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2024.03.28

三菱倉庫

Mitsubishi Logistics Corporation

三菱倉庫が画期的ツールを開発!
貨物輸送のルートを複数検索し、温室効果ガス排出量を算定

さまざまな企業で急務となっている温室効果ガスの削減。自社が直接排出する温室効果ガス排出量(スコープ1)や他社から供給されたエネルギーの使用による排出量(スコープ2)だけでなく、その他の間接的な排出量(スコープ3)を含めたサプライチェーン全体における排出量削減が求められている。その削減に向けたツールとして「Emission Monitoring/Cargo Route Finder」を三菱倉庫が開発。2024年2月にリリースした。開発にあたった、三菱倉庫 国際輸送事業部 企画・開発チームマネジャーの山口 直樹さんと、国際輸送事業部 企画・開発チームの田村 成都さんに話を聞いた。

デジタルプラットフォーム構築の一環として先行開発

「Emission Monitoring/Cargo Route Finder」は、貨物輸送にかかる温室効果ガス排出量を簡単に算定できるツール。開発に至った経緯について、山口さんは次のように語る。

「貨物輸送に限らずさまざまな業界でDXが進み、事業環境やプレーヤー、お客さまのニーズは大きく変わっていくことが予想されます。このような変化への対応にあたっては、もっとプロアクティブに動いていくことが重要だと考えています。お客さまのサプライチェーンマネジメント最適化への貢献を目指す当社としても、お客さまと共に持続的な成長を実現していくためにDXが不可欠。そこでデジタルプラットフォームを構築するプロジェクトが2022年4月に立ち上がりました。DXによって業務を効率化するだけでなくお客さまへのサービス強化を推進していきます。さまざまなシステム化を予定しているなか、近年関心が高まっている温室効果ガスの排出削減を支援するこのツールを先行開発することとしました」(山口さん)

長年培ってきた知見をもとに複数のルートを表示

検索画面:発地/着地、輸送数量などを指定

検索結果:複数の輸送ルートに関する排出量、距離、輸送日数等を一覧表示

「Emission Monitoring/Cargo Route Finder」は、海上輸送、航空輸送、鉄道輸送、トラック輸送など、複数の輸送モードに対応。検索画面で、出発地・到着地・物量を入力すると、そこから船・航空機・鉄道・内航船・バージ・フェリーのスケジュールを始めとしたさまざまなビッグデータを活用し、輸送モードや輸送ルートの膨大な組み合わせのなかから輸送ルート候補を選び出す。さらにその候補をさまざまな観点から評価付けし、スコア上位の輸送ルートを表示。それぞれの輸送日数・距離・温室効果ガスの排出量等を比較検討することができる。
(ルート検索エンジンに関する特許を2023年12月に取得済み)

海上輸送(直行便・西岸経由)+鉄道を利用した場合

「一般的には単一ルートに対する排出量計算を基本としているのに対して、当社ではさまざまなルートや輸送モードを考慮し、例えばアメリカであれば東岸・西岸、それぞれの港で揚げた場合のルートも比較検討できるなどルート検索ツールとしての機能も備えています。さらに、非現実的なルートが出ないように、実際の船舶や航空機、鉄道の運航スケジュールを定期的に取り込んで計算して、現実的なルートを表示しているところも大きな特徴となっています」(田村さん)

単に、温室効果ガスの排出量を見える化するだけでなく、輸送ルートの検索にこだわり抜いたこのツール。開発にあたっては、ビッグデータ処理やAI・機械学習分野で先駆するAmazon Web Services(AWS)を活用した。

2023年1月から開発を進め、今回リリースしたこの「Emission Monitoring/Cargo Route Finder」。2024年2月にニュースリリースした際もその画期性から注目を浴び、業界紙でも大きく報じられた。今後、機能を追加し、より魅力的なツールにアップデートしていくという。

「今後はお客さまの輸送実績データを取り込んで一括で温室効果ガス排出量を計算できるようにしたり、複数のルートを表示するときに、お客さまの関心度合いに応じて表示順などを変化させたりするなど、AIならではの機能を活かすことを検討しています。さらに、ルートの表示から見積もりや予約がスムーズに移れるように、デジタルプラットフォームの他の機能との連携を進めて、より利便性を高めていきたいと考えています」(山口さん)

実はすごい! 三菱倉庫の国際輸送

三菱倉庫は2022年度に打ち出した中期経営計画で、海外売上高20%超を掲げるなど、今後の成長に向けて国際輸送事業部門の強化を進めている。国際輸送事業部門では、海上、航空、鉄道、トラックといった複数の輸送手段を組み合わせた国際複合一貫輸送を得意としており、ドア・ツー・ドアで貨物を輸送できる。加えて、発着地での陸上輸送や貨物の保管も含めた物流サービスをワンストップで提供している。

「三菱倉庫という社名から、国際輸送を手がけていることをご存じない方も少なくないと思います。三菱倉庫が国際輸送サービスを提供し、しかもこのような新しいツールの開発も進めていることをぜひ知っていただけたらうれしいですね。これまでの経験と実績をもとに今後もサービス強化を進め、安全・信頼・高品質かつ柔軟なサービスで多様な輸送ニーズにお応えしていきます」(山口さん)

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

山口 直樹  NAOKI YAMAGUCHI

国際輸送事業部 企画・開発チームマネジャー

インタビュアー写真

田村 成都   SEITO TAMURA

国際輸送事業部 企画・開発チーム

三菱倉庫株式会社

東京都中央区日本橋1-19-1
1887年設立。日本・アジア・アメリカ・ヨーロッパで、倉庫保管・配送・国際輸送等、総合物流を展開。
食品、医薬品、自動車部品、化学品など、取り扱う品物は多岐にわたる。長年の実績に基づく物流への知見・最適な物流施設・新たなテクノロジーを組み合わせて物流の課題解決策を提案し、サプライチェーン全体の効率化とサステナブルな社会の実現に向けて顧客とともに取り組んでいる。

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