日本のスマートホームはアメリカや中国などに比べ、大きく遅れている。三菱地所は住宅事業グループから総合スマートホームサービス「HOMETACT」を分社・独立させ、日本の住まいと不動産業のDXを推進する。
三菱地所は、住宅事業グループの新規事業として推進してきた総合スマートホームサービス「HOMETACT」事業を、さらなる成長・拡大を目的に分社化し、新会社「株式会社HOMETACT」として2026年4月1日より事業を開始した。
新会社は、三菱地所が2021年11月にサービス提供を開始した総合スマートホームサービス「HOMETACT」の開発・運営を行う事業会社で、専用アプリやスマートスピーカーを使ってスマートロックやエアコン、照明といった複数メーカーの幅広いIoT機器をまとめて操作・管理できる総合スマートホームサービスを展開する。
「日本の不動産に、選ばれ続ける力を。」を新たなコーポレートメッセージとして掲げ、スマートホーム技術によって暮らしの利便性や快適性を高め続けることで、不動産の新たな価値創出と資産価値向上を実現していく。
その大きな特徴は、メーカーやブランドの垣根を越えて住宅設備機器や家電を連携させるオープンプラットフォームとして、最新機器・ソリューションと自由自在に連携できること、そして、そのオープンな立ち位置を生かして、総合商社的な立場で対象不動産のアセットタイプに合わせた機器販売や物件価値を最大限高めるためのコンサルティング・導入支援を行える点にある。不動産開発における商品価値の最大化と不動産管理の効率化を同時に実現し、賃料下落に悩む地方都市などの物件を中心に、コンサルティングや機器の代理販売も展開していく。これによって、不動産オーナーや不動産事業者に資産価値の向上と管理運用効率の改善を図っていく。同社代表取締役共同代表COOの橘 嘉宏さんはこう語る。
「日本の住環境はここ20年、大きく進化していません。とくにIoT・スマートホームの導入において日本は大きく遅れています。BtoBtoCで企業向けに展開していくサービスとして、スマートホーム市場をつくっていくのが狙いです。まさに住環境のソフト面を担い、日本の住文化を進化させる“住みごこちのDXインフラ”を目指しているのです」
日本のスマートホーム市場は
2034年までに3兆円規模に拡大
事実、日本のスマートホームの普及は、アメリカや中国などに比べ遅れていた。しかし、最近は日本でもIoTやAIの発展に伴って、スマートホーム関連機器の普及が進み、住宅設備機器の遠隔操作やホームオートメーション機能に加え、スマートスピーカーによる音声操作や見守り機能、エネルギーマネジメントなど、スマートホーム技術に関連するさまざまな機能へのニーズが高まっている。
こうした日本のスマートホーム市場は2034年に3兆円規模まで拡大すると予測されている。その一方、メーカーや機器ごとに設けられるアプリや仕様の違いにより、高まるニーズに統合的に応える仕組みは十分に整っておらず、不動産業界も導入効果や運用難易度に悩まされるケースが少なくなかった。橘さんは続ける。
「今、スマートホームは住宅業界ができる唯一の価値向上施策になっているといえるでしょう。スマートホーム化はコスパよく入居者の体験を向上できる施策であるため、今後ますます物件のスマートホーム導入は進んでいくと見ています」
不動産業界では、物件の差別化や収益性向上にあたり、ハード・ソフト両面での付加価値創出が重要な課題となっている一方で、資材価格や人件費の高騰により開発・運営コストは上昇しており、付加価値創出とコストマネジメントを両立させられる商品・サービスが求められている。
三菱地所は総合デベロッパーとしての知見とネットワークを最大限に活用しながら、ITエンジニアなどの専門人財の確保による事業推進力の強化、意思決定の迅速化や積極的な外部アライアンス構築を目的に「不動産業界が採用しやすいスマートホームサービス」の先駆けとして株式会社HOMETACTを本格展開していく。
「HOMETACT」の導入件数は、毎年200%で成長中!
2032年に契約数20万戸を目指す
連携パートナー企業数。
新会社の「株式会社HOMETACT」では、すでに実績を積み上げている。これまでに連携メーカー30社、接続可能機器数は200種類以上に成長しており、導入エリアも全国45都道府県、導入企業数は200社に広がっている。新築・既築を問わず、賃貸マンション・アパート、分譲マンション、注文住宅や建売戸建、リノベーション・買い取り再販に至る多様な物件で導入が進んでおり、幅広い不動産業界のニーズに対応している。実際、2025年度末で総契約数は6,800戸だったが、新会社スタートから3カ月で1,000戸超を積み増している。今年度末には1万戸は達成できると見ており、2032年には20万戸を目指す。
「HOMETACT」は機能拡張とサービスの高度化も継続的に進めている。エネルギー管理機能「HOMETACT Energy Window」では、電力使用量などを“窓“から見る風景の移ろいとして可視化するとともに、機器の自動制御による省エネ機能のアップデートを実施し、居住者に負担なく快適な暮らしとエコアクションの両立を支援していく。
Energy Window。
「HOMETACT」を導入した全国の賃貸物件では、物件価値の向上により賃料が上昇した事例が多数生まれている。新築に限らず、既築物件でも利便性の向上による大幅な賃料UP(最大30%超)を実現しており、空室期間の短縮と高い経済効果を発揮している。入居者からの評価も高く、「HOMETACT」を物件選びの重要なポイントとして評価するなど、住まいの利便性向上や安心・快適な暮らしを支えるサービスとして支持が広がっている。
このように暮らしの質の向上と不動産の新たな価値創出を推進する「HOMETACT」。今後は、スマートホーム技術を活用し、ホテルなどの宿泊施設、介護施設、病院・クリニックなど住宅以外の展開も進めていく。また、パートナー企業との共創による新たなサービス創出やデータ活用を推進し、不動産事業者の運営効率化や新たな付加価値の創出に貢献していく方針だ。最後に「株式会社HOMETACT」にかける意気込みを橘さんは次のように語る。
アセットタイプの拡大。
「HOMETACTを新たな日本の住宅インフラにしたいと考えています。HOMETACTは都心エリアだけで成果が出るサービスではなく、全国45都道府県で物件の付加価値向上を実現しています。これまで三菱地所が長年にわたり築き上げてきたノウハウと最新のテクノロジーを掛け合わせて、不動産業界のDXと地方活性化を促し、日本の不動産市場全体に大きなインパクトを与えていきたいと思っています。」
INTERVIEWEE
橘 嘉宏 YOSHIHIRO TACHIBANA
代表取締役
共同代表COO
株式会社HOMETACT
2026年1月設立。総合スマートホームサービス「HOMETACT」の提供ほか、住設機器・スマート家電との連携に係る企画・開発、住宅・不動産事業者向けソリューションの開発・提供、エネルギーマネジメントサービスの提供などを手がける。