
三菱地所などが開発する「グラングリーン大阪」がとうとう始動した。公園を中心とした都市開発は珍しく、大阪の一等地に広大な「みどりの空間」が出現した格好だ。関西経済の起爆剤となる都市開発プロジェクトの概要とは?
三菱地所を代表企業とするグラングリーン大阪開発事業者JV9社(三菱地所、阪急電鉄、竹中工務店など)が手掛ける都市開発プロジェクト「グラングリーン大阪(GRAND GREEN OSAKA)」が本格始動している。2024年9月には先行まちびらきとして、北街区のホテルや商業施設ほか、大阪市と連携するうめきた公園(サウスパーク全面、ノースパークの一部)がオープン。2025年3月には南街区のオフィスやホテル、商業施設などがスタートし、今後、2027年度を目処に全体がまちびらきしていく予定だ。
このプロジェクトの計画コンセプトは、「”Osaka MIDORI LIFE”の創造~「みどり」と「イノベーション」の融合~」。西日本最大のターミナル駅「JR大阪駅」前に、約4万5,000㎡の面積を誇る都市公園「うめきた公園」のほか、オフィス、ホテル、商業施設、中核機能施設、分譲住宅などができる巨大プロジェクトになる。
プロジェクトに合わせてJR大阪駅「うめきた地下口」の改札口が新たに開設され、改札内連絡通路が整備された。これによって、大阪駅から関西空港まで特急はるか号で乗り換えなしで行けるようになった。また、2031年頃には「なにわ筋線」として南海本線とも直結することになる。事実上、市内のキタとミナミがつながり、関西空港や新大阪駅にもつながる訪問者にとって利便性の高い街となっている。

グラングリーン大阪の全体概要。


(右)イベントスペース「ロートハートスクエアうめきた」の大屋根は、全長約120mの大きさで、芝生広場とあわせると1万人規模のイベント開催も可能という。
この場所は、85年間にわたって鉄道物流の拠点であった梅田貨物駅跡地(通称:梅田北ヤード)を再開発。2013年4月に先行して開業した、うめきた1期地区の「グランフロント大阪 (GRAND FRONT OSAKA)」に続く、うめきた2期地区のプロジェクトとなる。全体で約9万1,000㎡の地区面積のうち、半分程度を都市公園とし、そのうちの約3分の1となる約3万㎡では、約320種、高木・中木計約1,500本もの多様な緑地を形成。西日本最大のターミナル駅前に圧倒的なみどりの空間を創出していることが大きな特徴だ。
関西最後の一等地!
関西経済の起爆剤へ期待大きく
実際に行ってみると分かるが、そこにはかつて思い描いたような大阪の街のイメージはない。洗練された都心の一等地のような街が出現したように見える。
「実際、ここは関西最後の一等地であり、関西経済の起爆剤になるよう大きな期待が寄せられています。だからこそ、計画コンセプトには「みどり」と「イノベーション」の融合が謳われているのです」
このように語るのは開発を手掛けた三菱地所 関西支店グラングリーン大阪室主事の内田 健弥氏だ。
「まずランドスケープファーストで公園のなかにまちをつくるという思想のもと、ランドスケープと建物が一体になる都市空間のデザインを採用しています。また、パブリックであることを重視しており、周辺住民、ワーカー、観光客などさまざまな人が集まり、共存し、ともに楽しめるイベントやアートを通じて文化を感じてもらうことで、市民や企業の発意による活動やチャレンジを支援・育成する仕組みを整備しています。従来の都市公園では見られないような取り組みを行なっていきたいと考えています」

