三菱製鋼のグループ企業で昨年創立50周年を迎えた三菱長崎機工が、主に浮体式洋上風力の関連部材を生産する新工場を長崎市内に新設する。大型化する洋上風力や防衛基盤強化のニーズに対応する狙いがある。
つくるのは風車を支える土台となる「浮体基礎」。投資額は第1期で約30億円、第2期と合わせ総投資額約46億円を投じる。同社としては最大規模の投資となる。150tのクレーンを擁する屋外のクレーンヤードは2026年12月頃、建屋については2027年夏頃には稼働する予定だ。
同社では2016年から洋上風力に関する部材製造を行っている。洋上風力は現在、国内では秋田、青森などで実証実験が進むが、同社では2026年1月より稼働した国内初の浮体式洋上風力発電所「五島洋上ウィンドファーム」(長崎県五島市沖)の浮体基礎を納めた実績がある。現在、浮体式洋上風力は発電効率を高めるために大型化が進んでおり、今回の工場新設はそのトレンドに対応する狙いがある。
新工場が建つのは、海に面している長崎市内の神ノ島工業団地内。本社工場からもクルマで15分と近く、敷地の広さは6.9ha。本社工場とほぼ同じ面積となる。長崎市内には造船業の協力会社が集積しており、洋上風力などの大型部材をつくりやすい。新工場は巨大な部材を組み立てる地域の拠点とする予定だ。三菱長崎機工製造部長の峯苫剛さんはこう話す。
「洋上風力の柱の部分はこれまで2MWで製品径が約8mほどでしたが、今後は15~20MW級と大型化が進みます。これは世界的な流れとなっています。当社工場のクレーンは100t、180tに対応していますが、それ以上の大きさをつくるのは難しい。また、防衛関連分野のニーズも高まっており、それに対応する能力を高めていきたいと考えています」
2026年1月現在の敷地
浮体式洋上風力は
今後大型化が進む
そもそも洋上風力には、着床式と浮体式の2種類ある。海底に固定する着床式は、水深10~60mの近海で採用され、水深60m以上では浮体式が使われる。日本では遠浅(水深60m以下)の海域が少なく、構造物を海底に固定できる場所は限られる。
そのため、水深100m以上となる五島市沖の浮体式では、円筒形の長い浮体を垂直に浮かべ、下部に重り(バラスト)を入れて重心を下げ、深海でも高い安定性を保つ基礎形式であるスパー式が採用された。風車の羽の最頂点から水面下までの全長は約176m、重さは約3,500tもの巨大さとなる。3,500tと言えば、海上保安庁が運用する大型巡視船と同程度の重さだと考えればいい。
(c) 2019 Goto City.
風車の中心の回転軸から水面までは約60m、水面下では約76mもの長さとなる。浮体の基礎となる部分は鋼とコンクリートで構成されており、安定性の高いものとなっている。浮体式は、「起き上がり小法師」のように重心が下方にあるので、風で風車がどんなに傾いても起き上がり、もとの状態に戻るよう設計されている。台風のときでも、風向きと平行になって風を受け流し、風車の回転を停止させる。「浮体式」であれば水深の深い沖合にも設置でき、景観ほか、風車騒音が及ぼす日常生活への影響も最小限に抑えることができる。
「洋上風力にもさまざまなタイプがあり、大型化は急速に進んでいますが、それに対応できる企業は国内でも少なく、1つの会社でできる規模を超えつつあります。当社も多くの会社と協力しながら今回の大型化への対応力を高め、競争力の強化を図っていきます」(峯苫さん)
県内の雇用増進と
協力会社とのコンソーシアムも
三菱長崎機工は2025年で創立50周年を迎えた。同社の前身は三菱製鋼長崎製鋼所で、その源流は1919年発足の三菱造船長崎製鋼所に遡る。1975年に産業機械部門と鉄構製缶部門を主体に三菱長崎機工として独立し、現在に至る。
新工場では浮体式洋上風力の部材生産や防衛関連予算の増額による堅調な需要に応えるとともに、資源リサイクル向け磁力選別機のテスト場も設置していく。同社発祥の地である長崎市内に生産拠点を設けることで、県内外の協力会社とのコンソーシアムを形成すると同時に、地域の課題である若手の雇用増進にも貢献していく方針だ。同社取締役の村山努氏は次のように語る。 「洋上風力も防衛関連も成長分野であり、今後も注力していくとともに、新工場の敷地は広大なので、既存工場ではできないものも含めて活用していきたい。ここ長崎の地から事業の幅を広げ、成長力を高めていきたいと考えています」。
INTERVIEWEES
村山努 TSUTOMU MURAYAMA
取締役上席執行役員
峯苫剛 TSUYOSHI MINETOMA
製造本部・製造部長
三菱製鋼株式会社
創業1917年4月、1949年12月に設立。三菱造船(現・三菱重工)長崎製鋼所として鋳鍛鋼品の製造を開始。現在は特殊鋼メーカーに位置付けられ、日本最古のばねメーカーの系譜を継ぐ。従業員数は3,841人(連結2025年3月末現在)。三菱長崎機工は、グループの機器装置事業を担当し、洋上風力ほか、環境関連、鉄構関連、産業設備の機器の製造を担う。従業員数は350人。長崎県内の長崎市や諫早市に事業拠点が集中している。