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「開かれた」学問の殿堂の歩みと魅力を読み解く一冊
-東洋文庫、創立100周年を記念し書籍を刊行-
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東洋文庫は1924年、三菱第三代社長・岩崎久彌によって創設されました。研究のために収集されてきた蔵書は今日では100万冊超を数えます。2011年には貴重な蔵書類を展示するミュージアムをオープン。敷地内に同じく岩崎久彌が経営に関わった小岩井農場直営のレストラン「オリエント・カフェ」も併設され、どなたでも気軽に訪れ、東洋の歴史や文化に触れることができる「開かれた場」となっています。
100周年を迎えた東洋文庫は、「来し方、行く末」を見据えるマイルストーンとして『東洋文庫百年史』を関係者向けに制作。『東洋文庫の100年』は、それを一般読者にもわかりやすく再編集したダイジェスト版です。研究者や専門家のみならず、歴史、文学、美術、旅行といった分野に関心のあるすべての方に、東洋文庫の軌跡と魅力を伝えています。
設立のきっかけとなった「モリソン文庫」の購入から、数々の蔵書・所蔵品が集められた歴史はもちろん、2011年の本館全面建て替えの経緯や、研究者・専門家向けだった「閉じられた」施設にミュージアムがオープンした背景など、100年の歩みがまとめられています。
![]() ミュージアムの一角を飾ると同時に貴重な書庫でもある「モリソン文庫」
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さらに、東洋文庫の研究活動に特に大きく貢献した16人の紹介や、二大コレクション「モリソン文庫」「岩崎文庫」をはじめとする貴重なコレクションの紹介、そして斯波義信文庫長(2017年、文化勲章)を囲んでの、東洋文庫のこれからの100年を考える座談会なども収録。また、研究員やミュージアム諮問委員、外国人研究家などによるコラム「東洋文庫、私の一冊」「私と東洋文庫」なども加えられました。
100年にわたり、東洋文庫は日本から東洋、そして西洋を見つめてきました。その英知をわかりやすくまとめた本書を読むことで、今後の日本とアジアとの関係、日本を含めた東洋と西洋との関係を見通すヒントが得られます。章立てされた読みやすい構成により、気になるところから読み始めることもできます。
![]() 中庭「シーボルト・ガルテン」から東洋文庫本館を臨む
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装丁にはソフトカバーを採用し、軽くて手に馴染む紙質を選ぶなど、「本」へのこだわりも随所に表れています。編者の牧野元紀さん(東洋文庫文庫長特別補佐)はあとがきの中で、本書が「デジタル版のみの刊行との話であったならば、きっぱりとお断りしたことだろう」と述べており、デジタル化全盛の時代に、東洋文庫が紙の本を発行することへの強い熱意と矜持が感じられます。
牧野さんは取材に対し、「『百聞は一見に如かず』と申します。本書の副題、『開かれた世界屈指の学問の殿堂』とありますように、東洋文庫はいまや誰にでも開かれた施設です。ぜひ気軽にお運びいただけたら幸いです。2026年1月、ミュージアムがリニューアルオープンします。文庫員一同、皆さまのお越しをお待ちしております」とコメントを寄せています。
※写真は東洋文庫提供。
書籍概要
「東洋文庫の100年 開かれた世界屈指の学問の殿堂」
牧野元紀 編著・公益財団法人 東洋文庫 監修
※2025年5月26日掲載。本記事に記載の情報は掲載当時のものです。