各社のトピックス

2025.11.27

三菱UFJ証券ホールディングス

Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co.,Ltd.

デジタルアセットプラットフォーム「ASTOMO」を
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が10月より開始

新NISAなどの資産形成気運の高まりを受け、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が新たにデジタルアセット事業に乗り出す。その狙いと目的とは何か。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券が2025年10月よりデジタルアセット事業である「ASTOMO(アストモ)」をスタートさせた。現在、デジタルアセットはブロックチェーン技術を基盤として取引や管理が行われ、透明性やセキュリティが高いことから、金融市場や企業活動でその市場規模が急速に拡大している。税制改正や社会的リターンの重視、新NISAによる資産形成気運の高まりなども受け、大きな一歩を踏み出した。

同社では、実物資産をブロックチェーン上でデジタル化したセキュリティトークン(以下、ST)について、フィンテック企業のスマートプラスが提供する証券ビジネスプラットフォーム「BaaS(バース):Brokerage as a Service」を活用し、共同運営でデジタル証券取引サービスを行っていく。まずは不動産STから取り扱いを始め、事業会社などの発行体に幅広い資金調達の機会を提供するとともに、投資家に対して新たな投資機会を提供していく。
同社を含むMUFGグループでは、デジタルアセット領域において、今後グループが有する資産も含めた新たなアセットのST化やステーブルコイン、トークン化預金などを活用したデジタル事業の可能性を追求し、高度化・多様化するお客さまのニーズに新たな価値と体験を提供していく方針だ。同社経営企画部デジタルアセット戦略室長の福永 亮氏はこう語る。

「これまで証券会社はおもに株式、債券、あるいは投信、ファンド、REITなどを展開してきましたが、ブロックチェーンを活用することで新たなアセットを取り扱えるようになります。既存の有価証券だけでなく、プライベートアセットも含めてSTという有価証券にできるのです。今後、企業には幅広い資金調達手段を、投資家には新しい投資機会を提供したいと考えています」

デジタル証券ネット販売サービス
「ASTOMO」

ASTOMOのサービス提供概略図。

ASTOMOとは「お客さまのよりよい明日をともに作りたい」という思いから、命名された。お客さまのポートフォリオに厳選されたデジタル証券を加えることで、新たな資産形成の提供を図っていく。

実際のASTOMOのサービスの流れとしては、まず同社が期中分配金と満期償還金による資産形成を期待できるデジタル証券をプロの目線で厳選。その後、同社はスマートプラスに販売管理を委託し、お客さまはスマートプラスとの間で口座開設申し込みや口座管理、実際の取引のやりとりをスマホで行っていく。併せて同社もお客さまに対し、情報提供を行っていく。10万円から投資できるため、富裕層だけでなく、個人投資家もアクセスしやすくなっている。同社経営企画部デジタルアセット戦略室次長の橋本 史絵氏もこう述べる。

「ブロックチェーンによってホテルや物流施設など、これまで個人では投資が難しかった不動産などを小口化することで身近な存在となり、まさに明日からでも資産運用できるようになりました。インフレが進むなかでの投資機会として、より幅広い層に利用していただきたいと考えています」

なお、スマートプラスは「BaaS」を軸にしたフィンテック企業で、次世代金融インフラの提供を通して組込型金融を実現するFinatextグループの子会社。証券領域における金融インフラストラクチャ事業を担っている。 「フィンテックのパイオニア的存在で、システムは非常にライト。この基盤は証券会社でも作ることが可能です。しかし今後さまざまなアセットを扱うときに、開発も含めてアジャイルに対応していきたい。そんな狙いもあり、協働することにしました」(福永氏)

MUFGの強みを生かし
「資産運用立国」を実現していく

セキュリティ・トークン(ST)の特徴。

STはブロックチェーン上で発行・管理されるデジタル化された有価証券を指し、金融商品取引法において「電子記録移転有価証券表示権利等」として規定されている。不動産STは不動産関連資産を裏付けとしてブロックチェーン上で管理・発行される有価証券となる。
2025年8月までのSTの累積発行額は2,628億円、うち不動産STは2,333億円と拡大中で2025年以降は組成額・案件数ともに大きく伸長し、2030年には累計額2.5兆円まで拡大すると予測されている。実際、足元では官民を挙げてのST市場の整備や拡大の動きが進んでおり、業界全体であと押ししていく。プライベートアセットを中心としたST化やユーティリティトークン(UT)による特典の付与などが進むことにより、新たなマーケットが誕生し、債券など伝統的有価証券領域でも既存商品からの置き換わりが徐々に進む可能性がある。証券会社にとって変化は脅威である一方で、変化に応じた顧客ニーズに潜在的なビジネスチャンスを見出すことができる。

同社ではデジタルアセット事業を中期経営計画の重点戦略施策と位置付け、MUFGの強みを生かし、組成から販売に係るバリューチェーンの構築を目指していく。同時に既存商品やサービスに捉われない新たな事業ポートフォリオの構築を進め、プライベート領域を中心とした国内外の資産運用機能の強化を図り、「資産運用立国」実現への貢献に注力していく。

「将来的には航空機や船舶などもブロックチェーンによって投資対象にできると考えています。お客さまに新しい商品を提供すると同時に企業にも新たな資金調達手法を提供していきたいと思っています」(橋本氏) 「ブロックチェーンによってデジタル化できるものは将来的にはどんどん増えていくでしょう。そのときにこそ、MUFGの総合力をもってニーズに対応していきたい。これからやってくる新たな世界で私達の役割を果たしていきたいと考えています」(福永氏)。

INTERVIEWEES

インタビュアー写真

福永 亮  RYO FUKUNAGA

経営企画部
デジタルアセット戦略室長

インタビュアー写真

橋本 史絵  FUMIE HASHIMOTO

経営企画部
デジタルアセット戦略室
次長

三菱UFJモルガン・スタンレー証券

東京都千代田区大手町1-9-2大手町フィナンシャルシティ グランキューブ
MUFGグループの中核総合証券会社。従業員数は5,688名(2025年3月31日現在)。MUFGが60%出資し、モルガン・スタンレーが40%出資するMUFGの連結子会社。同社の強みは、三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行などグループ各社と協働し、多様な金融商品やサービスなど、さまざまな金融ニーズにワンストップで対応できること。また、モルガン・スタンレーの世界42カ国のネットワークを最大限に活用できることも大きい。

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