ニコンは、シネマ業界をリードするREDとニコンの技術を融合させた「ニコン ZR」をグローバルで展開している。シネマティックな映像表現をプロ映像制作者から個人映像クリエイターに提供し、新たな市場開拓を図る。
「ニコン ZR」(以下「ZR」)は、本格的な映画制作に携わる人や映像制作会社から、個人クリエイターや学生に至るまで幅広い層がターゲット。2024年にグループ会社となった米RED Digital Cinema, Inc.(以下、「RED」)の技術を融合したシネマ向け製品シリーズ「Z CINEMA」から、シリーズ最小、デジタルシネマカメラとして10月からグローバルで発売している。
「ニコン ZR」
フルサイズセンサーを搭載した「ZR」は、ハリウッド映画の撮影に使われるようなREDのRAW動画収録コーデック「R3D」をベースとして、ニコンのカメラ専用に新たに開発した動画記録ファイル形式「R3D NE※1」を搭載。最大6K 59.94pの撮影にも対応し、カメラ単体での収録が可能となっている。
また、RED機のカラーサイエンスと露出基準を採用し、ハイエンドのRED機で撮影したような色味が簡単に再現できる。ISO800/6400※2の2つのベースISO感度に対応しており、暗い場所での撮影にも強く、15+stopsの広いダイナミックレンジ※3で、さまざまなシーンで最高の映像品質を実現することができる。
音質にもこだわり、内蔵マイクと外部マイクでの32bit float収録にも世界で初めて※4対応。急に大きな音が鳴るような現場でも、あとから編集ソフトで調整することによって音割れを防ぐことが可能となった。さらに内蔵マイクでは、音を収録する方向を5パターンから選べるようになり、シーンに合わせて高音質な音声収録ができる。ハード面では優れた視認性を確保するニコン初の4.0インチ大型モニターを採用しながら、「Z CINEMA」シリーズでは最軽量の約540g※5を達成しており、マイクやモニターなどの外部アクセサリーを別途用意しなくても、ミニマルなシステムで高品質な映像制作を可能としている。同社映像事業部マーケティング統括部UX企画部の加藤 優一さんは次のように語る。
「ZRは、ニコンの技術とハリウッドでも採用されているREDの技術が融合した初めてのコンパクトなシネマカメラです。REDは2005年に設立され、プロフェッショナルユーザー向けに製品を提供。ハリウッドの数々の人気映画でも利用されており、映画制作関係者から高く評価されている会社です。ハリウッド映画のような映像表現が一般の方でも実現可能な、手に入りやすい製品となっております」
ハリウッド映画でも採用されているREDのカラーサイエンスを
一般の方も気軽に取り入れられる
おもな特徴としては、まず REDの色彩科学に基づく「R3D NE」および「シネマティック動画」モードを初搭載していることだ。専門的な言い方をすると、ガンマLog3G10およびガマットREDWideGamutRGBに対応しているため、REDのカラーサイエンスに合わせた露出基準と色を再現できる、ということだが、簡単にいうと、500万円以上もするREDのシネマカメラとほぼ同じ色味が誰でも簡単に出せるということだ。
「R3Dは、今まではごく一部のプロしか使えない技術でしたが、一般に普及されることで、クリエイターをはじめ、映画製作を目指す一般の学生さんにも利用していただければと考えています」(加藤さん)
次に音声面では、世界初の内蔵マイクと外部マイク入力における32bit float収録に対応し、内蔵マイクだけで収録可能なシーンを大幅に拡張。「外部マイク入力だけでなく、内蔵マイクでも32bit float収録に対応し、小さな音から大きな音まで、現場での音量調整をしなくても歪みのないクリアーな音声を記録。インタビューからライブコンサートまで幅広い音源に対応可能となっています」(加藤さん)
これまで外部マイクでも難しかった撮影現場の臨場感をよりリアルに再現するため、前方(鋭)、前方、後方、全方位、バイノーラルの5種類の指向性モードから選択でき、外部マイクを使用しなくても幅広い収録スタイルに対応している。
