各社のトピックス

2024.03.14

三菱UFJニコス

Mitsubishi UFJ NICOS Co., Ltd.

三菱UFJニコスがクレジットカードの不正使用検知にAIを導入
~「人的ノウハウ・知見×AI」で業界最高水準の不正抑止精度に!

日本クレジット協会によると、クレジットカードの不正被害額は、2020年には250億円を超え、2021年には330億円超え、2022年には430億円超えと年々増加傾向にあり、2023年1〜9月のクレジットカードの不正被害額は401.9億円(前年同期比1.3倍)にものぼった。なかでも「クレジットカード番号盗用によるECサイトでの不正被害」は376.3億円と全体の93.6%を占め、その防止策が業界全体の課題となっている。

三菱UFJニコスは2023年2月、三菱UFJカードをはじめとする同社クレジットカード(MUFGカード、DCカード、NICOSカード)の不正検知システムに全てのオーソリ取引に対してAIが不正確度をスコアリングする機能を導入し、 2023年4月から本稼働を開始、大きな成果を上げている。そこにはAI導入だけではない、三菱UFJニコスならではの現場力があった。

長年の経験により担当者が蓄積してきた知見をAI学習に生かして精度を上げていく

従来は、オーソリセンター(加盟店からの販売承認や会員からのカード喪失を受け付ける現場)のモニタリングチームで1日約数十名のスタッフが、24時間365日、交替でカード取引をモニタリング。あらかじめ設定された取引判定ルールに合致した取引をモニタリングのうえ、不正懸念取引を検知の際は、カード会員にご利用状況を確認。同オーソリセンター内の不正抑止チームと情報連携し、不正の傾向を分析、新たな取引判定ルールを作成していた。

しかし、不正使用の手法が多様化・巧妙化。以前は対面の加盟店で偽造カードを使用するパターンが主流だったが、今はインターネットでの悪用が多く、狙われる商品はゲームの課金やサブスクリプションサービスなど多種多様。不正使用の金額も下がり、真正の使用と見分けがつきにくくなった。対策を打っても、すぐにそれをかいくぐる違う手口が出てくるので従来の不正抑止手法では限界を感じていた。

そこで、既存の不正検知システムに株式会社PKSHA TechnologyのAIソリューション「PKSHA Security」を導入。AIによって小口取引から大口取引まで人の目では見つけにくい不正を検知できるようになった。また、独自のAIアルゴリズムで日々変化する不正手口のパターンを自動学習することで、新しい不正の手口にいち早く対応することが可能となった。

しかし、単にAIを導入しただけではなく、現場の知恵と人的ノウハウを存分に注ぎ込んでいる点が三菱UFJニコスの不正検知システムの強みとなっている。AIが算出したスコアに応じ実際に取引を停止する水準は不正抑止チームがコントロールしている。オーソリ統括部 オーソリ企画グループの松清 美歩さんは次のように語る。

「AIを導入してからも、不正検知から取引判定ルール作成までの大まかな流れは変えていません。AI導入前から、当社の不正判定精度と取引判定のルール設定スキルはかなり高いものでした。AI導入後はモニタリングチームで判定した不正懸念取引を即時にAIに学習させることで、最新の不正トレンドを反映したAIスコアリングモデルの日次更新が出来るようになりました。さらに、不正抑止チームではスコアリングモデルが算出したスコアに現場の人的ノウハウ・知見を加味することで、多種多様な不正パターンに対応した取引判定ルールを作成し、被害発生抑止に迅速かつ精緻に対応しています。AIだけでなく、現場のスタッフが力を合わせることでどんどん成果が上がっています。」(松清さん)

モニタリングに20年携わっているオーソリ第2センターモニタリングチームの深澤 雄太さんは次のように語る。

「モニタリング業務は経験を要します。当社のモニタリング担当者は、長年従事しているエキスパートが多く在籍しており、その担当者が判断した結果をAIへ学習してもらうことにより、不正検知精度の更なる向上を図っています。」(深澤さん)

また、取引判定ルールを作成しているオーソリ第1センター不正抑止チームの中村 朱里さんは取引判定ルール作成の苦労について次のように説明。

「AIスコアを導入する前までは、金額や利用の回数などさまざまな項目を組み合わせて、取引判定ルールを作っていました。AIスコアを導入してからは、加盟店さまごとの状況などを見ながら、会員ごとの取引状況に応じてスコアリングされるAIスコアを取引判定ルールに組み込むことでより効率的かつ精度の高いルールを作成できています。ただ、AIスコアはまだ学習段階のため、AIの判定だけではルールを作成できません。正しくご利用いただいているお客さまのお取引を止めてしまわないよう、ルールの見直しをするなど試行錯誤しているところです」(中村さん)

不正被害件数と金額はAI導入前に比べて3割以上削減。不正阻止率と取引判定ルールの的中率において業界最高水準となっているのは、単にAIを導入しただけでなく、現場スタッフの人的ノウハウ・知見、工夫、現場力の賜物なのだ。

不正被害件数と金額を3割以上削減! 今後はより快適なカード利用へ

今後は「不正被害の阻止」だけでなく、これまで以上により「快適な」カード利用の実現を目指す。

「今まで検知が困難であった不正も、AIスコアの活用により検知が可能となり、日々新しい発見があります。今後もAIをさらに活用することで、より高い水準の不正検知を目指します」(深澤さん)

「今後はどんどんAIに学習させていき、AIスコアだけでより適正なルールを作成できるようにし、真正のご利用は阻害せず、不正は確実に捉えることで、より安全・安心に当社のカードをお使いいただけるようにしていきます」(中村さん)

「当社は以前からかなり高い不正抑止水準を保ち、不正取引の9割以上を検知して阻止できています。ただ、不正取引だけを捉えることはとても難しく、真正利用のお客さまのお取引も止めてしまうことがどうしてもあります。精度を上げ、不正取引だけを捉えられるよう、オーソリセンター一丸となって取り組んでいます。また、取引をお止めしてしまったあとに、お客さまに迅速にご連絡をとれる体制や、Web受付などによるスムーズな取引再開など、便利なスキームのご提供にも注力しています。」(松清さん)

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

松清 美歩  MIHO MATSUKIYO

オーソリ統括部 オーソリ企画グループ

インタビュアー写真

深澤 雄太  YUTA FUKASAWA

オーソリ第2センター モニタリンググループ

インタビュアー写真

中村 朱里  AKARI NAKAMURA

オーソリ第1センター モニタリンググループ

三菱UFJニコス株式会社

東京都千代田区外神田4-14-1 秋葉原UDX
1951年、旧日本信販設立。2007年、三菱UFJニコス設立。さまざまな“決済”ニーズに応える、三菱UFJフィナンシャル・グループの中核企業として、個人・企業向けのクレジットカードの発行や、加盟店への決済システム導入、金融機関などからのカード発行業務の受託などに加え、クラウド型システム基盤を開発し、提携カードに付随するスマホアプリによる決済サービスやポイント管理サービスなどを提供。快適・安全・安心なキャッシュレス社会の実現に向け、多様な決済サービスを提供する。

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