グラングリーン大阪には、クボタの本社移転やホンダのソフトウェア開発拠点など、多くの企業が入居を予定している。また、街の持続的な運営を自社のSDGsの取り組みや事業開発と連動させ、企業価値の向上を目指すロート製薬やサントリーグループ、パナソニックグループ、西尾レントオールといった企業が「MIDORIパートナー」として参画している。さらに、企業だけでなく、クリエイター、大学、スタートアップなどさまざまなプレイヤーが集うことで、新たな商品やサービスを生み出したり、成長を通じて街の価値を高めたりしていくことも目指している。内田氏が続ける。
「企業や大学、スタートアップ、研究機関などが集まり、活動できるごちゃごちゃ空間「JAM BASE」や、官民一体のイノベーション支援組織「うめきた未来イノベーション機構」もあります。また、ネットポジティブの概念を体現するプロジェクトとして街区全体の約9割を在来種の植物で構成。化学肥料や農薬を限定的に散布することで環境負荷を抑制しています。また、バイオガス発電設備など、新しい再生可能技術を最大限に活用。サステナブルでウェルビーイングな街で、緑の空間の癒しと活力を感じてもらい、訪れた方が少しでも前向きになれるような街を目指していきたいと考えています」


(右)「JAMBASE」3階のカフェ。誰でも利用できるオープンコミュニケーションエリアで、新たな出会いとインスピレーションが広がる。
日本初開業となる「ウォルドーフ・アストリア大阪」、
都市型スパ「うめきた温泉 蓮 Wellbeing Park」も

広々とした芝生広場が開放的なうめきた公園。隣接する「南街区」には、フードマーケット「Time Out Market Osaka」や「コングレスエア グラングリーン大阪」、ホテルなどが開業予定。
東京の街でも再開発は行われているが、グラングリーン大阪のように公園が中心となった街づくりはあまり見られない。しかも、いわば東京駅周辺、もしくは銀座も一体となった規模での開発が行われているというのだから、大阪にとってインパクトが大きいのはいうまでもない。
そんなグラングリーン大阪では、インバウンドをはじめ、世界中から人々を受け入れ、魅力を発信できる機能も有している。
日本初開業となる「ウォルドーフ・アストリア大阪」のほか、世界中からビジネス・観光を誘引できる国際性の高い「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」、「ホテル阪急グランレスパイア大阪」など3つのホテルブランドを用意している。また、グローバルメディア「Time Out」が監修するアジア初進出の大規模フードマーケット「Time Out Market Osaka」では、関西の食と文化を体験できる。そして、「コングレスエア グラングリーン大阪」など、公園施設や中核機能施設などもイベントや会議に活用できるMICE施設も整備している。


(右)敷地内には世界で活躍するアーティストによるパブリックアートが配されている。
もちろん施設内のショップやレストランが充実しているのは言うまでもない。公園内には季節ごとに変化する景色を楽しみながら食事ができるほか、軽食・飲料のテイクアウトやテラス席での食事が楽しめる、公園ならではの楽しみ方も可能な店舗がある。
ほかにも公園の緑と一体になれる空間としてホームセンターのコーナン初の都市型店舗「gardens umekita」や国内有数の大型店「パタゴニア大阪・梅田」、歯科や産婦人科といったヘルスケア施設も充実させている。
さらに、2025年にオープンする南館では、関西最大級の都市型スパ「うめきた温泉 蓮 Wellbeing Park」があり、天然温泉や公園を見渡せるインフィニティプールなどを楽しむことができる。まさに三菱地所のフラッグシッププロジェクトであり、大阪の”セントラルパーク”ともいえるグラングリーン大阪。今後の街づくりについて、内田氏もこう期待を語る。
「これまで梅田はオフィスビルばかりで緑がなかったので、癒しを求めて多くの人達が集まっています。昼間だけでなく、日が暮れてくると学校や仕事を終えた若い人達も集まってきます。昼も夜も緑の空間ならではの心地よい雰囲気があります。これから皆さんの人生の1ページに刻まれる、愛される街になりたい。そう思っています」。
INTERVIEWEES

内田 健弥 KENYA UCHIDA
関西支店
グラングリーン大阪室
主事
三菱地所株式会社
東京都千代田区大手町1-1-1 大手町パークビル
1937年5月設立。オフィスビル・商業施設・ホテル・物流施設等の開発、賃貸、国内外での収益用不動産の開発、販売などを手掛ける。従業員数は単体:1,093名 連結:11,045名。現在、東京駅日本橋口前の常盤橋街区に、高さ日本一を更新する地上約385mの超高層ビル「Torch Tower(トーチタワー)」を含む再開発計画「TOKYO TORCH」や、赤坂のエンタテインメント・シティ計画「赤坂二・六丁目地区開発計画」などが進行中。