さらに、現代のカメラに欠かせない高いオートフォーカス性能も兼ね備えている。ディープラーニングを活用したAI技術を駆使することで、被写体をより的確に検出・追従。これによって、より簡単かつ高精度にピントを合わせ続け「撮りたい瞬間」を確実に撮影できる。さらに、人物や動物、乗り物など9種類の被写体をカメラが自動で高精度に検出し、遠くの人物も正確に捉えられる。手ブレ補正機能と合わせて、ジンバルなどを使わない手持ち撮影でもボケや手ブレを抑えた撮影が可能となっている。同社映像事業部マーケティング統括部マーケティング部のバナジ 真勇久さんはこう語る。
「今はSNS普及の影響もあり、プロアマ問わず動画撮影のニーズが非常に高まっています。「ZR」はハイエンドRED機に搭載されている技術の一部をコンパクトなボディーに詰め込んでおり、幅広い方々にぜひ気軽に使っていただきたいと思っています」
市場の既成概念を覆す画期的な製品となってほしい
「ZR」のすごさはまだまだある。一般的に動画の撮影はカメラ内部での処理に負荷がかかるため、熱の排出が設計上の重要なポイントとなる。そうした理由から冷却ファンを搭載しているカメラも多いが、その分サイズが大きくなってしまう。コンパクトさを重視した「ZR」は外装全体で放熱する高効率な放熱設計を採用し、冷却ファン非搭載ながらも高負荷の長時間撮影を可能にした。2時間以上の連続記録にも対応でき、長時間撮影が必要な結婚式やコンサート、インタビュー撮影などでも安心して撮影することができる。
「ファンレスかつ効率的な放熱設計は、とても難易度の高い開発でした。それを乗り越えたことで、よりコンパクトで高性能な製品に仕上げることができました」(加藤さん)
また、カラーグレーディング後のイメージが確認しやすい背面モニター上でのLUTモニタリングに対応。ニコン純正アプリ「NX MobileAir」を使ったFrame.ioの「Camera to Cloud」に対応し、動画データを直接クラウドに自動転送することもでき、撮影後のワークフローも短縮できる。
ほかにも、ニコンで初めて※6、システム拡張性に優れたデジタルアクセサリーシューを搭載。外部アクセサリーを使わずともクオリティの高い映像制作が可能だが、さらにプロフェッショナルな現場に導入したい場合でも実用に耐えうる拡張性を備えている。
フルサイズ機最短16mmのフランジバックを持つZマウントなので、アダプターを介してさまざまなレンズを活用することができるのも、他社機ユーザーにとって大きな魅力のひとつだ。当然、ニコンが誇る優れた防塵・防滴性能と堅牢性も保っている。
ニコンとREDの技術を融合させた「ZR」は、アメリカと日本の全く異なるバックグラウンドのなかから両社で切磋琢磨しながら生まれたアイコニックな製品といえる。
「ニコンにとっては初のダブルネームを冠した製品となっています。REDは映像に関わる人達にとってはハイブランドであこがれの存在。互いにカスタマーファーストの思想を大切にしているので、市場の既成概念を覆すような画期的な製品になったと思っています」(バナジさん)
「プロだけでなく、映画を学びたい学生や一般の方にもぜひ手に取っていただきたい。さまざまな使い方ができますので、デジタルシネマカメラとしていろいろな方にご利用いただければと思っています」(加藤さん)
※1 R3D形式で映像を記録するために、ニコンのカメラ用に開発された専用コーデックです。拡張子は「.R3D」です。
※2 「R3D NE」時。
※3 自社内部測定値。
※4 レンズ交換式カメラにおける内蔵マイク、カメラに搭載された3.5mmミニジャックの音声収録において。
※5 ボディー単体の質量。バッテリー、メモリーカード込み時、約630g。
※6 2025年9月11日現在、発売済みのフルサイズレンズ交換式デジタルカメラにおいて。ニコン調べ。
INTERVIEWEES
加藤 優一 YUICHI KATO
映像事業部
マーケティング統括部
UX企画部
バナジ 真勇久 MAYUKH BANERJI
映像事業部
マーケティング統括部
マーケティング部
株式会社ニコン
1917年の創立以来、光の可能性を追い求め、新たな価値を提供。カメラなどの映像事業、半導体やフラットパネルディスプレイ露光装置などの精機事業、顕微鏡をはじめとするヘルスケア事業、光学素材や光学部品等を提供するコンポーネント事業、光加工機などのデジタルマニュファクチャリング事業を展開し、「お客さまの欲しいモノやコトをお客さまにとって最適な方法で実現」することを目指す。