各社のトピックス

2026.05.21

三菱電機

MITSUBISHI ELECTRIC CORPORATION

鉄道技術から社会課題を解決、
三菱電機が挑むモビリティインフラシステム事業とは?

1921年の創業以来、100年以上にわたり日本の鉄道インフラを支え続けてきた三菱電機。今、従来の鉄道事業の枠を超えて、現代社会の直面するさまざまな課題に立ち向かっている同社のモビリティインフラシステム事業部 樋口 竜太さん、田村 優季さん、伊丹製作所の進士 晃輔さんに、その想いを聞いた。

日本の鉄道を支える三菱電機が「鉄道」の枠を超えた

三菱電機は創業以来、JR、私鉄、公営を問わず全国の鉄道事業者とともに、安心・安全な輸送の確保や輸送力の増強、省エネルギー化といった各時代の社会課題を解決してきた。樋口さんは、自社の立ち位置を次のように分析する。

「私達が提供しているのは、国内トップクラスのシェアを誇る推進制御装置(VVVFインバーター等)をはじめとした車両用電機品、無線設備、運行管理システム、受変電設備まで多岐にわたっています。鉄道の「走る」「止まる」「制御する」を一社で実現できる唯一無二のメーカーであると自負しています」

日本において鉄道が定刻通りに運行されることは「あたりまえ」のこととして捉えられている。しかし、その「あたりまえ」を維持し続けるには高度な技術が必要であり、三菱電機はその「縁の下の力持ち」の役割を担い続けてきたのだ。

一方で近年、鉄道事業者が直面する課題は、深刻な労働力不足、カーボンニュートラルの実現、そして沿線価値の向上など、単に「電車を動かす」だけでは解決できないほど複雑化している。「鉄道単体ではなく、移動の前後にある駅や街を含め、運行、エネルギー、人流、乗客の体験など社会システム全体を最適化していく取り組みが求められている」と樋口さんは語る。

こうした背景から、同社の事業も従来の「鉄道」という枠を超え、「モビリティインフラ」という広義の視点で展開を図っている。進士さんは次のように語る。

「当社の根幹には、極めて高い安全性と耐久性が求められる鉄道現場で磨き上げたハードウェアと、それらを組み合わせるエンジニアリング力があります。さらに近年はDXに注力し、データを活用した取り組みも進めています。鉄道、ビル、電力といった異なるインフラ分野のデータを連携させ、新たな価値を創出する。現在はその段階的な実装を進めているところです」(進士さん)

鉄道電力を街づくりに活用

新戦略の中心はエネルギーマネジメントだ。同社が提案するソリューションは、カーボンニュートラルという社会的課題の解決を目指し、最終的には鉄道沿線の価値向上までを見据えている。

Urban Mobilityエネルギーソリューション事業

まず、データを分析して電力の無駄を見える化。次に、駅舎補助電源装置や蓄電池を導入し、回生電力を活用して省エネ・省コストを実現する。さらに鉄道路線上の車両、変電、駅舎および基地を含んだ路線全体のエネルギーマネジメントを支援し、最終的には沿線地域を含めた電力供給の最適化の実現を目指す。
実際に東京メトロとの有楽町線飯田橋駅~新木場駅間における実証実験では、データ分析に基づき変電所の電圧を適正化することで、当該区間の使用電力量3%程度の削減効果が得られるという試算が出ている。「これが路線全体や全国の鉄道事業者に広がれば、極めて大きなインパクトになるはずです」と樋口さんが語る通り、カーボンニュートラルに向けた省エネに大きな期待が寄せられている。

目標を共有、組織の壁を越えた挑戦

この極めて複雑で大規模なソリューションを一社で完結できることが、三菱電機の驚くべきところだ。始まりは数年前の樋口さんと進士さんによる「雑談」だった。
「2024年頃、私は車両用電機品の営業、進士は地上設備側の設計と、全く異なる領域にいました。しかし、以前仕事で接点があった私達は、今の社会課題や自社の成長を考え、『新規ビジネスに着手すべきではないか』と意気投合したのがすべてのスタートでした」(樋口さん)

