拠点訪問

2024.02.15

三菱プレシジョン

神奈川県鎌倉市

シミュレーションシステム、パーキングシステム、宇宙機器、
鎌倉からものづくりを支える次世代7人

三菱電機、三菱重工業、三菱商事、三菱銀行(現・株式会社三菱UFJ銀行)と米国General Precision, Inc.の合弁によって1962年5月に設立された三菱プレシジョン。同年10月に開設された鎌倉工場は、現在は鎌倉事業所となり、三菱プレシジョン唯一の製造拠点となっている。鎌倉事業所は、三菱電機 鎌倉製作所と同じ敷地内に位置し、三菱プレシジョン全従業員約800人のうち約500人が所属。新人から60代のベテランまで幅広い世代が働いている。

三菱プレシジョンは、①パイロット・鉄道乗務員の養成や自動車教習などに使われるシミュレーションシステム、②さまざまな規模・用途に応じたパーキングシステム、③慣性センサ技術や電波センサ技術などを軸とする航空・宇宙機器の3つの事業を柱として成長してきた。そのものづくりを半世紀以上にわたって支えてきた場所が、この鎌倉事業所。ここで次世代を担う若手7人を訪ねた。

シミュレータはそれぞれの用途に合わせてカスタマイズ

三菱プレシジョンのシミュレータ技術には、主に自動車運転シミュレータ、鉄道シミュレータ、航空機シミュレータがある。東来 みなさんは鉄道シミュレータを担当。乗務員の養成や鉄道車両の研究開発のために使用するシミュレータを製造するため、鉄道各社に納品している本物の車両部品を手配。発注先の選定や価格交渉を行う。入社1年目からこの業務に携わって3年目だ。

「昨今の部材費高騰や長納期問題に今なお影響を受けています。良質なものを適正価格で仕入れ、社内の必要な時期にきちんと納品できるよう、いつも見積書とにらめっこ。対社外に立つ人間としての自覚を持ち、お取引先様との交渉時には言葉選びや表情などにも気を使っています」(東来さん)

加藤 寛登さんは自動車や二輪車シミュレータを担当。依頼主の要望を満たすための搭載機能の検証や教材内容の検討を重ね、教育効果の高いシミュレータを製造するための上流設計を行う。

「例えば、自動車教習所と運転免許センターに置く違反者講習向けのシミュレータでは用途が少し違います。教習所の場合は初心者が分かりやすいようにリアル感を重視し、画面を正面のほかに左右にも付けるといった工夫をしています。一方、違反者向けは限られた時間内でたくさんの方に学んでもらえるよう、1部屋に多数のシミュレータを設置するため、1画面のコンパクトなタイプをご希望されるケースが多い。要求分析をしてそれぞれのニーズを製品に落とし込んでいます」(加藤さん)

風通しのよさが鎌倉事業所の自慢。分からないことがあれば先輩たちにどんどん質問。必要があれば他の課の先輩にも相談してプロジェクトを進める。「誰に聞いても親切に教えてくれます」と加藤さん。

日々進化する防衛シミュレータとパーキングシステム

福﨑 貴斗さんは、防衛シミュレータのシステム設計、ソフトウェア試作を担う。設計書の作成から試験準備、シミュレータの試験をするためのソフトウェアである試験用治具の改修、スケジュール管理をすべて行う。

「防衛シミュレータは、フライトシミュレータのほかにも、レーダーや磁気センサ、水中音響を使ったソナーなどのシミュレータも必要になります。幅広い分野の先端技術に触れられることがやりがいにつながっています」(福﨑さん)

佐藤 晴香さんは、空港や大型商業施設など大規模駐車場の駐車場機器の機構設計を担当。カタログに載っている標準品の開発だけでなく、設置する企業の要望に沿って電子決済端末やポイントカードの読み込み端末、インターホンなどの機能を搭載した精算機や駐車券リーダの設計を行う。

