総合食品卸である三菱食品の九州支社は、福岡空港から地下鉄で一駅目の東比恵(ひがしひえ)駅を降りた県道112号線(福岡日田線)沿いにある。博多駅の筑紫口から車で行っても約10分程度。九州支社の玄関に到着し待っていると、1階の打ち合わせブースでは頻繁に商談や会議が行われ、ひっきりなしに宅配便がやってくるなど忙しそうな雰囲気だ。
福岡は今、勢いのある人気の街だ。繁華街である天神では大規模な再開発が行われており、博多駅周辺にもいつの間にかビジネスホテルがたくさんできている。街の様子を見ていると、景気がよくて元気な街だと実感する。
三菱食品九州支社は、沖縄事務所を含めて九州全域を担当している。なかでも福岡は九州で最大の都市であり、安くていい品を買う文化が根づいており、全国有数のディスカウントストア・スーパーの激戦区でもある。多くの企業が競うことから、商品価格も安価になる傾向にあり、駐車場の広い大型店舗も多い。天神では狭い地域に大手百貨店や専門店が集中して競い合っていることも合わせると、まさに福岡は「小売王国」といえる。
九州支社事務所には本社管轄組織の人員を含めて総勢約200名が在籍。社員達は食品流通にまつわるさまざまな仕事に従事している。企画提案から現地に赴いて現場と伴走したり、新規事業開発に携わったりと活気のある職場だ。総合食品卸であるだけに常に担当の得意先のためになることを考える、お客さま志向が身についている。
食品は私達にとって必要不可欠なものであり、流通が止まってしまえば、即座に大きな影響をこうむることになる。その意味で、三菱食品九州支社は日本の食のインフラを支えているといえるだろう。では、社員の皆さんは、どんな仕事をしているのだろうか。
多くの得意先があるなか、同じ得意先をさまざまな分野から担当する5名に話を聞いた。
私達が生活するうえで
絶対に欠かせないものを扱っています
デリカ本部営業第四グループCユニットに所属する佐々 花帆さんが担当する得意先は小売業2社。そのうちの1社ではデリカ全般の主幹担当として先方が求める商品をメーカーと協力して提案をしており、もう1社では米飯・オードブルを担当し、全国で販売するメニューのやり取りを先方と行っている。
「私はまだ入社3年目、得意先は企業規模の大きさもあり、先方が求めている知識と私の知識にギャップを感じることもあります。また、社内の仕組みにも詳しくないといけませんし、関連部署への情報発信もしないといけない。とにかく多くの人とコミュニケーションをとっています」
そんな佐々さんが、仕事上で気をつけていることは何だろうか。
「何事も先方が理解しやすいように、情報を分かりやすく伝えることです。それがコミュニケーションをとるうえで、いちばん大切にしているところですね」
佐々さんは大学時代に栄養士資格を取得しており、もともと食品業界に関心があった。
「私達が生活するうえで絶対に欠かせないものを扱っていますし、担当するデリカは扱う商材が多いため知識を増やしてもまだまだ足りない。その奥深さがとても面白いですね」
デリカはメーカーの商品をそのまま扱うのではなく、複数のメーカーの商品を組み合わせて売ることが特徴的だ。そのため、提案して売れる商品を作らなければならず、その組み合わせも無限にある。そこに面白味を感じるという佐々さんのやり甲斐とは何だろうか。
「全国で商品が動くため、自分でも想像していなかった規模の数量を扱うことがあります。そんなときは、若手であっても仕事のスケールの大きさを実感できるうれしさもありますが、怖さもあります(笑)。また、私達が扱うメーカーの商品が得意先に新たに選ばれたときにも、やり甲斐を感じますね」
営業第二グループAユニットの野田 昌史さんは小売チェーン向けフローズンの全国窓口としてバイヤー業務のフォローと店舗管理に携わっている。また、九州支社だけでなく本社メンバーも参画し、得意先との共通課題を解決する特命プロジェクトのメンバーとしても活動している。
「チームとして多岐にわたる仕事を行っており、私はカテゴリーマネジメントの全体管理を担当しています。たとえば、ID-POSを使って『誰が・いつ・何を・いくつ買ったか』までを把握し、仮説を立てて検証を行い、成功事例を横展開することでカテゴリー全体を成長させることを目指しています」
野田さんはこれまで九州支社一筋で、多くの得意先担当を経験している。かつての得意先のバイヤーが経営層になっており、人と人との関わりをとくに重要視する九州の商売で役に立っている。だからこそ、コミュニケーションを大切にすることが仕事上でも重要になるという。そんな野田さんがやり甲斐を感じるのはどんなときか。
「今は担当エリアが全国に広がっているため、全国のエリア特性を把握した提案を実施しています。顧客理解を通じて売上利益拡大につながり、得意先に評価されたときは何よりもやり甲斐を感じます」
現場を知ってデータを
使いこなせる人材になりたい
営業第二グループBユニットの山野井 爽さんは、小売チェーン向けにフローズンカテゴリーを担当している。得意先に入り込みながら、データから読み解いた仮説を組み立て検証する過程がとても楽しいと語る。
