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2025.09.04

大日本塗料

Dai Nippon Toryo Company,Limited

大日本塗料が東京オフィスをリニューアルオープン。部署間のコミュニケーションを促進、生産性も高まる

大日本塗料が東京オフィスをリニューアルオープン。フリーアドレスを導入し、カジュアルでリビングテイストなオフィスに新たに生まれ変わった。日本企業にありがちな縦割り文化を克服するオフィスづくりの狙いとは?

大日本塗料は東京都大田区にある東京オフィスをリニューアルオープンした。同社は2029年度に創立100周年を迎えるが、中計である「ビジョン2029」の策定にあたり、「多様な人材の確保と能力を発揮できる環境づくり」を重要課題のひとつとしてきた。これに加え、東京オフィスで実施してきたラウンドテーブル(経営層と従業員の座談会)でも、オフィスの老朽化だけでなく、組織間や従業員同士のコミュニケーションが取りづらいという声もあり、今回のリニューアルに至った。同社総務部総務課でオフィスリニューアルプロジェクト事務局を担った小原 尚倫さんは次のように語る。

「テナントとして入居してから30年以上。東京オフィスは営業の主要拠点であり、約80人の従業員が働いています。これまで内装工事は一切行われず、什器や備品も更新されていませんでした。ラウンドテーブルでもオフィス環境の改善を求める声が挙がったことから、2024年10月にリニューアルオープンするに至ったのです」

他部署とのコミュニケーションが活発化
職場への愛着も向上させていきたい

テーブルやカウンター席をランダムに配置した執務スペースは、オフィスらしさをなくし、開放的な雰囲気。

新たにリニューアルオープンした東京オフィスにはどんな特徴があるのだろうか。まず挙げられるのがABW(Activity Based Working)というワークスタイルを取り入れ、従業員同士の接点を創出していることだ。「仕事をする環境は自分で選ぶ」という考え方に基づくワークスタイル「ABW」では、従来のオフィスのような全席を固定席とはせず、従業員が業務の内容に応じて、働く場所を自由に選択できるよう設計されている。組織の垣根を越えて従業員同士の接点を増やし、イノベーションを発揮しやすいオフィス環境を目指している。小原さんが続ける。

「基本的にはフリーアドレスで、従業員は好きなところに座れることで、横のつながりを取りやすくしました。ただ、すべてがフリーアドレスではなく、管理部門や受注管理部門には仕事がしやすいよう固定席を用意しています。また社長室や役員席をあえて設けず、立場に関係なく気軽に話しやすい雰囲気づくりを心がけました。」
同じく総務部総務課でオフィスリニューアルプロジェクトメンバーを務めた金井 美樹さんもこう述べる。
「若手・中堅を中心にアイデア出しと導入を担ってもらい、率先してフリーアドレスを利用し、他部署とコミュニケーションをとることを促してきました。当初はフリーアドレスに慣れなかった中堅以上の層も、そのよさをますます実感するようになっています」

新たなオフィスではリビングテイストを取り入れ、従業員の満足度を向上させるような空間デザインとなっている。
「オフィス内にはユニークでカジュアルなインテリアを採用し、リビングテイストな雰囲気を取り入れることで、職場への愛着を向上させていきたいという狙いがあります。上司との相談や一人仕事など、用途に合わせて自由に席を選べることに、新たな働き方のスタイルができつつあります」(金井さん)

個別に区切られた会議室だけでなく、簡単な打ち合わせなどに使いやすい、ゆるやかに区切られたミーティングスペースがある。

縦割り文化やセクショナリズムも
フリーアドレスで解消へ向かう

実は同社は長い間、全社的にオフィス環境のテコ入れをしてこなかった。大阪の本社オフィスは2019年の移転を機にリニューアルしたが、それまでは築60年の自社ビルを構えていたという。
「しかし昨今、人的投資が重視されるなかで、職場環境の改善は必要不可欠となってきています。リクルート面でも将来世代の確保という点で、魅力的なオフィスが不可欠だという判断があり、本社の次は東京ということで、今回リニューアルをすることになりました」(小原さん)

また、日本企業にありがちな縦割り文化でセクショナリズムが強い点も課題となっていた。同社では扱う製品によって事業部が分かれており、同じ営業ターゲットに対しても個別アプローチになりがちで、事業部同士が連携したトータル提案は、営業社員個人のコミュニケーション力頼みになっている面があった。

そのため、人的・部署間の交流をより高めることのできるオフィス環境の仕掛けが不可欠となっていた。
「席をフリーアドレスにしたことで、今ではちょっとしたことでも他部署と相談できるようになりました。従業員同士が交流する局面が増えたことで、部署間のコミュニケーションも活発化していると考えています」(金井さん)

気軽に立ち寄ってコミュニケーションがとりやすいよう、リフレッシュエリアをオフィス中央に配置。(左)
リフレッシュエリアにあるリビングテイストのL字型ソファは、横並びに座る配置でリラックスしやすい構造になっている。(右)

テレワークについてもこれまで取得するための要件があったが、これを機に制度の緩和を図り、特別な要件がなくとも週2回まで在宅勤務が可能になり、自由な働き方ができるようになっている。
「オフィスでもフリーアドレスで自由に働けるし、自分の生活とのバランスもうまくとれる。その両面から働き方を選べるようになっています」(小原さん)
オフィス環境が改善されることは従業員にとってうれしいもの。モチベーションが上がるし、職場への愛着も増していくだろう。小原さんが言う。
「オフィスがきれいになるだけで、従業員が自分達に投資してくれていると感じることができます。今回のオフィスリニューアルで、コミュニケーションも生産性も高まっていると考えています。当社は2029年度には創立100周年を迎えます。今後も従業員の働きやすさを目指して、さまざまな取り組みを行っていきたいと考えています」。

INTERVIEWEES

インタビュアー写真

小原 尚倫  NAOMICHI KOHARA

総務部総務課
オフィスリニューアルプロジェクト事務局

インタビュアー写真

金井 美樹  MIKI KANAI

総務部総務課
オフィスリニューアルプロジェクトメンバー

大日本塗料株式会社

大阪府大阪市中央区南船場1-18-11 SRビル長堀
1929年7月設立。塗料、ジェットインクの製造・販売、各種塗装機器装置の販売・塗装工事などを手掛ける。1936年に旭硝子(現AGC)系列の旭ラッカー製造所を吸収合併し、社名を大日本塗料に改称。橋梁やプラントなどの構造物分野でトップシェアを誇る総合塗料メーカーで通称「DNT」。東証プライム市場。創業からの重防食技術でVOC(揮発性有機化合物)や構造物のLCC(ライフサイクルコスト)を削減、一貫した「塗装システム」を提案するのが強み。従業員数は704名(連結:2,496名)。

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