MUFGは2025年10月、国立競技場のナショナルスタジアムパートナーに就任し、新たな社会価値創造に向けた一歩を踏み出した。パートナーと共創しながら、スポーツ界の発展に貢献する方針だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、国立競技場「ナショナルスタジアムパートナー」第1号となるトップパートナー契約を締結。ネーミングライツも取得し、2026年1月から国立競技場の呼称が「MUFGスタジアム」となった。すでに多くの来場者から親しまれ始めている。契約期間は2026年1月1日~2030年12月31日の5年間となる。
MUFGスタジアムエンブレムは、国立競技場の建築意匠に込められた「調和と循環」の思想がモチーフ。紅色のオーバルには、スタジアムで生まれる感動と記憶が社会へと広がり、次の時代へ受け渡されていく願いが込められている。MUFGのパーパス「世界が進むチカラになる。」に呼応し、共感と希望の輪が広がっていく未来を象徴するシグネチャーとなっている。
「ナショナルスタジアムパートナー」とは、スタジアムの新たな社会価値を生み出していく共創の仕組み。国立競技場の公共性を守りながら、パートナー同士の知見やアセットを互いにかけ合わせることで、社会課題の解決や地域活性化に寄与することを目的としている。
MUFGでは国立競技場の歴史と伝統を継承し、さまざまなステークホルダーとともに、スポーツやエンターテインメントの発展ほか、次世代育成、環境保全、文化交流、地域連携、事業共創などの活動を活発化していく方針だ。MUFG/三菱UFJ銀行経営企画部スポーツ・スタジアムビジネス共創室調査役の安藤 豪規さんは、その目的を次のように語る。
「スポーツ産業における優位性は三つあると思っています。一つめは、筋書きのないドラマによるエンターテインメント性。感動を根源的価値としているスポーツ産業は、AIによる代替ができない産業だと考えています。二つめは、都市や地方を含めた、交通や都市開発、物流などあらゆる産業と接続している点です。そして、三つめが、粘着性の高い半永久的なファンベースが各地で根差していることです。これが全国レベルで分布しており、恒常的に興行の前後で人流や商流が発生します。こうした優位性をもとにパートナーと共創し、金融機関単体ではできない新たな価値やつながりを生み出していきたいと思っています」
MUFGのパーパスと重なる
チームワークや挑戦を体現するスポーツの価値観
MUFGは2022年度から、Japan Rugby League One(リーグワン)のプリンシパルパートナーを務めるほか、三菱UFJ銀行としても公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)や、公益社団法人SVリーグ(SVリーグ)などに協賛してきた経緯がある。
MUFGスタジアムの運営主体は株式会社ジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメント(JNSE)が担当しており、MUFGは他のパートナーと知見やノウハウを生かしながら、国立競技場という「場」を通して、JNSEとともに最大限魅力を発揮していくことを目指す。
MUFGでは、MUFGのパーパス『世界が進むチカラになる。』を体現するため、スタジアムという体験や感動を生み出す「場」を使い、世の中により分かりやすく社会に貢献する姿勢を示したいと考えている。社内でもトップパートナーへの就任は、会社が変わっていく実感があると好意的に受け止められているという。
今回の協賛は、ネーミングライツの取得を目的としたものと捉えられがちだが、MUFGではJNSEとの共創パートナーとしてさまざまな取り組みに関わっていく狙いがある。今後の具体的な取り組みとして、「ICT(情報通信技術)などの先端設備の導入や技術開発支援と実証実験」「スタジアムの人流と商流を生かす新たな事業価値の創出」ほか、それらの実現を目指す「アクセラレーション活動などの展開」や「産官学さまざまなコミュニティーへの接続」を構想している。また、「国立競技場の発展事例を全国のスポーツ施設へ展開し、地域社会の活性化を意識したスポーツ産業の底上げ」も目指していくという。
「人々の希望と感動が交差する場」として、
国立競技場の価値向上と社会課題の解決を重視
MUFGは、社員向けの福利厚生施設を一般に公園として開放した「MUFG PARK」や、スポーツを起点とする次世代支援の仕組みである「MUFG ONE PARK」など、社会課題解決の場づくりに関するノウハウを活用しながら、地域の声も反映した、スタジアムの活用アイデアをJNSEと連携して実現していく。
また、ホスピタリティエリアに伝統工芸作品を展示するなど、MUFGが手がけてきた文化継承の取り組みである「MUFG工芸プロジェクト」をかけ合わせることで、スポーツを通じた次世代支援に加え、地方創生や文化継承の発信基地としてもスタジアムを活用し、日本の価値をグローバルに発信。さらに、スポーツに関わる人々のみならず、子どもから大人までのライフ&キャリアの設計や、金融経済を学ぶ場としてスタジアムを活用することも検討している。
「ほかにもお客さまをご案内するかたちでのスタジアムツアーを実施したり、スタジアムを活用したビジネスマッチングを企画したり、お客さまとスタジアムの接点を増やすような取り組みも検討しています」(安藤さん)
これから新たな社会価値をどう生み出していくのか。最後に安藤さんからMUFGスタジアムの取り組みへの意気込みを聞いた。
「私達にとって、スポーツは知見がまだ浅い領域であり、非常にチャレンジングな取り組みだと考えています。今後も地域や社会の皆様のご意見を伺いながら、活用アイデアを見いだし、皆さまと一緒にスタジアムをつくり上げていきたいと思っております」。
これからMUFGスタジアムはどのように進化していくのか。三菱グループ各社でもアイデアがあれば、ぜひ連絡してほしいという。
写真はイメージです。
INTERVIEWEE
安藤 豪規 KOKI ANDO
経営企画部
スポーツ・スタジアムビジネス共創室
調査役
三菱UFJ銀行
1919年8月設立。国内最大級の総合金融グループMUFGの中核銀行。資本金1兆7,119億円、従業員数は31,427名、支店は国内415、海外10(2025年3月末現在)。MUFGは東京、名古屋、ニューヨークの各証券取引所に上場している。傘下には三菱UFJ銀行ほか、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングス、三菱UFJニコス、三菱UFJアセットマネジメント、アコムなどを持つ。東京・丸の内にある本店ビルは建て替え中で、2030年の竣工を目指している。