「ID-POSデータを活用し、売場の変更や新商品の導入が購買活動にどのような影響を与えたのかを可視化できる点が面白いですね。分析結果が実際の売場改革や意思決定に生かされ、現場の成果として返ってくる瞬間に大きな達成感を感じます」
一方、山野井さんが自身の成長を実感するのはどんなときか。
「天候や商圏特性、競合の動きなど外部要因の影響も大きく、想定通りの結果が出ないこともしばしばです。結果を見て終わりではなく、なぜそうなったのかをデータで分析し、次の施策に生かしていく過程が成長につながっていると思います」
山野井さんの実家は築地のマグロ仲卸で、もともと食品卸売業に興味があったのだという。産地から仕入れ、広くお客さまに届ける卸の意義について、父親から何度も聞かされてきた。
「大切にしているのは、営業として得意先の売場を改善し、成果につなげることです。そのための手段としてAIと対話しながら仮説を立て検証を行っています。将来的には、営業で培った知識を土台に、マーケティングとデジタルを融合させ、現場を理解したうえでデータを使いこなせる人材になりたいですね」
営業第二グループAユニットの口田 裕一さんは、ユニットリーダーとしてユニット管理や得意先の現場の総合窓口も担当している。そのほか、得意先に入り込んで、新たな店舗フォーマットのモデルづくりや生成AIの現場活用の取り組みも担う。
「今年で九州支社は9年目になります。以前は現在野田さんや山野井さんが携わっている業務を担当していました。昨年から担当得意先に特化したユニットを組成し、今はリーダーを担当しています。担当している得意先とは深い取り組みができているため、先方の方針を理解し、先方の設定するプログラムをこなしながら、ミッションを遂行し、そこで得た知見や経験を当社へ持ち帰り、財産にすることを目指しています」
仕事を進めていくうえで、口田さんが最大のポイントとして考えていることは何か。
「卸売業として食品流通の川上・川下の間に位置すること、またリーダーとして会社と課員の間に位置することをふまえ、相手が何を言いたいのかを正確に捉え、それを相手にどれだけ分かりやすく伝えるか。自分が伝えるべきことについてはすぐに反応するのではなく、考えてから答えるようにしています」
口田さんは、食品卸のように日々、広範囲にモノを届ける仕事は世の中になかなかないだろうという。一日止まれば多大な影響もある。日々受注・発注が行われる仕事は時間との勝負であり、一日中神経が休まらないときもある。まさに日本の食品インフラを支えている仕事だが、口田さんにとってのやり甲斐とは何だろう。
「小さい実験を積み重ねて修正し、よりよい方法を探究していく。常に変化を感じ取らなければいけないことは試練でもありますが、それを捉えながら成果を得られたときにはやり甲斐を感じます。とくに得意先から高評価をいただいたときは何よりもうれしいですね」。
マーケティング開発本部リテールサポートグループ九州ユニットの臼井 健司さんは、九州エリアの得意先に対する提案業務を中心に行う。課題解決に向け、販売実績や市場データなどを分析し、企画立案や改善提案を行うのが業務の中心だ。
「現在標榜しているDD(データ・デジタル)マーケティングの深耕に向け、リテールメディア施策を通じて、得意先の課題を解決することをミッションとして動いています。サイネージやクーポンといった施策効果を検証し、未購入者の購買行動にどう寄与したのか。従来のチラシなどの紙媒体と比較してどのような効果があったのか、分析や提案を行っています」
これまで臼井さんはマーケティング分野を中心に社内外でさまざまな経験を積んできたキャリアを持つ。だからこそ、臼井さんはフロントで活躍する営業のセーフティーネットのような存在でありたいと考えている。
「これまで自分でつらかったと思った体験の方が、振り返ってみればいい経験になったと感じています。」
得意先の課題解決という点では、昨年はさまざまなカテゴリーで食品の値上げが相次いだため、それに関する問い合わせや対応が多かった。直近では、来年度実施予定の消費減税に向けた対応をどのように進めるべきか、という声が多いという。
「これからもリテールサポートを通して得意先の課題解決に力を尽くしていきたいと考えています。提案の結果が得意先の売場や施策に反映されたことを実感できるときがいちばんのやり甲斐です。今後さらに人口減少が続くなかで、三菱食品としても、卸事業に代わる新たな収益源を見つけるべく取り組んでいます。そのためにも、現在携わっているDDマーケティングをしっかり確立していきたいと思っています」
佐々 花帆
KAHO SASA
デリカ本部
営業第四グループ
Cユニット
野田 昌史
MASAFUMI NODA
九州支社
営業第二グループ
Aユニット
山野井 爽
SO YAMANOI
九州支社
営業第二グループ
Bユニット
口田 裕一
YUICHI KUCHIDA
九州支社
営業第二グループ
Aユニット
臼井 健司
KENJI USUI
マーケティング開発本部
リテールサポートグループ
九州ユニット