財団法人東洋文庫蔵

比叡山中の寺院の僧・源信が、経典などから往生(死後に極楽へ行くこと)に関する文章を集めた仏教書。生前の罪によって行き先が決まる八大地獄をはじめ、地獄についても詳しく描写されている。

日本とアジアの妖怪、“怖い”から“面白い”へ

第2章のテーマは“日本の怪奇”、第3章は“アジアの怪奇”だ。太平の世が続いた江戸時代には、恐怖を演出して楽しむ怪談会「百物語」が流行。版本も多数出版された。また、アジアの怪奇といえば、香港のアクションとコメディを盛り込んだホラー映画『霊幻道士』のキョンシーを思い浮かべる人はいるだろうか。キョンシーとは動く死体のこと。怖いものをエンタメ化したり伝説として語り継いでいるというのも面白い。

「『菅家物語』という奈良絵本があります。これは、京で活躍しながら周囲の妬みによって大宰府に左遷された菅原道真が、亡くなったあと雷神になって京に災いをもたらし、その怨霊が鎮魂され、天神さまとして神格化されたという物語です。かつては不可解な現象を起こす怖いものは姿を見せなかったけれど、近世には、不可解な現象を起こす化物は姿が描かれるようになります。そうすると、絵本になったり、双六などおもちゃの題材になったりというように、表現がどんどん変わっていきます。2章と3章では、怖いという感覚の変遷を扱っています」
古代の日本では、強い恨みをもって亡くなると怨霊になると考えられていた。災害や病気など、災いは人ならざるものの祟りというわけで、実際に怨霊を鎮めるための儀式も行われた。近世になると、人ならざるものはときに滑稽な姿でキャラクター化され、娯楽の対象になっていく…といった具合だ。
「怖いという感覚は、時代や地域によって移り変わるもの。本展で“怖い”を楽しみながら、価値観は一定じゃないということを改めて考えていただけたらと思います」

『絵本百物語』桃山人撰・竹原春泉画 江戸時代・1841年
公益財団法人東洋文庫

40種以上もの妖怪が滑稽かつ繊細に描かれた、妖怪図鑑のような怪談本。これは歌舞伎や文楽、落語でもおなじみの「累(かさね)」という妖怪を紹介する1ページ。

『菅家物語』 室町時代成立 江戸時代前期(17世紀)写
公益財団法人東洋文庫蔵

怖いというより、“ゆるかわ”的なほのぼのとした印象も。

『点石斎画法』 尊聞閣主人(メイジャー兄弟)編 1884~1898年 上海刊
公益財団法人東洋文庫蔵

広く知られたキョンシーのイメージとは少々異なるが、死体が立っているだけでゾッとする。

『中国の刑罰』 メイソン 1804年 ロンドン刊
公益財団法人東洋文庫蔵

中国で行われていた拷問のひとつ。脚の腱を切るという残酷な刑罰だが、執行するほうは無表情、やられる罪人の表情は楳図かずお風とユニーク。

子どもや若い世代も楽しめる夏休みらしい展覧会

本展会期中には、趣向を凝らしたイベントも開催される。ミュージアム講演会のひとつは、作家の楊逸(ヤン・イー)氏による中国の怪談について。
「いま中国で起きている怪談ブームにちなんで、中国での怪談の展開についてお話しいただく予定です。そしてもうひとつ、作家の京極夏彦さんには江戸時代の版本についてご講演いただきます」
さらに、小学1年生以上を対象にナイト・ミュージアムも開催。講談師による怪談噺と、照明を少し落とした展示室での鑑賞で、ゾッとする体験ができそうだ。

『石川村五右衛門物語』 富川房信 江戸時代・1776年
公益財団法人東洋文庫蔵

安土桃山時代に実在したとされる石川五右衛門は、盗賊団の首領として捕まり、処刑されたことが知られている。本書は、京都の河原で釜茹での刑に処されるという壮絶な最期を描いたもの。五右衛門風呂の由来となった場面だ。

『怪談』 ラフカディオ・ハーン(小泉八雲) 1914年 ボストン刊
公益財団法人東洋文庫蔵

「耳なし芳一」「ろくろ首」「雪女」をはじめとした17篇の短編と、3篇のエッセイを掲載。

日本だけでなく、ほかのアジア地域での“怖い”を描いた本や、当時は怖くなかったけれど現代の感覚で見ると“怖い”本なども。夏らしい展示やイベントが行われる東洋文庫ミュージアムの本展鑑賞後は、ホラー小説や怪奇漫画が読みたくなるかも…。併設されているレストラン「オリエント・カフェ」でのコラボメニューも楽しみに出かけたい。

博物館データ

東洋文庫ミュージアム

企画展『「怖い」本』

Scary Books:-Villains,Tortures,Monsters,and…?


会場:東洋文庫ミュージアム(東京都文京区本駒込2-28-21)
会期:2026年6月3日(水)~9月23日(水・祝)
会期中休館日:火曜日(祝日の場合は翌平日)
開館時間:10時~17時(最終入館は16時30分)
入館料:一般1,000円、65歳以上900円、大学生800円、高校生700円、中学生以下無料


【ミュージアム講演会「進化する怪談」】
講師:楊逸氏(作家、日本大学芸術学部教授)
日程:6月27日(土) 14:00~15:30
【ミュージアム講演会「怖い本 怖くない本」】
講師:京極夏彦氏(小説家、印刷博物館館長、日本推理作家協会監事)
日程:8月8日(土) 14:00~15:30
【ミュージアムワークショップ
「こわいナイト・ミュージアム-講談で聞く怪談ばなし-】
出演:神田山緑氏(講談師)
日程:8月1日(土) 17:00~19:00
※上記の演題は変更となる可能性があります
※要予約


ホームページ https://toyo-bunko.or.jp/

X(旧Twitter)@toyobunko_m


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