各社のトピックス

2025.08.07

AGC

AGC Inc.

鏡がデジタルサイネージに!?
AGCがディスプレイ一体型ミラー「ミラリア®」の市場開拓を強化

各社のトピックス メインビジュアル 「マンスリーみつびし」

すでに国内の化粧品販売店や美容室、商業施設などで活用が始まっている「ミラリア®」。鏡をデジタル化することでどんなことができるのか。それが市場開拓のポイントとなっている。

AGCは新規開発したディスプレイ一体型ミラー「ミラリア®」の市場開拓を強化している。2023年11月の発売以来、その反響は大きく、さらなる市場の深耕を図っている。今年1月からは三菱HCキャピタル、ジェイアール東日本企画とともに新丸ビルでデジタルサイネージ広告に関する新規事業の開発に向けた実証実験をスタートした。

この取り組みでは、まず三菱HCキャピタルとAGCの従業員を対象に、両社が入居する各フロアの化粧室に「ミラリア®」を設置、広告や天気・ニュース情報を表示している。次の段階では広告出稿企業を複数募り化粧室のミラー上での広告効果の効果測定を高度化し、その結果をもとに3社で新たなサービス開発につなげていく方針だ。

「ミラリア®」の設置イメージ。©AGC Inc.

今後、実証の結果にもとづいて事業性の検証を進め、オフィス内デジタルサイネージ広告に関して2025年度中のサービス提供開始を目指す。また、各社が持つリソースを組み合わせ、丸の内エリアのオフィスビル、商業施設、公共交通機関内に点在する広告と連動させることで、より効率の高いデジタルサイネージ広告サービスの開発も推進していく。

ミラーとしての十分な反射性と
ディスプレイの表示視認性を両立

このディスプレイ一体型ミラー「ミラリア®」とは、どのようなものなのか。これはミラーに映る鏡像と映像コンテンツが同居するディスプレイ一体型ミラーで、一般的なモニター・ディスプレイでは体験できない、これまでにない没入感を実現している。ミラリアがコンテンツを投影し、同時に周りの空間も映り込むことで没入感を感じることができる。
実際の製品を見ると、まるで魔法を使っているかのような印象を受ける。同社では2015年頃からこの技術開発に取り組んできた。同社建築ガラス アジアカンパニー日本事業本部新市場開拓部営業開発部長の池田 直輝さんは言う。

「私達はガラスや化学品などの事業領域があるなかで、新たな分野を開拓すべく事業インキュベーションを進めています。ガラスを作る技術については当たり前のように思われるかもしれませんが、非常に高品質なもの。とくに鏡とそこに映像を映し出すことは技術的にトレードオフの関係にあります。その課題を乗り越えて開発されたのが、ミラリアになるのです」

その特徴は大きく分けて3つある。1つめは当然ながらミラーにデジタルコンテンツを投影できるということ。ディスプレイに表示されたものをそのまま投影できるうえ、さまざまな鏡像AR(拡張現実)をリアルかつスマートに表現。カメラやセンサーなどと組み合わせ、取得できるデータを活用し、拡張現実を実現できる。しかも鏡像ARの表現に適した高解像度の映像表示で、デジタルサイネージに最適なものとなっている。
2つめは高い反射性と表示視認性だ。ディスプレイ一体型ミラーは、自分の姿や周りの風景が映り込む鏡像の鮮明さ(反射性)と、投影される映像の見やすさ(表示視認性)が重要な要素となる。同じく建築ガラス アジアカンパニー日本事業本部新市場開拓部営業開発部マーケティングリーダーの藤城 留美さんは語る。

「一般的に、反射性と表示視認性はトレードオフの関係にあり、反射性を高めると投影コンテンツは見えにくくなり、逆に投影コンテンツを見やすくすると反射性が低下してしまいます。ミラリアの特性は、ミラーとして十分な反射性と見やすい表示視認性を両立したことにあります。これはAGC独自の光学設計技術があって実現できているものです。」

そして3つめは、大型サイズにも対応可能なミラーであることだ。全身が映る姿見サイズから卓上サイズまで幅広いサイズに対応し、さまざまなコンテンツを実現するミラーとなっている。等身大の3Dキャラクターを投影させるなど、設置場所に応じた大型のサイズにも対応している。また、高効率な光学設計で消費電力と排熱を抑え、狭い空間でも使用可能となっている。

将来的には一家に一台、
家庭でミラリアを置いてほしい

全身が映る姿見サイズから卓上サイズまで幅広いサイズに対応。

ディスプレイ一体型ミラー「ミラリア®」は現在、大型、中型、小型の3サイズ(特注サイズも可)で展開している。その活用事例としてどのようなものを想定しているのか。
「たとえば、オフィスでは入場口での顔認証や健康をチェックしたり、公共交通で行き先案内や、事故遅延案内などのインフォメーションを表示したりできます。商業施設では施設内の案内表示や、ショップ・レストランなどのレコメンドへの活用、さらに店舗での化粧品・アパレルのカウンセリングやアドバイスをするほか、ホテルでのお客さま対応や、客室内での情報発信などに活用されることが想定されます」(藤城さん)

(左)オフィス入場口への設置イメージ。(右)顔認証や健康をチェック。

公共交通の行き先案内、事故遅延案内などインフォメーションを表示。

すでに国内の化粧品販売店や美容室、商業施設などでは活用が始まっている。
「美容室ではミラリアを使って、カウンセリングからビジュアルコミュニケーションをとることができるほか、ミラリアをプラットフォームにして予約の段階からお客さまの要望を登録し、そのデータをもとにAI分析をできるようになっています。また、ドラッグストアや化粧品販売店、セキュリティ企業などでも活用されています」(藤城さん)
現在も多くの引き合いがあるという「ミラリア®」。基本は“鏡をデジタル化することでどんなことができるのか”が市場開拓のポイントになってくるのだろう。藤城さんが続ける。
「ミラリアはハードウェアであり、必ずソフトウェアが必要になります。また、サービス化するにはパートナーが欠かせません。三菱グループ各社様とも連携できればうれしいです。これから商業施設やオフィスなどさまざまな分野で活用してもらい、将来的には一家に一台、家庭でミラリアを置いてもらえるような世界を目指していきたいと考えています」。

INTERVIEWEE

インタビュアー写真

池田 直輝  NAOKI IKEDA

建築ガラス アジアカンパニー
日本事業本部 新市場開拓部
営業開発部長

インタビュアー写真

藤城 留美  RUMI FUJISHIRO

建築ガラス アジアカンパニー
日本事業本部 新市場開拓部
営業開発部 マーケティングリーダー

AGC株式会社

東京都千代田区丸の内1-5-1
1907年創立。創業者は国産初の板ガラス製造に挑んだ岩崎 俊彌。1909年に国産化に成功し、現在は世界市場トップレベルのシェアを有し、建築ガラス向けほか、自動車向け、スマホやタブレット、電子部材向けのガラスなどに展開。化学品やライフサイエンス、セラミックスでも豊富な実績を誇る。世界最大級のガラスメーカーであり、従業員数は8,014名(2024年12月末現在)。日経平均株価の構成銘柄のひとつ。

過去の記事

TOP