日々、議論を重ね新規ビジネスにたどりついた

この動きが、会社が進めるDX強化の潮流と合致。当初は小人数だったメンバーも、今ではものづくりとエンジニアリングを担う伊丹製作所、神戸製作所、そしてデータ分析を担う横浜の拠点と、三菱電機内で部門横断的に連携した組織へと成長した。

「部門間の連携において、私達は構想に対する『共感』と『腹落ち感』を何よりも大切にしてきました。組織をまたぐ連携は容易ではありませんが、月1回以上の定例会議を欠かさず実施し、目標を常に共有し、一丸となって進めている手応えがあります」(樋口さん)

モビリティインフラを取り巻く社会課題を解決

三菱電機はまた、非鉄道事業の領域においても、モビリティデータを活用した斬新な社会課題解決を模索している。その一つが、田村さんが担当する食品ロス対策サービスだ。たとえば利用者が電車に乗ったタイミングに合わせ、自宅最寄り駅近隣店舗の在庫・割引情報をスマートフォンに通知。店舗の食品ロス削減と、利用者の利便性を同時に高める。

「展示会などで紹介すると、『なぜ三菱電機が食品ロスを?』と驚かれることが多いです。しかし、食品ロスという社会課題を解決し、店舗に新たな販路を提供することは、結果として沿線の魅力を高めることにつながります」(田村さん)

また、観光資源の持続可能性を支える仕組みとして、「瀬戸内国際芸術祭2025」では「応援プラットフォーム」の実証実験を行った。魚型の木札を販売する自販機を設置し、観光客が気軽に寄付を行えるようにするものだ。木札にメッセージを記入して実行委員会に届けることで、観光客の「応援したい」という想いを可視化する。

「単なる通過点であった場所を『応援したい場所』に変えることで、新たな移動が生まれ、地域が活性化します。移動の目的となる観光体験そのものを育てることで、移動需要の喚起と沿線価値向上に貢献したいと考えています」(樋口さん)

「三菱電機のイメージ」を自ら変えていく

最後に、メンバーそれぞれにこれからの展望を聞いた。

「人口減少やエネルギー問題は身近な課題。これらの課題をこれまで培った技術力でもって解決していきたい」(進士さん)

「『三菱電機=鉄道機器メーカー』というイメージを超えて、街づくりや沿線活性化にも取り組む会社であることを広く知っていただきたいです」(田村さん)

「当社の強みは、多岐にわたる事業領域を持つ『複合企業(コングロマリット)』であることです。今後も三菱電機が有する多様な専門知識を束ねて、新しい価値の創出に取り組んでいきたいと考えています」(樋口さん)

鉄道の安全を守る技術と、街を豊かにするデジタルソリューション。三菱電機はこれからも伝統を基盤に、革新的な挑戦を続けていく。

INTERVIEWEES

部署は取材当時(2026年3月)のものです

インタビュアー写真

樋口 竜太  Ryuta Higuchi

三菱電機株式会社 モビリティインフラシステム事業部

インタビュアー写真

田村 優季  Yuki Tamura

三菱電機株式会社 モビリティインフラシステム事業部

インタビュアー写真

進士 晃輔  Kosuke Shinji

三菱電機株式会社 伊丹製作所

三菱電機株式会社

東京都千代田区丸の内二丁目7番3号<東京ビル>
1921年設立。三菱電機グループは、「Our Philosophy」のもと、サステナビリティを経営の根幹に据え、社会システム、エネルギーシステム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、デジタルイノベーション、半導体・デバイスといった事業を展開している。事業成長と社会・環境課題の解決に向け、リスクを恐れず新たな発想で価値を創出する「イノベーティブカンパニー」への変革を目指す。

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