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2026.08.06

三菱プレシジョン

Mitsubishi Precision Company

宇宙産業を変革する!
三菱プレシジョンが開発中の「自律飛行安全用統合航法装置」

ロケットが計画通りのコースを飛んでいるかを監視し、異常が発生した際や、地上に落下する恐れが生じた場合に、飛行を停止させるなどして事故を未然に防ぐ。こうした危機管理・安全確保システムを「飛行安全システム」という。現在、このシステムが転換期を迎えている。

新たな飛行安全システム用機器開発のプロジェクトマネージャーを務める鎌倉事業所 防衛・宇宙統括部 宇宙機器部 宇宙輸送機器課の山田 琢也さんと、事務方として企画提案段階から支えてきた営業本部 防衛・宇宙事業部 宇宙営業部 宇宙輸送機器営業課の塩野入 祐真さんの二人に、プロジェクトの状況と未来への展望を聞いた。

高頻度の打ち上げに対応する
「自律」への転換

山田さんと塩野入さんが携わっているのは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「宇宙戦略基金」事業に採択され、2024年12月から開発中の「自律飛行安全用統合航法装置」だ。

もともと2015年まではロケットの飛行には地上の大規模な設備が欠かせなかった。レーダー局がロケットを追いかけて位置を特定し、地上から指令を送ることで安全を確保していたのである。しかし、レーダー局を維持するためには膨大なコストと労力がかかる。そこで、地上レーダーに頼らず、ロケット版の紛失防止タグともいえるGNSS(全球測位衛星システム)を使って位置を特定する航法センサが導入されるようになった。

ロケット飛行安全システムにおける統合航法装置の位置づけ。

これによりロケットの位置は自動で特定できるようになったが、それでもまだロケットの安全を監視し、指令を出すためには地上局が必要だった。そして今、宇宙開発はさらなるステップへと踏み出そうとしている。それが「自律飛行安全機能」である。山田さんは、その意義を次のように語る。

「ロケットに異常が起きた際、これまでは人が地上から行っていた飛行中断の判断を、ロケット自身が自律的に行う。それが自律飛行安全機能です。現在、民間ロケットを含めて打ち上げ頻度が飛躍的に高まっており、JAXAが持つ既存の地上局だけでは対応しきれなくなっています。そこでこのシステムを確立することが、今後の宇宙開発に求められています」(山田さん)

小型化・低コスト化によって
宇宙産業開発をさらに加速させる

さらに、このプロジェクトのすごい点は、通常は別々のコンポーネントとなる位置特定のための航法センサ機能と自律飛行安全機能を一つのユニットに統合することである。

「統合することで、大幅な小型化・軽量化が可能になります。小型になればスタートアップの小型ロケットにも搭載することができますし、軽くなることで人工衛星などの荷物をより多くロケットに載せることができ、打ち上げコストの削減もできます」(山田さん)

さらに、さまざまなロケットに搭載できる汎用的な機器を目指して設計している。これは「宇宙機器はそのロケット専用の“一点物”」であるこれまでの常識を覆すものとなっている。汎用化をすることで個別のロケットへの適用時における開発期間が大幅に短縮されて開発コストが下がるほか、民生部品の積極採用などにより、機器そのもののコストも従来のロケット専用機器などに比べて最大半額程度に抑えることができるという。急増する小型ロケット事業者にも採用しやすい小型化、低コスト化の実現は、日本の宇宙産業全体の競争力に直結する。

しかし、前例のない初めてづくしの開発だけに、さまざまな課題もある。とくに、ロケット事業者によって異なる仕様や考え方を、一つの機器に落とし込んでいく作業は困難を極める。

「どこに適応させるか、お客さまをはじめとする多数のステークホルダーの意見を慎重に聞きながらバランスを整えていく開発は、難しくもありまた楽しくもあります」と山田さんは語る。事務方を務める塩野入さんも、新しい枠組みゆえの苦労を明かす。

「宇宙戦略基金という枠組み自体が、我々にとってもJAXAにとっても初めての運用でした。一期採択ということもあり、事務手続きや報告のマイルストーンなど、あらゆる面で正解がない。手探り状態で最適解を見いだしながら進めてきました。これまでの宇宙事業の知見だけではクリアできない部分もあり、お客さまと密に相談を重ねながら進めています」(塩野入さん)

伝統の「実績」と
若き「柔軟性」の融合

困難なプロジェクトを支えているのは、長年ロケット向けの機器を手がけ、日本の宇宙開発を支えてきたという自負と、新しい世代のエネルギーだ。自社の強みについて、二人は次のように分析する。

「当社は日本の宇宙開発の初期から携わってきたので、航法センサにおいても確かな実績がありますし、堅実で伝統的な開発方法をよく知っています。一方で、このプロジェクトのチームには20代、30代の若いメンバーも多く、これまでの『あたりまえ』にとらわれず、ベンチャー企業の開発方法に対応することもできます。堅実さと柔軟性、この両方のバランスを知っていることが、我々の強みだと感じています」(山田さん)

「長年の経験から、JAXAさんや各ロケット事業者さんとの間に信頼関係の土台ができていることは大きな財産です。共通言語ができあがっている状態なので、解決すべき課題の認識を共有しやすい。」(塩野入さん)

打ち上げの「一瞬」に
すべてをかける

人工衛星などを運ぶ基幹ロケットの開発には数年の月日を要するが、実際に飛行するのは衛星を軌道に送り出すまでの数十分ほど。三菱プレシジョンはそのわずかな時間のために心血を注ぐ。

「機器開発そのものは地道な作業の連続です。絶対に壊れないという信頼性を追求することは非常に難しい。しかし、ロケットが飛ぶその一瞬にかける仕事には、大きなやり甲斐があります。この自律飛行安全用統合航法装置によって、ロケットの打ち上げを増やすことができれば、これほどうれしいことはありません」(山田さん)

「試作品から実際にフライトができるようになるまで、開発には4年も5年もかかります。事務的な調整やスケジュールの壁を乗り越えた先にある成功は、一瞬のできごとです。しかしその一瞬にかけることこそが、この仕事の醍醐味。三菱グループのなかでも宇宙事業を扱っている数少ない会社として、さらに社会に貢献していきたいです。今回の統合航法装置の開発は、その大きな柱になると確信しています」(塩野入さん)

INTERVIEWEES

インタビュアー写真

山田 琢也  TAKUYA YAMADA

鎌倉事業所 防衛・宇宙統括部 宇宙機器部 宇宙輸送機器課

インタビュアー写真

塩野入 祐真  YUMA SHIONOIRI

営業本部 防衛・宇宙事業部 宇宙営業部 宇宙輸送機器営業課

三菱プレシジョン株式会社

東京都港区港南1-6-41 芝浦クリスタル品川8階
フライトシミュレータと航法装置の設計・製造会社として1962年に発足。現在では、シミュレーションシステム、航空・宇宙機器、パーキングシステムの3事業を中心に、安全・安心・快適な未来社会実現のため、社会インフラのアップデートに貢献している。

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