「出口精算機では、車上から駐車券やお金を利用者様が取り扱います。後続車がいる場合は心理的な焦りもあるため、投入場所や手順を間違えたり等さまざまなシーンで渋滞トラブルとなるケースを現場でも経験しました。実際に見て、感じた経験を改良設計や次の製品開発にフィードバックすることが大切です。担当した機種が自分の知っている場所で使用されていたり、家族から『この間行ったところで使われてたよ』と報告を受けたりするとうれしいですね」(佐藤さん)

正確で緻密な業務の連続⋯⋯癒やしは社内のスポーツサークル

人工衛星の傾きや姿勢を感知して制御する姿勢制御装置のはんだ付けや組立、接着作業を担当するのは、藤澤 琴音さん。クリーンルームの中で顕微鏡を覗きながら作業を行う。高度な緻密さが要求される作業。はんだの量や色具合、ツヤなどにうまい・下手が表れるという。4年目の藤澤さんはよりクオリティの高い仕上がりを目指し、日々業務に励む。

「宇宙に打ち上げてしまうと修理には行けないので、不具合が起きないよう厳格な規格を守り、幾度も行われる検査を経て完成します。もともと細かい作業は好きですが、電子部品は静電気やホコリによって不具合を起こすことがあるので、取り扱いには非常に気を使いますね。求められている品質以上に高品質の製品を作りたい」(藤澤さん)

塚田 純平さんは、ミサイルやヘリコプター、自動車に搭載される慣性航法装置のソフトウェア設計、開発を担当。入社1年目からこの部署に配属され、勉強に勉強を重ねてプログラミング言語を身につけた。

「防衛系のソフトウェアは数十年と長い期間使われます。僕は入社してまだ2年目。僕が入社する前に納めた製品のアップデートをする場合、当時使われていた言語を新たに勉強しなければなりません。たくさんの知らない言語を扱うため苦労は多いですが、徐々に自分の技量が上がってきていることがわかる。それがモチベーションとなっています」(塚田さん)

そんな塚田さんの憩いの時間となっているのが、バレーボール。社内にサークルがあり、敷地内にある体育館で週1回ほどのペースで楽しんでいるという。

「バレーボールのほかにもバドミントン、テニスのサークルがあって、スポーツ好きな先輩が多い会社で驚いた」と語るのは、2023年に入社した髙木 優佑さんだ。髙木さんは、宇宙機器、特に藤澤さんをはじめとする精密機器組立課が組み立てている姿勢制御装置の試験やそれに付随する宇宙環境を模した試験などを行う。大学・大学院時代は宇宙工学を学んだ。

「宇宙機器の開発には、開発から実際に搭載するまで各段階でさまざまな試験があります。内容が濃いので覚えることがたくさん。学生時代に研究していたこととも少し違う分野なので日々勉強。分からない言葉や専門用語に難しさを感じる一方、面白さも感じます。2023年9月に月面着陸機と天文衛星を搭載したH-IIAロケット47号機が打ち上げられましたが、その中には当社製品も多く搭載されています。自分が携わった製品が宇宙で活躍するとやはりうれしいですね」(髙木さん)

7人の清々しい笑顔には、日本のものづくりをリードする誇りと頼もしさが宿っている。

東来 みな
MINA TORAI
資材部 シミュレーションシステム調達課

加藤 寛登
HIROTO KATO
シミュレーションシステム統括部
シミュレーションシステム部 自動車システム課

福﨑 貴斗
TAKATO FUKUZAKI
シミュレーションシステム統括部
防衛シミュレーションシステム部 防衛システム課

佐藤 晴香
HARUKA SATO
駐車場システム統括部
駐車場システム技術部 技術課

藤澤 琴音
KOTONE FUJISAWA
製造部 精密機器組立課

塚田 純平
JUNPEI TSUKADA
防衛・宇宙統括部 電子精密機器部 アビオニクス技術課

髙木 優佑
YUSUKE TAKAGI
防衛・宇宙統括部
宇宙機器部 品質管理課

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