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2025.12.18

ローソン

Lawson, Inc.

「地域の暮らしを支えるために」ローソンが推進する「地域共生コンビニ」、
その成功の秘訣と未来

「ローソン八頭町丹比店(イメージ)」(鳥取県)では、地元のスーパーマーケット「エスマート」の協力のもと生鮮食品を調達している。

近年、高齢化や人口減少などを背景に、スーパーマーケットが撤退する地域が増え、高齢者を中心に食料品の購入が不便になってしまった消費者が増加している。農林水産政策研究所によると、2020年の食料品アクセス困難人口(店舗まで直線距離で500m以上、かつ、65歳以上で自動車を利用できない人)は、全国で推計904万人にものぼるという。

このような地域において、ローソンは「地域共生コンビニ」の出店を推進している。この取り組みは、2025年2月、「買物困難者対策に資する新たな流通事業コンテスト」(経済産業省主催)で優秀賞を受賞した。中国・四国地方でプレジデントとして統括業務に携わったのち、現在、地域共生コンビニを含む店舗開発を担当しているローソン 執行役員 開発本部長の髙橋 忠男さんは次のように語る。

「コンビニエンスストアは、スーパーマーケットに比べて商圏人口が少なくても営業が可能で、かつ少人数でも店舗運営が行えます。また、全国に物流網があるという特性も持っています。十分な商圏調査と商品構成を組み立て直すことによって、これまで出店できていなかったエリアにも、自治体や地元企業、地域の皆さまと連携した“地域共生コンビニ”の出店が可能であると考え、取り組みを進めています」(髙橋さん)

地元スーパーと共存共栄し、みんなをハッピーに

地域共生コンビニは、地元からの依頼を受けて、閉店した地元スーパーマーケット跡地に出店することもある。その一例が、2024年にオープンした「ローソン八頭町丹比(やずちょうたんぴ)店」。2023年にこの地域で唯一のスーパーマーケットが閉店したため買い物が困難となり、ローソンが八頭町と連携してその跡地に出店した。通常のローソンと同様に約3,500アイテムの品揃えに加え、野菜や肉、魚など生鮮食品も販売している。もちろん全国のローソンと同様に、郵便ポスト、住民票の交付やチケット発券などのサービスも提供する。

「地元のスーパーマーケットがフランチャイジーとなり、コンビニエンスストアとスーパーマーケットのハイブリッド型の店舗をオープンするケースもあります。こうした生鮮品を扱う店舗では、地元産の食材や食品を仕入れて販売することも多く、地域の名産品を広める発信基地としての役割も担っています。既存の市場を奪うのではなく、ローソンをご活用いただいて地域と共存共栄していきたいという思いで運営しています」(髙橋さん)

2024年にオープンした「ローソン マルショク長浜店」(大分県)。地元スーパーマーケットの運営会社がフランチャイジーとなったハイブリッド型店舗。

ローソンは地域密着を推進するため、全国を8つの地域に分けるエリアカンパニー制を導入している。各カンパニーの店舗開発担当者が、「この地域は生鮮品を買う店がない」「住民票を取得できる窓口がない」といった地域住民の困りごとやニーズを細やかに把握し、出店計画を立てる。「地域ニーズに応じた店舗をつくることで、より多くの人々に喜んでいただける。そうすることで需要を喚起し、ビジネスを拡大させていけると考えています」と髙橋さんは語る。

物流拠点まで約240km、それでも出店が可能な理由

過疎地への出店にあたっては、物流拠点から遠い地域のために商品供給を安定させることが課題となっている。ここでローソンならではの強みとなっているのが、店内でお弁当やサンドイッチなどを調理する「まちかど厨房」だ。

「地域共生コンビニでは、天候不良や災害などで物流が滞った場合でも、まちかど厨房の米や冷凍の材料などがあれば店内で調理したおにぎり、弁当をご提供できるようにしています。常温商品、飲料なども大型倉庫で対応。また、冷凍食品の保管設備も充実させています」(髙橋さん)

たとえば、2023年にオープンした「ローソン稚内栄五丁目店」「ローソン稚内こまどり五丁目店」は物流拠点まで約240kmとかなりの距離があるため、吹雪などで配送が困難なときにはまちかど厨房による商品製造を見据えている。

「ローソン稚内栄五丁目店」「ローソン稚内こまどり五丁目店」(北海道)は、物流が滞っても営業を続けられる仕様の店舗にしている。

また、過疎地では人手不足も深刻だ。ローソンでは過疎地においても店舗が運営できるよう、アバター接客やAIを活用した省人化の取り組みも進めているが、今のところ地域共生コンビニでは地元住民が働き手として活躍しており、労働力の確保には比較的苦労していないという。むしろ雇用創出にひと役買っている面もあるようだ。
とはいえ、スーパーマーケットが撤退する地域への出店である。ビジネスとして成り立つのだろうか。髙橋さんは「その点は心配ない」と自信を持つ。

「既存の建物を活用させてもらうなどして初期投資のコストダウンを図っています。最近では、自治体側から『廃校になった学校跡地を活用できないか』『出店できそうな場所があるので見てほしい』といったご相談が増えています」(髙橋さん)

離島にも出店、今後も地域共生コンビニを推進していく

2025年には、瀬戸内海の離島に「ローソン大崎上島東野店」(広島県)がオープン。フェリーが欠航しても商品の在庫を確保できるよう大型倉庫を備えた。島で初めての24時間営業のコンビニエンスストアとあって、開店初日には大勢の住民が行列をつくり、ニュースにも取りあげられた。「感動です」と笑顔を見せる島民や「都会みたいだ」とはしゃぐ子ども達を見て、オーナーや本部社員も感激したという。

「高齢単身世帯や二人世帯の増加は日本全体の共通課題。ローソンのグループ理念『私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。』のもと、今後も地域共生コンビニをさらにブラッシュアップさせていきます。三菱グループのネットワークのなかで、出店に関するご相談・情報などがあれば、ぜひお問い合わせいただきたいと思っています」(髙橋さん)

INTERVIEWEES

インタビュアー写真

髙橋 忠男  TADAO TAKAHASHI

執行役員 開発本部長

株式会社ローソン

東京都品川区大崎1-11-2
1975年設立。大阪府豊中市に1号店をオープンし、現在は国内外に約2万2,000店舗を展開するコンビニエンスストア。「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」をグループ理念に掲げ、「圧倒的な美味しさ」「人への優しさ」「地球(マチ)への優しさ」を約束し、誰もが「ほっ」とできる「マチのほっとステーション」の実現を目指す。

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