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2024.01.18

三菱総合研究所

Mitsubishi Research Institute, Inc.

三菱総合研究所がアスリートの現役~引退後のキャリア自律サポート! 「アスリートFLAP支援事業」開始

三菱総合研究所(MRI)は、現役アスリートと引退した元アスリートのキャリア自律をサポートする事業「アスリートFLAP支援(AFS)事業」を2023年3月から開始した。なぜ、MRIがアスリートの支援事業に取り組むのか。

きっかけは、東京オリンピック・パラリンピック開催が決まった翌年の2014年にさかのぼる。この年、MRIは『レガシー共創協議会』を設立した。「スポーツ全般大好き」という人材・キャリア事業本部にてAFS事業を推進する木村 健人さんは、日本のアスリートは、世界大会に出場する一流プレイヤーでさえ、引退後には自分の能力を活かせる職が見つからず苦労しているという話を聞き、長年、問題意識を感じていた。

「レガシー共創協議会は、東京オリパラを一過性のイベントに終わらせず、競技場の利活用といったレガシーをつくろうと、産官学で200近くの組織が集まって取り組みました。その際、ハード面のレガシーだけでなく、オリンピアンがその後も輝く人生を歩める「ソフト面のレガシー」が、次世代のアスリートを育てるためにも重要ではないかと提言しました。当社の調査では、今は人手不足と言われている分野でロボット化やAI導入が進むとこれまで定型的なタスクを担っていた人材が余り、一方でロボットやAIを駆使して技術革新をリードする人材が足りなくなるという職業の需給のミスマッチが、近い将来200万人規模で生まれると予測しています。変化する非ルーティンのタスクに分析的にアプローチできる人材を今後どう増やしていくか。現在、企業で正社員として働いていない方は日本に約700万人います。その中には、一般的な会社員のキャリアとは異なるユニーク人材が含まれています。その象徴的な例がアスリートです。ビジネスの潜在能力がありながら既存の企業組織では活躍の機会が充分とはいえない方に、これから成長する職種にチャレンジして活躍いただく後押しをすること。それがこの事業の目的です」(木村さん)

「アスリートFLAP支援事業」は、MRIが提唱するキャリア自律の考え方「FLAPサイクル®」にもとづいている。

Find(知る):自身の特性や強み、適性のある職、職の将来性などを知る
Learn(学ぶ):目指す方向に向けて必要なスキルアップ・リスキリングを行う
Act(行動する):目指す方向に向けて行動する
Perform(活躍する):新たなステージで活躍する

「アスリートは選手生活において、自分の強みを分析し結果を残すため学んで行動する、『Find』『Learn』『Act』を自ずと回してきた方が多い。そういう意味では、アスリートのFLAPを支援しながら、ビジネスパーソンもアスリートから学ぶ相乗効果が生まれると思っています」(木村さん)

アスリートと企業・地域をつなぐ場を提供、AIによる強みの再発見も

「アスリートFLAP支援事業」では、アスリートやスポーツ関係者限定の無料の会員組織『アスリート・イン®』を設け、アスリート同士や企業・自治体等とのオンライン・オフラインの交流機会や、AIによって自分の強みを再発見させ、チャレンジ意欲を後押しする「AIメンター」などのサービスを提供。アスリートの意識変容を促しキャリア自律を支援する。
一方、企業や団体に向けては会員組織『アスリートサポートラボ』(年会費税込132,000円)を設け、引退後のアスリートを採用したいという企業とのマッチングだけでなく、社員の育成や健康増進、ダイバーシティ推進、新規事業創出等に現役や元アスリートが参画し、相互にメリットがあるさまざまな機会を創出する。AFS事業推進メンバーの奥野 翔子さんによると、現状、アスリート・インの会員は現役と引退者、半々ぐらいだという。
「個人競技でほかの選手との交流がなかなかない、セカンドキャリアについて近しい先輩から聞くしかなく選択肢が少ないといった課題を抱えているアスリートは多いようです。アスリート・インによる選手同士の交流が、自身のキャリアを考えていただくきっかけとなればいいですね。アスリートが強みを活かして生涯活躍しつづけるためには、引退が決まって急にキャリアを考え始めるのではなく、できれば現役中から自分の適性を考えたり、短期のお仕事を重ねて将来のキャリアにつなげていただきたい。そのためにはアスリートのマインドセットを変えていくことも必要です。企業側もアスリートという人材をどのようにすれば十分に活かしきれるのか、いろいろと試行錯誤しているところです」(奥野さん)

現役中から競技外の選択肢もチャレンジ=「デュアルキャリア」や「セカンドキャリア」形成を支援

賛助会員からは、旅館やホテルの支配人になり地方創生に貢献、企業や自治体のスポーツイベントにゲストアスリートとして参加、パラアスリートが企業でダイバーシティについて講演、といった提案があるという。実際に実現したマッチングの例として、大阪商工会議所ではアスリートと連携してスポーツ産業振興の取り組みを進めている。アスリートが競技の中で感じている課題を新たなビジネス創出の参考にしたり、大学生向けのスポーツ・ウェルネス人材育成プログラムにアスリートがアドバイザーとして参画している。

「アスリート側からは人脈が広がった、自分の可能性が広がったといったご感想をいただきました。アスリートはスポーツで培った知見を教育に活かし次世代につないでいきたいという思いが強い方が多く、とくに大学生との企画は好評でした。ビジネスサイドの方々からも自分達とは違う切り口でさまざまな意見を出してもらって新鮮だったというご感想をいただいています」(奥野さん)

マッチングについては、他の事業者と競合するのではなく、連携することでアスリートの選択肢を増やし、アスリートが新たな領域で活躍する能力が高いことを、事例やデータで可視化する。それが、より活発なマッチングを促し、これまで想像していなかったようなアスリートと企業・地域とのコラボが生まれることを楽しみにしているという。

「アスリートのなかでも、女性アスリートのキャリア形成は重要なテーマです。出産育児前後のキャリア形成について、どのような支援が必要か、当事者と共に模索しているところです。アスリートには『セカンドキャリア』にとどまらず、現役中から競技との『デュアルキャリア』を意識していただきたい。そうして輝くアスリートの姿を見て、次世代を担う子ども達が『好きなことにチャレンジしたい』と思うきっかけとなればと願っています」(木村さん)

「三菱グループ各社にもぜひご関心を持っていただき、アスリートにとっても企業にとってもプラスになる場を一緒につくり、アスリートの活躍を三菱グループ全体で推進していけたらと思っています」(奥野さん)

ゆくゆくは支援対象をアーティストや専業主婦層にも広げることも視野に入れている。「MRIがアスリートを支援」と聞くと意外なようだが、その先には「夢に向かってチャレンジしたあとに挫折や引退があっても、また新しい世界でやり直せる社会」や、「学歴重視の新卒採用のような単一のキャリア観に縛られず、多様なキャリアを描き実現できる社会」という大きな目標があるのだ。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

木村 健人   TAKEHITO KIMURA

人材・キャリア事業本部

インタビュアー写真

奥野 翔子   SHOKO OKUNO

人材・キャリア事業本部

株式会社三菱総合研究所

東京都千代田区永田町2-10-3
1970年設立。幅広いネットワークや政策・制度への理解、先端技術に関する科学的知見などの強みを活かし、基盤事業であるリサーチ・コンサルティング事業や金融ソリューション事業を通して社会やお客様が抱える課題解決に取り組む。また、シンクタンクとしての政策提言機能の強化、成長領域であるDX事業、ストック型事業、海外事業などへの先行投資を進め、お客様やパートナーとの共創によってあるべき未来社会の実現を目指す。

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