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2025.09.25

UBE三菱セメント

Mitsubishi UBE Cement Corporation

UBE三菱セメントがブラックペレット事業を推進
神戸製鋼所と共同事業化に向けた検討を開始し
カーボンニュートラル(CN)をさらに加速

バイオマス燃料のひとつであるブラックペレット。独自の技術開発によって2019年からブラックペレットを製造しているUBE三菱セメント株式会社は、2025年5月に株式会社神戸製鋼所(以下「神戸製鋼所」)との共同事業化の検討を開始した。ブラックペレット事業を推進するメリットとは何だろうか。

UBE三菱セメント(以下「MUCC 」)は、現在注目されているバイオマス燃料のひとつである、ブラックペレット事業の検討を進めている。
ブラックペレットとは、日本でも一般的なバイオマス燃料である木質ペレット(ホワイトペレット)を特定の条件で炭化した、石炭と同等の発熱量を有する燃料で、同社独自の技術開発により、MUCCトレファイドペレット®という名で商品化。CO2削減に向け、火力発電所などで使われる石炭の代替可能なバイオマス燃料として検討を進めている。
MUCCでは2019年からブラックペレットを製造しており、その全量をMUCCの発電所で使用してきたが、2025年5月に神戸製鋼所とのブラックペレット事業に関する共同事業化検討を発表。神戸製鋼所は、ブラックペレットを発電所向けだけでなく、製鉄原料としても使用することを検討しており、MUCCのブラックペレットの利用拡大が見込まれている。

MUCC環境エネルギー事業部エネルギー企画部企画室主幹兼再生エネルギー事業推進室主幹の橋本 渉さんはこう語る。
「今回ご紹介するブラックペレットは、石炭に替わる燃料という位置付けとなります。現在、北米から輸入したホワイトペレットを原料とし、当社独自の技術でブラックペレットを製造しており、生産規模としては国内最大級で、約5年の運用実績があります。この製造技術を用いてまずは当社の発電所での使用拡大の検討を進めますが、将来は全国のお客さまへの供給も検討していきたいと考えています」

バイオマス燃料としての
ブラックペレットの有用性

そもそもバイオマス燃料は木材や農業残渣、食品廃棄物など、生物由来の資源を原料とした燃料で、化石燃料と異なり再生可能なエネルギー源として注目されてきた。燃焼時にCO2を排出するも、原料となる植物の成長過程で光合成によってCO2を吸収するため、全体としてCO2の排出量をプラスマイナスゼロにする「カーボンニュートラル」燃料として扱われてきた。もともとMUCCは歴史的に石炭の取り扱い経験が多いこともあり、同じ固体燃料である環境にやさしいバイオマス燃料の開発に積極的に取り組んできた経緯がある。

一般的な木質ペレットとMUCCトレファイドペレット®の違い。

そのバイオマス燃料のひとつであるブラックペレットとは、どのような性質を持っているのか。これは木質バイオマスを低酸素濃度雰囲気において、比較的低温度で焙煎(トレファイド)して得られる固体燃料で、焙煎しない木質ペレット(ホワイトペレット)に比べて耐水性、粉砕性を大幅に向上させたカーボンニュートラル燃料となる。
では、ホワイトペレットとブラックペレットにはどんな違いがあるのだろうか。ホワイトペレットは、耐水性がなく、屋外保管すると雨水により膨潤して粉に戻ってしまい貯蔵ができないため、屋内倉庫が必要となる。また粉砕性が悪く、石炭との混合粉砕では、数%までしか粉砕できない。実際は1~2 cal.%でしか運用できず、混焼量が少なくなってしまう。

一方、ブラックペレットは耐水性を発現し、雨水と接触しても粉に戻らず形状を保持できるため、屋外保管が可能だ。また、石炭ミルで全量粉砕し、発電所で10 cal.%を超えた混焼を実証している。
「また、これまで当社での運用実績により、自然発火などの管理や対策がホワイトペレットと比較して容易であることが実証されており、リスクが低く安全に利用できます。2019年12月に稼働した当社の山口県宇部地区にあるブラックペレット製造設備では年間6万tを製造しており、自社の火力発電所において石炭と混焼使用しています」(橋本さん)

山口県宇部市のMUCCトレファイドペレット®製造工場。

少ない設備投資で利用できる
ブラックペレットの利便性

これまでホワイトペレットを石炭火力発電所で石炭と混焼する場合には、専用のハンドリング設備が不可欠だったが、MUCCトレファイドペレット®(MUCCが製造するブラックペレットの商品名)は石炭と同等のハンドリング特性を有しており、石炭との混焼が容易で木質バイオマス専用のハンドリング設備が不要だ。つまり、従来の石炭と同じように使用することができるため、設備の更新が不要で少ない追加投資で使用できる。
また、ホワイトペレットに使用する木材は、森林の健全な成長を目的に間伐された木材や、製材工程でやむを得ず発生してしまう端材やのこくず、その他の十分に活用されていない木材を使用するため、自然環境への影響を最小限化しており、カーボンニュートラルな原燃料と位置づけられている。

今後CO2削減に向けて、ブラックペレットの使用は拡大していくのだろうか。橋本さんが言う。「国内では2050年のCN社会実現に向け、これから石炭などの化石燃料に代わり、水素やアンモニアなど新たな燃料の活用が検討されています。しかし、まだまだ技術的な難易度は高いといえます。そうしたなかで、CO2削減対策として少ない設備投資で使用できるブラックペレットの活用は、現実的な対策としてますます求められていくと考えています」。

CO2削減を目指した燃料の選択肢はいくつかある。そのひとつであるブラックペレットの普及もこれからとなる。
「ビジネスとして拡大していくためにも、今回の取り組みをその第一歩としていきたいと考えています。今後は北米産に加えて、東南アジア産のホワイトペレットの活用も視野に入れ、原料の選択肢の幅を広げていくとともに、技術開発も続け、ブラックペレットの供給体制の改善や製造コスト削減にも努めていきたい。これからも再生可能エネルギーの開発を進め、より社会に貢献できる取り組みを行っていきたいと思っています」。

INTERVIEWEES

インタビュアー写真

橋本 渉  WATARU HASHIMOTO

環境エネルギー事業部
エネルギー企画部企画室主幹
兼 再生エネルギー事業推進室主幹

UBE三菱セメント株式会社

東京都千代田区内幸町2-1-1
三菱マテリアルとUBE(旧宇部興産)が両社のセメント事業およびその関連事業などの統合を行い、2022年4月営業開始。略称はMUCC、連結従業員数は7,872人(2025年3月末現在)。国内・海外のセメント事業および生コンクリート事業、石灰石資源事業、環境エネルギー関連事業(石炭事業、電力事業、環境リサイクル事業)、建材事業などを手掛ける。グループ企業は110社にのぼる。

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