各社のトピックス

2023.12.21

UBE三菱セメント

MITSUBISHI UBE CEMENT CORPORATION

世界初の試み!UBE三菱セメントがセメント製造にアンモニアを混焼し、CO₂排出量の大幅削減を目指す

私たちのインフラ建設に欠かせないセメント。その原料となる石灰石を焼き固めた「クリンカ」の製造には、熱エネルギー源としておもに石炭を使用しており、CO₂の大量排出が避けられないものとなっている。そこでUBE三菱セメントは、建築廃材や廃プラスチックを混焼するなど、CO₂排出量削減に向けてさまざまな取り組みを進めている。

その取り組みの一環として、宇部セメント工場(山口県宇部市)のセメントキルン(焼成炉)と仮焼炉において、アンモニアを熱エネルギー源として使用する混焼試験を始めた。セメント工場の実機レベルでのアンモニア混焼は世界初の試みだ。

技術の確立は2025年度中を予定、CO₂の大幅削減に寄与

アンモニアはCO₂を排出しない次世代エネルギー源として注目されている。UBE三菱セメントでは、今後アンモニアの混焼率を5%ずつ段階的に上げていき、混焼率30%を目標としている。実用化が可能なレベルで30%が達成できれば、現在宇部セメント工場から排出されている熱エネルギー由来のCO₂年間約35万tの内、約10万tを削減できるとされている。

UBE三菱セメント 地球環境対策プロジェクト カーボンニュートラル技術推進室の熊谷 拓也さんはこの試験について次のように解説する。

「宇部セメント工場の隣にあるUBE株式会社ではアンモニアを製造しており、アンモニアタンクや配管が工場近くにあるということが当社アンモニア混焼試験の強みとなっています。現状の課題としては、セメント製造におけるアンモニア混焼は世界的にも前例がないため、まずは混焼率の小さい試験から慎重に実施していかなくてはなりません。単にアンモニアを混ぜて燃やせばいいのではなく、セメント製品への影響や工場の設備や稼働への影響を確認しながら、バーナーの開発など燃料供給設備も併せて検討をしています。」(熊谷さん)

この『セメント製造プロセスにおけるアンモニア燃焼技術実証事業』は、山口県が公募した『令和5年度カーボンニュートラルコンビナート構築促進補助金』に採択された。今後は2段階に分けて燃焼試験を行う予定で、1段階目の仮焼炉での燃焼試験は、2024年下期に予定されている。セメントキルンでの燃焼試験は2025年となる。その後、必要に応じてデータの解析や追加の試験などを行い、技術の確立は2025年度中を目指している。

カーボンニュートラル技術推進室を新設、全社一丸となって取り組む

UBE三菱セメントは、中期経営戦略『Infinity with Will 2025 ~MUCCサスティナブルプラン 1st STEP~ 』で、カーボンニュートラルに向けた2030年の中間目標と事業戦略を策定した。2023年8月には、カーボンニュートラル技術についてプロセス開発・実証・実装を推進する『カーボンニュートラル技術推進室』を新設。熊谷さんもこの新設部署に所属している。

「カーボンニュートラル技術推進室のメンバーは、プロセスエンジニアが主体となっています。私も入社から数年間は工場の生産部門にいました。そこで感じたのは、今まで工場と研究所をつなぐ部署がなかったということ。その役割を、このカーボンニュートラル技術推進室が担うことになりました。現在、部署として取り組んでいるプロジェクトは、アンモニアの混焼試験のほかに、セメント製造プロセスから発生する原料由来のCO₂を低コスト・高濃度で回収し、有用な資源として活用する事業や、水素とCO₂からメタンを合成するメタネーションと、それを燃料として使うための技術開発、カルシウムを多く含有する廃棄物とCO₂を結合させ建築・土木材料として活用することなどさまざまなカーボンニュートラル技術を検討しています。これらはまだラボレベルです。これからどのように実証レベルに持っていくか、カーボンニュートラル技術推進室が工場と研究所の間を取り持ち、早期の工場実装を図って2050年カーボンニュートラル達成に向けて取り組んでいきます」(熊谷さん)

カーボンニュートラル技術推進室が属している地球環境対策プロジェクトでは、従業員に対してカーボンニュートラルに関する理解を深める説明会を定期的に開催している。2050年の大きな目標を達成するためには、工場も研究所も一体となる必要があるからだ。

「UBE三菱セメントは、総合素材メーカーの三菱マテリアルとUBEの2社のセメント事業が統合しているという背景があり、蓄積された無機材料の焼成技術もありますし、サプライチェーンも確立しています。アンモニアに関してはUBEの知見を生かし、密に連携しながら検討しています。また、宇部セメント工場のほかに九州工場(福岡県京都郡)や伊佐セメント工場(山口県美祢市)と大型港湾を有する西日本臨海部に主力拠点が集中しており、アンモニアや他の代替燃料も含めて、供給拠点を作っていくうえでの強みもあります。その強みを生かし、UBE三菱セメントがハブとなって、カーボンニュートラルなセメント製造および、そのためのインフラ整備を広げていきたいと考えています」(熊谷さん)

UBE三菱セメントでは、2030年にCO₂排出量40%削減(対2013年比)を目標に掲げている。世界初の技術を確立し、早期に社会実装することが期待されている。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

熊谷 拓也   TAKUYA KUMAGAI

地球環境対策プロジェクト カーボンニュートラル技術推進室

UBE三菱セメント株式会社

東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング
三菱マテリアルと宇部興産(現・UBE)のセメント事業およびその関連事業等の統合を行い2021年に設立。「最高の品質を最高の技術とサービスで提供し、地球の未来を支えつづける。」を理念とし、国内・海外のセメント事業および生コンクリート事業を中心に、石灰石資源事業などを通し、ビル・橋梁・道路などの社会インフラの整備に向けた基礎素材の安心・安定供給を行う。

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