三菱UFJアセットマネジメントは2026年1月、AI・デジタルに関する戦略・企画の立案やAI・デジタル技術の利活用推進を専門で担当する部署として「インテリジェント・ソリューション部」を新設した。同部の設立により、全社的なAI・デジタルに関する取り組みを強化するとともに、専門人材の育成を進めていく。
現在のスタッフは兼務を含め約30名。IT推進部長から新たにインテリジェント・ソリューション部の部長に就任した関 裕介さんは次のように語る。
「ChatGPTが急速に浸透していった2022~2023年頃から、IT推進部でAIをビジネスにどう活用していくのか。さまざまな施策に取り組んできました。これからはAIをITの一部分から分離独立させ、全社的にAIをより強化していくことになります」
今、多くの企業でもAIを活用する動きが盛んになっている。業界を問わず、旧来のIT部署とは異なるデジタル部署を立ち上げ、DXをはじめとしたAIの活用に積極的だ。
「現在はAIとデータの2本立てでデジタルに取り組む企業が主流となっています。私達もAI・デジタルの領域を強化することで、新たな潮流をつくっていきたいと考えています」
限定された人材が使う技術から
誰もが使える技術に変貌したAI
最近は AI に関するニュースも増えている。たとえば、米アンソロピック社が2026年4月に発表したミュトス(正式名は Claude Mythos:クロード・ミュトス)は、その高度な能力が注目を集めている。ソフトウェアの脆弱性の発見や分析に優れたフロンティアAIモデルで、サイバーセキュリティ分野において人間の専門家を上回る成果を示したとされる。一方で、こうした能力が悪用されるリスクも指摘されており、現在(2026年7月時点)は限られた組織にのみ提供されている。
「私達の部署でもAIやデータマネジメントのほかに、ミュトスのようなサイバーセキュリティも担当しています。こちらも専門性が求められる領域です。サイバーセキュリティの世界では攻める側も守る側もAIを活用している状況で、技術の進展が速くなっています」
AIの世界は確かに進化のスピードが速い。数年前までChatGPTによる生成AIの是非が問われていたが、今やAIが自ら計画を立てて学習し、自律的に複数のタスクを処理できるエージェントAIが主流となっている。その先には現実世界の状況を自律的に知覚・判断し行動するフィジカルAIについても議論されている状況だ。
「AIは高度なスキルを持った人材が使う技術から、誰もが使える技術へと変貌しました。当社でも誰もが使いこなせる環境づくりを進めており、AIを利用するという面ではほぼ達成しつつあります。これからはAI活用を前提に、その役割や機能をより深化させていきたいと考えています」
関さんはインテリジェント・ソリューション部のテーマとして、情報収集などのインテリジェンス活動、有用な技術の社内導入、業務への適用支援、専門人材育成、ガバナンスの五つを挙げる。
「これからAIに関するガバナンスを強化し、社内のさまざまな部署と協力しながら、全社的にAIを業務に浸透させていきたいと考えています」
業務の効率化に加え
差別化要因につながる高度化に注力
同社は資産運用会社であることから、どのようにAIを運用に活用していくのかも気になるところだ。関さんは個人的な意見と前置きしたうえで、こう語る。
「資産運用の世界では、機械学習も含めて、進展している面はありますが、生成AIを利用しているケースは調査、リサーチ面の方が多いでしょう。また、運用に付随する事務処理については、これまでもシステムを導入し効率化を図ってきましたが、少量多品種の商品を扱うため、システムによる一括大量処理のようなことが行いにくく、人手による処理が多く残っている面があると思います。一方で生成AIは従来のシステムでは難しい、より細やかな判断、処理が行える可能性があると考えています」
現在、同社職員におけるAIの月次利用率は、ほぼ100%。今後の方向性として、関さんは業務の効率化、プロダクトの差別化要因につながる高度化をAIの活用によって実現させていきたいと語る。
「個人が担うような作業の効率化はすでに進めています。これからは、組織的な業務で効率化・自動化できる範囲を拡げていきたい。そのうえで、これまでの技術ではできなかったことを、AIを活用して実現することにより、新たな付加価値創出につながる。そう考えています」。
INTERVIEWEE
関 裕介 YUSUKE SEKI
インテリジェント・ソリューション部
部長
三菱UFJアセットマネジメント
1985年8月設立。2023年10月、三菱UFJ国際投信から現社名へ変更。運用資産は投資信託:42.1兆円、投資一任・投資助言:6.1兆円(2025年3月末基準)、役職員数925名。 人気商品は『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』(愛称:オルカン)と、S&P500連動の『eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)』(スリムS&P500)。2本の保有者数は合計で1,000万人を超え、両ファンドとも純資産残高がそれぞれ12兆円にのぼる。また、アクティブ運用に加え、プライベートアセットやオルタナティブの領域の強化にも取り組んでいる。