三菱ＵＦＪ銀行が2023年7月から相続手続きをサポートするWebサービス 「そうぞくガイド」の提供を開始した。誰でも無料、しかも個人情報の入力不要で利用できるというこのサービス。リリースに至った思いや経緯について、企画からプロジェクトに携わった三菱ＵＦＪ銀行 デジタルサービス企画部 DX室 新事業グループ 調査役の熊本 梨那さんと、プロジェクト全体を統括するデジタルサービス企画部 DX室 新事業グループ 上席調査役の小林 亜紗子さんに話を聞いた。

相続手続きは複雑で難しいといわれる。書類を複数の対応機関から取り寄せなければならないほか、普段使わない用語が使われ、専門的な知識が必要となることが多い。一部手続きには期限も設定されているため、対応漏れや期限超過が発生することも。故人を悼む間もなく、膨大な手続きを前に、何から対応していけばいいのか途方に暮れる人も多い。

「そうぞくガイド」は、いくつかの質問に答えると自分に合った相続手続きの「やることリスト」が作成され、オンライン上で進捗を管理することができるサービスだ。個人情報は入力する必要がなく、三菱ＵＦＪ銀行と取り引きがなくても誰でも無料で利用できる。 「多くの方々にご活用いただきたいという思いがあり、サービスを使うにあたってログインは不要としました。お客さまのご状況やご意向等、最低限の情報だけで『やることリスト』を表示し、それぞれ解説をご提供しています」（熊本さん）

三菱ＵＦＪ銀行では、国内で1年間に亡くなる人の約1割にあたる、年間11万件超の相続手続きを受け付けているという。MUFG（三菱ＵＦＪフィナンシャル・グループ）では、従来より、相続受付をタッチポイントとした資産運用や遺産整理等のサービスを提供してきたが、ここに金融サービスだけにとらわれない発想で構想されたのが「そうぞくガイド」だ。

「相続についてはかねてより『手続きが難しい、思ったように進まない』といったお客さまの声をお伺いしており、CS面で改善の余地がある領域と認識していました。従来の金融機関が提供するサービスの枠を超えて、お客さまが必要とされている情報をご提供することで、金融における相談の際にも三菱ＵＦＪ銀行を選んでいただきたい。そんな橋渡しとなるサービスをご提供したいと考え、このWebサービス『そうぞくガイド』ができました」（熊本さん）

ご自身での対応が難しい場合は、「そうぞくガイド」の「専門家検索」機能で、相続領域に詳しい弁護士・税理士・司法書士といった専門家を探すこともできる。ここで検索できる弁護士・税理士・司法書士は、広告という形で「そうぞくガイド」に掲載されている。2021年11月に施行された改正銀行法によって広告業務が銀行業の付随業務に加えられたことにより、銀行が運営するサイトへの広告掲載が可能になった。

「社内でも新しい試みです。サービス開始から3ヵ月間ほどで、個人のご利用者さまと専門家の広告主さま、どちらも利用件数は徐々に増えてきています」（小林さん）

この「そうぞくガイド」は、開発・運用方法においても新しい手法が採用された。MUFGのデジタル戦略子会社であるJapan Digital Design株式会社と共同で、顧客体験デザインから開発までを一気通貫で行い、本格的に開発を始めてから10ヵ月ほどでリリース。短期間での企画・開発・リリースを実現した。

「我々が提供すべきコアの価値観をしっかり決めたうえで、Japan Digital Designに顧客体験設計からUI検討、開発までを一気通貫で進めました。MVP（Minimum Viable Product）の手法にのっとって、早期に最低限必要な機能をリリースさせ、お客さまの声を聞きながらアジャイルに機能を改善し、徐々にサービスを拡大させていくことを目指しています」（熊本さん）

サービスを始めてから「亡くなった後の手続きだけでなく、生前からどう対策をしていくかについても知りたい」という声が集まってきており、2024年3月5日には生前から準備できる対策についてもサポートできるよう、生前やることリスト機能などの追加を予定しているという。

「相続や終活をお考えのお客さまのパートナーとして、お客さまに寄り添った、道標となるサービス展開をしていきたいと考えています。『相続、終活といえば、そうぞくガイドだね』と皆さまに認知していただき、気軽にお使いいただけるサービスを目指していきたいと思っております」（小林さん）

「相続のお困りごとはとても多く、高齢化社会ということもあってとてもニーズが高いサービスだと捉えています。そうした分野のサービスをインターネットで手軽に提供していくことは、ビジネスの方向性としても拡大すると見込んでいます。今後お客さまのニーズにお応えしていきながらこのサービスを育てていき、MUFGのファンづくりができたらと考えております」（熊本さん）

今後も従来のサービスの枠組みに捉われず、MUFGの各種サービスと連携することによって新しいサービスの開発や機能改善を行い、人々の利便性向上につなげつつ社会課題の解決に貢献していく。