三菱のアート

2026.01.22

日本最大の東洋学の研究図書館&ミュージアムがリニューアル

朝ドラ「ばけばけ」小泉八雲の手紙も…
東洋文庫ミュージアム「ニッポン再発見」で発見!

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2024年の年末から約1年間の休館期間を経て、東洋文庫ミュージアムが1月21日にリニューアルオープンした。東洋文庫といえば、日本最大にして世界でも五指に数えられる東洋学の研究図書館であり、それらの貴重な史料を展示して一般公開する博物館だ。リニューアルについては別記事東洋文庫ミュージアム、ただいまリニューアル中 | 三菱グループサイト をご覧いただくとして…リニューアル後第一弾として開催される展覧会「ニッポン再発見 ―異邦人のまなざし ―」について紹介しよう。

書籍から知る〝外から見たニッポン〟

日本に関する最も古い文字による記録は『魏志倭人伝』――ということは知っていても、実際に読んだという人は少ないのでは? これは3世紀に書かれた中国の歴史書『三国志』のなかの一部。卑弥呼や邪馬台国の時代だ。当時の日本列島に住む民族や住民の風俗や地理などが記されている。本展のテーマである「外から見たニッポン」についての最初の記録となる。本展の担当学芸員である岡崎礼奈さんに見どころについてうかがった。

「書物のなかの日本を探すというコーナーでは、『魏志倭人伝』に始まる東アジア圏での日本の認識から、中国との接触を通してどのようにヨーロッパへ伝わったかを知る手掛かりにもなる『東方見聞録』などをご覧いただきます」
『東方見聞録』は、ヴェネツィアの商人であったマルコ・ポーロが東方を旅した際に見聞きしたことや、体験したことが記された旅行記。彼は日本には来ていないが〝伝え聞いたニッポン〟として、黄金や宝石を豊富に産出し、純金の宮殿を有するジパングであると紹介。正誤はともかく、遠く離れた小さな島について記したこの書籍はヨーロッパ人の興味を誘い、大航海時代の幕開けに大きな影響を与えた。

『東方見聞録』
マルコ・ポーロ 口述、ルスティケッロ著
1485年 アントワープ刊 東洋文庫蔵

年代がわかるものだけでも、出版年・出版地・言語が異なる『東方見聞録』を約80種類所蔵。刊本のコレクションとしては世界最大。

「15世紀後半にはじまる大航海時代には、ヨーロッパとの直接的な接触もありました。宣教師や商人など日本に滞在して地理や文化を体験する人がいる一方で、ニッポンはこういう国だと正しく伝える書物はまだ多くありませんでした」
オランダの宣教師で歴史学者のアルノルドゥス・モンタヌスによる『日本誌』の、人力車を描いたと思われる絵図には、人力車ではなくパラソルを備えた手押し車に座る女性が描かれている。こうした書物を解説するキャプションにもぜひ注目したい。

「江戸時代初期くらいまでは、微妙にズレたまま伝わっている感じもあります(笑)。キリスト教の布教やヨーロッパとの貿易が始まったころ、そして直接的な交流が解禁された幕末には、異邦人を受け入れる日本側にも大きな衝撃があったということは、国内外の記録や書物からもうかがえます」

重要文化財『ジョン・セーリスの航海日記』
ジョン・セーリス著 1617年 ロンドンにて清書 東洋文庫蔵

貿易商船隊司令官のジョン・セーリスが、日本で貿易を行うためイギリスを出帆したのが1611年4月18日。国王ジェームズ1世の親書を携えての航海を綴った東洋文庫所蔵の本書は、「知識は力なり」の名言で知られる哲学者であり政治家のフランシス・ベーコンに献呈したと伝えられる清書本。大変貴重なものだ。

朝ドラ「ばけばけ」で注目の小泉八雲の直筆書簡も

本展は5つのテーマで構成されており、明治時代を中心とする最終章には、2025年度後期のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」のモデルのひとりとなった、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の直筆の手紙も展示される。

「ちょうど時勢にあっているので、より興味をもってご覧いただけると思います。ハーンと同じ時期に日本政府に雇われる形で滞在していた、イギリス人のバジル・ホール・チェンバレンという日本語研究者や、教育者である西田千太郎との間で頻繁に手紙のやり取りがあったようで、その一部が東洋文庫にあります。展示するのは、封筒と便せんをあわせて貼り付け、本のように綴じられたものです」 作家や文化人、芸術家の書簡はしばしば鑑賞の対象として展覧会にも出品される。内容だけでなく、直筆であれば筆跡や使用しているインク、紙なども鑑賞のポイントだ。ハーンの文字は…鑑賞者の目にどう写るだろう。

『ラフカディオ・ハーン書簡集』
1890~1896年 東洋文庫蔵

ギリシア出身の日本文学研究者・作家のラフカディオ・ハーン。一方のチェンバレンは、『古事記』を初めて外国語訳したイギリス人の日本語学研究者で、帝国大学(現・東京大学)初の外国人名誉教授。東洋文庫には、このふたりが交わした手紙を中心とした128通が保存されている。

日本の外から見たニッポン、異邦人にはどう映っていたのか?

「来日した異邦人が日本についてどういう印象を持ち、書き手となってどのように記述しているのか。例えば歴史的な出来事でも、日本側の記録と、その時に居合わせた外国人の記録は違うこともあるかもしれません。中国などほかの国から伝え聞いたニッポン。直接的な接触はあっても限られた一部の人の印象や、日本である程度の期間を過ごしたうえでの記録、そして明治時代に日本に定住した外国人が語ったニッポンも。外側からと内側からでは、異邦人の視点が異なることもわかります」

トップ画面に用いた画像は、明治中ごろから昭和初期にかけて、国内外で流通した「ちりめん本」とよばれる美しい書籍からのもの。木版による挿絵と活版による本文を和紙に印刷し、それを絞って縮れさせ、縮緬布のような柔らかくしっとりとした風合いと手触りにしたという、独特の製法と仕上りの美品だ。昔話などを翻訳した絵本で、日本から帰国する際の土産にしたり、異国の書店で販売されたりも。異国の物語とともに、緻密で美しいモノづくりをする国だということが海を渡って伝えられたことだろう。

『The Story of Nippon(日本昔噺)』のうち、「かちかち山」
林弘之著、松室八千三発行 1900(明治33)年刊 東洋文庫蔵

1885(明治18)年から外国語に翻訳した日本昔話のシリーズを刊行したのを皮切りに、物語、詩集、カレンダー、写真集など、さまざまな内容・言語で制作された。本書は、ちりめん本創始者の長谷川弘文社が出版したものが好評を博したため、それを真似て出版されたとみられるシリーズ。

リニューアルオープンに伴い、展示がより見やすく、2階展示室へのエレベーターが利用しやすくなった東洋文庫ミュージアム。ゆるやかに時系列を追って構成された展覧会「ニッポン再発見」へ、〝ニッポン〟を発見しに出かけてみては?

美術館データ

東洋文庫ミュージアム

「オープン記念展示 ニッポン再発見 ―異邦人のまなざし―


会場:東洋文庫ミュージアム(東京都文京区本駒込2-28-21)
会期:2026年1月21日(水)~5月17日(日)
会期中休館日:火曜日
開館時間:10時~17時(最終入館は16時30分)
入館料:一般1,000円、65歳以上900円、大学生800円、高校生700円、中学生以下無料


ホームページ https://toyo-bunko.or.jp/

X(旧Twitter)@toyobunko_m


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