拠点訪問

2024.04.18

三菱自動車工業

北海道・十勝地方

東京ドーム200個分!ってどんだけ広いの!?
三菱自動車 十勝研究所のテストコースがすごい

とにかく広い!帯広市の北側、音更町にある三菱自動車 十勝研究所。約1,000ヘクタール、東京ドーム200個以上という広大な敷地を持つ。‘80年代後半、自動車の高速化に対応する大型テストコースを作るため、建設計画がスタート。1996年に設立した。中心となる高速周回路は1周約10km!最大角度45度のバンクがあり、最高速度250㎞に対応する。そのほか試験内容に合わせて11ものコースがある。

ワインディングコースでは舗装良路、舗装悪路、砂利路など路面違いがあり、冬季の実験用坂路、曲線、氷上などにも対応。人工的に吹雪を再現したり、ロシアなど極寒地域を想定した試験のため自動車ごと冷やす冷凍コンテナも装備。かつてお客さま向けに設けたオフロードコースを2022年改修し、キャンバー(横に傾く)、ロック(岩場)、モーグル(凹凸)など、海外市場に向けた過酷な試験を実施するためのコースもある。

各地にある三菱自動車の拠点から、夏季で月延べ200人、冬季400人もの出張者が訪れるこの十勝研究所。常時駐在しているのは、システム実験部、車両実験部、性能計画実験部の3部門と、インフラの管理部門、保安業務などを行う委託企業の総勢46人と少数精鋭。今回はそのなかでも選りすぐりのメンバー6人に登場いただいた。偶然にも6人全員北海道出身だ。

変化が激しい自然と市場、それを先読みする難しさ

システム実験部 十勝管理の奥山 光さんは、法令に関係した点検や日常業務における自主点検、設備の修繕など維持管理を担当する。

「十勝研究所からは日高山脈が一望でき、四季だけでなく1日のうちでも朝と夕、刻一刻と風景が変わって美しい。通勤で毎日同じ道を23年間、通っていますが、新緑が枯れて雪が降って樹氷になって⋯⋯と飽きることがありません」と十勝の美しさを語る。だが、四季折々変化が激しい点は業務においては難しさもあるようで⋯⋯。

「外壁や屋根の修繕などは5月から11月までの雪の降らない時期にしかできず、計画的に進めていくことが求められます」(奥山さん)

同じ部署の松川 公章さんは、十勝研究所全体の維持管理計画と、新しいコースの要望を受けた際に予算と実行計画を組んでいく業務の主任を務める。松川さんも、自然とうまく付き合う点では苦労をしている様子。

「夏の試験を冬に行いたいというニーズもあれば、冬に雪が降ってほしいのに降ってくれない場合もあります。自然頼みの試験が数多い。今年から移動式の人工降雪装置を導入し対策しています」(松川さん)

自然だけではなく、世の中の流れの速さに対応するという点でも日々工夫の連続だ。

「自動車の開発には一定の期間を必要とするため、お客様ニーズの先読みが必要です。私たち十勝管理としては、更に先手を打った開発環境や設備を準備しておかなければならないため、対応時間は非常に短くなってきています。(松川さん)

先進技術に対応する期待の若手が成長中

性能計画実験部の増井 朋行さんは、十勝ADAS実験チームのマネージメントを担当。ADAS(エーダス=Advanced Driver-Assistance Systems)とは、先進運転支援システムのこと。そのうち、FCM(Forward Collision Mitigation system)と呼ばれる衝突被害軽減ブレーキシステムの試験を担当するチームをまとめる。メンバーは愛知県岡崎市にある技術センターも含めると約50人。そのうち、この十勝研究所のメンバーは増井さんを入れて11人。ADAS実験では広いテストコースが必要な項目が多く、十勝研究所でしかできない。

「試験車に先進の計測機器を搭載し、あらかじめ決められたシナリオにそってロボットで車両を動かし評価します。各国の安全性能評価機関が設定する評価基準を理解し、機材を取り扱い、製品を発売する数年後の法規や規格に合わせて評価できる人材育成が今の課題です」(増井さん)

増井さんは2003年にキャリア採用で入社。その前も、自動車メーカーなどでエンジンの耐久信頼性実験、光通信部品の信頼性評価などを行っていた。

「日本の自動車開発は世界的に見てトップクラス。我々の三菱自動車もひけをとらない技術を持っていますし、さまざまな実験においてしっかりした評価基準も持っています。それをどう運用していくかはマネジメントの力量にかかっている」(増井さん)

そんな増井さんの期待を背負う部下が永田 哲也さん。2018年に入社して岡崎の技術センターに勤務していたが、もともと北海道北広島市の出身で、北海道の気候が合うことから、十勝研究所の募集に手を挙げて2022年に異動。工学系出身だが学生時代に英語の勉強を熱心に取り組んだため、異動2年目でマレーシアに新設される認証機関のテストコースの視察として海外出張のチャンスをつかんだ。

「学生時代に海外をどうしても知りたい時期があり、英語を勉強しました。仕事で使う技術や基準などについてはもちろん、趣味の自転車のこともなるべく海外の情報を調べて日常的に英語を使っています」(永田さん)

永田さんは十勝研究所のなかでも最も若手。

「何百人も在籍する岡崎の技術センターに比べて規模は小さいけれども、岡崎に負けない高いモチベーションを持って一丸となって開発に取り組んでいます。アットホームな雰囲気で社員同士の距離が近いところもいいところ。食堂のご飯もおいしい」(永田さん)

開発においてなくてはならない存在に

車両実験部の塩田 大介さんは、新型車両の劣化品質評価や耐久性確認を行う。実車を使って繰り返しドアを開け閉めするなど、ユーザーが長期間使用する状況を再現して設備に負荷をかけ、劣化状態を評価する。試験は数ヵ月以上の長い期間が必要となる。

塩田さんの部署の主任を務めるのが黒田 勇一さん。2人とも「お客さまがどういうところが気になるか、開発者目線ではなくお客さまと同じ目線で評価することが大切」と声を揃える。そのために日々、市場から上がってくるお客さまのご意見、ご要望を収集している。

「この広い十勝研究所でしかできない試験が数多くあり、ここでの評価を新たな車の開発に生かしていけることがやりがいになっています。今後、部署としても新たな試験に取り組んでいけるようにしていきたい」(塩田さん)

十勝研究所設立と同時に岡崎の技術センターから異動してきて28年間、勤務している黒田さんも、十勝研究所へのさらなる期待感を強める。

「開発において十勝研究所の重要性はどんどん増してきているように思います。今後もさまざまな設備ができ、ますます発展していくと思っています」(黒田さん)

恵まれた自然環境、広大な敷地、そして志を共有し合える仲間たち。この十勝研究所での試験があってこそ、お客様の冒険心を呼び覚まし、乗る人すべてがワクワクするような三菱自動車らしい安全・安心で快適な三菱車が生まれます。

奥山 光
HIKARU OKUYAMA
第一車両技術開発本部 システム実験部 十勝管理
※所属部署は取材当時のものです

松川 公章
KIMIAKI MATSUKAWA
第一車両技術開発本部 システム実験部 十勝管理

増井 朋行
TOMOYUKI MASUI
第一車両技術開発本部 性能計画実験部 ADAS性能計画実験

永田 哲也
TETSUYA NAGATA
第一車両技術開発本部 性能計画実験部 ADAS性能計画実験

塩田 大介
DAISUKE SHIOTA
第一車両技術開発本部 車両実験部 経時劣化耐久性開発実験

黒田 勇一
YUICHI KURODA
第一車両技術開発本部 車両実験部 経時劣化耐久性開発実験

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