一口に「三菱倉庫」といっても、その業務内容をどれくらいの人が知っているだろうか。三菱倉庫は、業務は大きく分けて「物流事業」と「不動産事業」の二つがある。物流事業は「倉庫事業」「国際輸送事業」「港湾運送事業」を展開し、「不動産事業」ではおもに賃貸オフィスビルや商業施設の運営を行っている。
祖業である倉庫事業では全国の主要港の周辺などに倉庫や土地を有しており、さまざまな貨物の保管・運送などの物流業務を担っている。意識して見てみるとその存在感の大きさに気がつく。日頃、倉庫業界について触れる機会は少ないかもしれないが、三菱倉庫は業界大手企業の1社である。
そんな三菱倉庫のなかでも神戸支店は主力拠点の一つ。神戸港を一望できるオープンモール型商業施設「神戸ハーバーランドumie」をはじめ、神戸市内に倉庫や拠点を多数有している。
今回取材した三菱倉庫神戸支店港運事業チームは神戸港ターミナルの一角に事務所を構える。社名から「貨物を保管する倉庫会社」というイメージを持つ人が多いかもしれないが、彼らが担っているのは港を舞台に物流を支える港湾運送事業だ。その業務は、想像以上に奥深い。
たとえば、素人の目から見ればコンテナの扱いは簡単そうに見えるかもしれない。しかし実際には複雑で細かな手順がある。海外からコンテナ情報を事前に得て、どんな順番で船から下ろすのか。あるいは、国内からさまざまな荷物をどう集め、船に乗せるのか。万が一間違ったコンテナに荷物を積むようなことがあれば、一大事になってしまう。
コンテナの積み下ろしについても、担当者が事務所のオフィスでPCなどの複数の画面に加え、実際に作業するガントリークレーンなどの様子を窓から見ながら、無線を使ってコンテナヤード全体のさまざまなオペレーションについて指示を出す。現場では当然トラブルもあり、いかに迅速に対処するかが勝負になる。管制塔の管制官のように的確に指示を出していく様子は、見ているだけでも緊張感が伝わってくる。
神戸港は長年、大いに栄え、まさに日本の港ブランドの一つだった。阪神・淡路大震災の影響で落ち込んだ時期もあったが、多くの人々の努力によって、かつてのブランド力と勢いを蘇らせつつある。
日本の物流を支えている三菱倉庫神戸支店港運事業チーム。港を舞台に海や世界をつなぐ現場でどんな人達が働いているのか。これから紹介していこう。
海の安全を守り、利用する人々の
安心を支えているという責任と誇り
三菱倉庫神戸支店港運事業チームの久保 裕一郎さんは、コンテナヤード内にある上屋(貨物の一時保管・作業をする建物)で、貨物の輸出および保管をおもな業務としている。通常コンテナターミナルにはコンテナに貨物が詰められた状態で搬入されるが、このチームでは、コンテナに詰める作業も行っている。ほかの上屋では作業をすることができないような大きな貨物なども扱い、作業スケジュールの調整や書類作成、作業員への指示などに携わっている。
「多くのお客さまからの輸出の指示をまとめ、円滑に仕事が回るようにスケジュールを組み、現場作業員が仕事をしやすいように書類を作成したり指示したり、物流を止めないように調整するのが自分の役割だと考えています」
実際、もし間違って別の船に貨物を積めば一大事となる。日本国内向け出荷の誤積みでも問題だが、海外への輸出となるとなおさら大きな問題となってしまう。そのため、確認作業はPCだけでなく、紙で何度もチェックするように心がけている。そんな久保さんにとっての仕事のやり甲斐とは何か。
「輸出するコンテナを取り扱う仕事では、船の出航日が決まっています。上屋に荷物が入ってからコンテナに詰めるまで、日程がギリギリになることもあり、そんなときほど処理をしなければならない仕事も多くなります。現場と綿密にコミュニケーションを取りながら、大量の仕事をやり切ったときはやり甲斐を感じますね」
久保さんにも誤積みのミスをしそうになった経験がある。そのときはほかの担当者がチェックをしてくれていたおかげで、コンテナを船に乗せる前に気がつき、現場の協力も得て防ぐことができた。チームのありがたみを感じたという。
もともと商船系の学校の出身。岸壁から船舶の外側のことを学び、内側の世界も知るなかで、今の仕事を選んだ。将来どんなキャリアを積んでいきたいと考えているのだろうか。
「入社後は倉庫の仕事を経て、現在はターミナルの仕事に就いています。まずはこの仕事をきちんとマスターしたいと思っています。当社は日本の物流を支える会社。ひとくくりに倉庫といっても、いろいろな倉庫がありますし、転勤もあります。さまざまな場所でいろいろな知識や経験を吸収して、がんばっていきたいと思っています」
佐々木 麻也子さんは埠頭管理や施設管理などターミナル内の保安計画・運営・維持ほか、ターミナルに着岸する本船の輸入貨物に関連する書類確認や各種手続きなどの業務に携わっている。
