国内初の取り組みとなるリサイクル金属ブランド「REMINE」を展開する三菱マテリアル。情報の透明性と追跡可能性を高め、資源循環・環境負荷低減を促す狙いとは?
三菱マテリアルが2024年に立ち上げた国内初のリサイクル金属ブランド「REMINE(リマイン)」が本格化し、注目を集めている。第一弾として「(電気)錫(Sn)」と「(電気)鉛(Pb)」を発売し、現在は「電気ビスマス(Bi)」「白金(Pt)スポンジ」「パラジウム(Pd)パウダー」「三酸化タングステン(WO3-5)」の計6製品をラインアップ。今後も製品拡充を予定しており、資源循環を推進する同社期待のブランドだ。
サステナブルな社会の実現に向け、資源循環・環境負荷低減はますます重視されている。とくに、サプライチェーンにおける原材料情報の透明性や追跡可能性(トレーサビリティ)の確保はステークホルダーへの責任であり、製品の環境インパクトを数値化する取り組みも一層求められている。
こうした社会的ニーズに応えるため2024年1月に誕生したREMINEブランドは、同社が培ってきたリサイクル技術を基盤に新たな価値を創出している。その最大の特徴は国際規格ISO14021に準拠してリサイクル材料含有率を算出し、第三者機関(SGSジャパン)による検証を受けることで、より高い信頼性を確保することにある。同社資源循環事業部事業開発部企画室長の古賀 沙織さんは次のように語る。
「当社と同様にリサイクル材を原料として活用している企業は世界中にあります。しかし、リサイクルしているという事実を客観的に第三者が検証する方法は、これまで採られていませんでした。私達はリサイクルの新たな価値を創出するため、情報の透明性や追跡可能性に特化し、お客さまに安心して価値をお届けする仕組みをつくり、ブランド化することになったのです」
「REMINE」ブランドは
再生可能エネルギー由来の電力で製造
REMINEとは「繰り返し・再び」を意味する英語の「RE」と「鉱山」を意味する「MINE」を組み合わせた造語。ブランドロゴは商標登録済みで、ロゴの赤い丸はメイド・イン・ジャパンを象徴し、ロゴの角度は三菱マークの菱形の角度に合わせてデザインしている。REMINEブランドは、使用済みの製品や工程廃棄物から回収した金属を、再び資源として活かし、リサイクル材料を新たな時代の「鉱山」に見立てるという発想が込められている。金属の価値を次世代へつなぎ、人・社会・地球の豊かな未来に貢献したいという強い願いが背景にある。
REMINEが準拠しているISO14021は「環境ラベルおよび宣言−自己宣言による環境主張(タイプII環境ラベリング)」のための国際規格。この規格には、リサイクル材料の定義、リサイクル材料含有率の算出手法などが明記されており、第三者機関であるSGSジャパンにより検証を受ける。この仕組みとコンセプト自体が日本初の取り組みとなる。
REMINEシリーズ全6製品。
2024年1月、初期ラインアップとして、リサイクル材料含有率100%の「電気錫」と99.6%以上の「電気鉛」を投入。同年12月には第二弾として、リサイクル材料含有率92.2%以上の「電気ビスマス(Bi)」、100%の「Ptスポンジ」「Pdパウダー」「三酸化タングステン(WO3-5)」の4製品を追加した。6つの製品のうち、三酸化タングステンを除く5製品は、再生可能エネルギー由来の電力で製造しており、今後は再生可能エネルギー電力を実質的に100%に高める方針だ。
リサイクルしやすい
循環型社会をつくるために
古賀さんは今回の取り組みは今に始まったことではないと強調する。
「当社は昔から使用済みの電子機器などから金属を回収しており、多くのノウハウや知見を蓄積してきました。ここ5年ほどでサステナビリティが重視されるようになり、お客さまのニーズと当社のリサイクル技術が合致したことで、改めてブランドとして出発することになったのです」
REMINEシリーズの製品の用途は、身近なものから挙げると、錫(Sn)はハンダ、鉛(Pb)は自動車のバッテリー、ビスマス(Bi)はレアメタルのひとつで低融点ハンダとして電気電子機器に利用される。白金(Pt)とパラジウム(Pd)は宝飾品やガソリン車の排気ガスの触媒に使われる。三酸化タングステンは電池材料として利用され、同社加工事業で製造する超硬工具の原料にもなっている。現在、需要が大きいのは錫、生産量では鉛が最多だ。古賀さんはREMINEへの思いを述べる。
「廃棄されたものがリサイクルされ、どんな製品になっていくのか。皆さんはあまりご存じないと思います。たとえば、自分が捨てたノートパソコンがどうリサイクルされ、何に生まれ変わるのかを知っている方は少ないのではないでしょうか。REMINEというブランドを通じて、捨てたあとのことに興味を持っていただけるとうれしいです。」
三菱マテリアルでは、REMINEシリーズ製品の供給を通じて、今後も持続可能な社会の実現に貢献していく。
REMINE専用Webサイト
https://www.mmc.co.jp/remine/
INTERVIEWEE
古賀 沙織 SAORI KOGA
資源循環事業部
事業開発部企画室室長
三菱マテリアル株式会社
1871年創業、1950年設立。従業員数は連結1万8,452人、単体5,315人。同社は三菱グループのルーツである九十九商会の鉱業への進出を出発点とし、150年以上にわたり、日本の近代化に足跡を残してきた。金山で著名な佐渡金山、テレビドラマで有名になった軍艦島などの歴史的な遺産は、いずれも同社の事業によって近代化された。1990年に現在の社名となり、おもに銅製錬・金属加工・地熱発電などの事業を行っている。