「輸入貨物の保全状況や、通関手続きが正しくできているのか。税関から依頼があれば調査をしたり、蔵置期間(輸入貨物を港で保管しておける期間)が守られているかを確認したりしています。保税(輸出入手続き前の貨物を税関管理下に置く制度)事故があると重大な事態に発展しかねないので、十分に注意して業務に当たっています」
港は海外との窓口であり、まさに「水際」。テロや密輸、密航を想定した管理が必要になる。そのため、入退場者の管理は必要不可欠になる。
「この仕事にはこんな意味があるとか、どこを厳守しないと大きな問題が起こるのかといったことを、埠頭保安管理者の資格をとって施設管理の業務をするようになり、意識をするようになりました。万一のことはめったに起こりませんが、日々の積み重ねを大切にして頑張っています」
仕事のやり甲斐は、まさにこの積み重ねで経験を重ねていくことであり、何も問題が起こらない日常こそが、神戸港を守っているというやり甲斐につながっているという。
「コロナ禍のときも業務は止まらないため、スタッフが減少するなかで責任者として現場に出続けました。そのときは日本の物流を支えているという自負を感じましたね(笑)」
入社してみて、すごくいい会社だということを感じたという佐々木さん。神戸で生まれ育ち、結婚や出産も経て、ずっとこの仕事一筋でやってきた。
「常に海の安全を守っている、ターミナルを利用する人々の安心を支えているという責任と誇りを持って、これからもこの仕事に取り組んでいきたいと思っています」。
今は現場の仕事が楽しくてならない
これからも多くの仕事にチャレンジしていきたい
川井京 美咲さんは船社代理店を担当し、輸出入に係る書類作成など船社の代行業務を行っている。海に関わる仕事はずっとやってみたいと思っていたのだという。
「今の仕事は、陸にいながら海や世界を相手に仕事ができるところが魅力的だと感じています。しかも日本の物流に欠かせない仕事に少しでも携われるということも誇りに思っています」
川井京さんの仕事は、輸出入に係る書類作成から送付、入金などをおもな業務としている。今の仕事に就いて1年弱。書類の数が多く、慣れるまで苦戦した。お客さまから書類が送られ、確認をしてから提出までの期限が限られているものもあり、効率よく確認し作業する必要がある。
「だからこそ、トラブルなく一日を終えたときはとても充実感を感じますね。就職活動のときに、仕事のやり甲斐って何ですかと面接官に聞いたことがあるのですが、社会人になった今、これがやり甲斐かなって実感しています」
以前はコンテナの整備や在庫管理を行い、その効率的な運用を図るインベントリーの仕事をしていた。そこで船社とともにスムーズに書類の運用ができるよう、現場との調整を行ったことがある。その運用方法が今も活用されていることも社会で積んだやり甲斐の一つだ。これからも仕事のやり甲斐をどんどん積み重ねていきたいという。
宇津木 健太さんは、オペレーションチームでプランナーの仕事を担当している。プランナーとは、コンテナ船に輸出用コンテナの積み付けプランを作成する仕事だ。船が着岸するまでに積み付けプランを作成しなければならず、実際に船が着岸した際には船上に行ったり、荷役の進行を見守ったりする。宇津木さんが日常の仕事で気をつけていることとは何か。
「安全第一で行わなければならないので、作業にかかわるすべての人に直接質問することを大事にしています。また実際に現場に行って確認をすることも欠かせません。そのためにもチーム全体で注意・確認することを大切にしています」
コントロールセンターの仕事は無線を使って多くの人と会話をするため、仕事をするときは常にハキハキと指示を出し、受け答えしなければならない。
「この仕事は、まず業務を細かく知らないとできない仕事ですし、目に見えないところも意識して何が起きているのかを想像しながらコントロールをしなければならないので、難しいです。とくに死角になっているところは無線のやり取りを聞いて、どこで作業が止まっているのか、何が分かっていないのか。無線を聞いた人がすべて把握しなければなりません」
集中力が必要で、とても疲れる仕事だ。キャリアを積まなければできない仕事で、今は見習いとして勉強中だ。
「見習いの立場でも、現場での経験が長い方に対して自分は経験が浅いからでは済まされません。船の荷役時の進行は自分のプランに大きく左右されるので、皆さんがやりやすく、分かりやすいプランを作成しなければなりません。荷役がうまく進んだときはやり甲斐を感じますね」
今は現場で仕事をすることが楽しくてならない。これからもいろいろなことを勉強しながら、多くの仕事にチャレンジしていきたいという。
久保 裕一郎
YUICHIRO KUBO
港運事業チーム
佐々木 麻也子
MAYAKO SASAKI
港運事業チーム
川井京 美咲
MISA KAWAIKYOU
港運事業チーム
宇津木 健太
KENTA UTSUGI
港運事業チーム